僕は玄関のドアをそっと開けた。
玄関からリビングに伸びる廊下で女の人が倒れている。
背中に包丁が刺さっており、床には血溜まりが出来ていた。

僕はため息をついた。
倒れているのは僕の妻なのだ。

僕は妻の傍らにしゃがみこみ脈をとった。
完全に死んでいるようだ。
死後硬直の感じからして死後3時間ってところか。
僕は立ち上がって血溜まりを避けるように浴室に向かった。

妻の横を通るとき妻がくくくと笑った。


いつ頃からだろうか・・・
家に帰ると妻が必ず死んでいるようになったのは。
ある時は頭に矢が刺さってたり、軍服で銃を抱えてたり・・・
部下を連れて帰った時にマンボウが玄関先で死んでた時には
急いで玄関を閉めたっけな・・・


僕がお風呂から出ると妻が背中に包丁を刺したまま食事の支度をしていた。
あれって、どうやって刺したのだろう。
いつも妻の死に方には感心する。
頭に矢が刺さったままお風呂に入った時は覗きに行ったもんな。
結局お湯を掛けられたから見る事は出来なかったけど、
風呂上りでも矢が刺さったままだったからな。
どうやって髪の毛洗ったんだろう。


僕が廊下の血溜まりを掃除してると妻に呼ばれた。
「ご飯できたよ」
「分かった、すぐ行く」
僕は素早く廊下の掃除を終え、リビングに向かった。
慣れたものだ。


「今日の死にっぷりどうだった?」
妻の目がキラキラと輝いている。
「そうだな75点ってとこかな」
僕は辛めに採点した。
甘やかすと、ろくな事にはならない。
「そう・・・」
妻はあきらかに落胆している。
「やっぱり爆死しかないかな・・・」
爆死?
「ちょっと待って、爆死は流石に後片付けが大変だからやめてくれる?」
「そうだよね・・・」
妻はもう明日の死に方を考えているようだ。


「死ぬのはいいけどあまり人に見られないようにな」
「それが今日死んだところを隣の奥さんに見られちゃった」
「隣の奥さんって、あのムチムチメガネの?」
「そう、あのムチムチメガネの奥さんがいきなり玄関を開けたの」
「またなんでいきなり開けたんだろう」
「回覧板持って来たみたい」
「みたい?」
「すぐ逃げたから用件は知らない」

僕は苦笑した。


近所にばれたらまた引っ越さないといけないな。
何でこんな特異体質の人と結婚したんだろう。
僕は頭を振り振り立ち上がった。

「今日は疲れたからもう寝るよ」
「大丈夫?」
「ああ、頭がちょっと痛いけど寝たら治るだろう」
寝室に向かった僕の後姿に妻が声をかけた。


「そう言えば頭に矢が刺さったままだよ」


終わり