東京都心の首都高速道路で、深夜に猛スピードで走る「ルーレット族」の事故が絶えない。コロナ禍で道路がすいたことで活動が活発になったとみられ、1月には仲間内の事故で死者が出た。警視庁は「首都高はサーキットではない」と呼びかけ、取り締まりを強めている。 警視庁によると、環状道路を暴走するルーレット族は1990年ごろから首都高に現れ、2020年に車両の数が急増した。それに伴い関連の110番通報も増えている。20年は前年から269件多い529件に倍増。21年も413件と高止まりした。 猛スピードで走り、急な車線変更をするため、事故も多い。側壁にぶつかる単独事故や仲間同士の多重事故だけでなく、無関係の車両を巻き込むことも少なくない。 今年に入っても、1月だけで死者や重傷者が出る重大な事故が3件あった。1月5日にあった多重事故では、男子大学生(20)が死亡し、18日の単独事故では別の男子大学生(20)が首や胸の骨が折れるけがを負い、車が炎上した。事故だけでなく、騒音やパーキングエリア(PA)でのマナー違反への苦情も多く寄せられているという。 そこで警視庁は、違法・迷惑行為を根絶するための緊急対策を打ち出した。 警視庁はこれまでも交通違反や違法改造の容疑でルーレット族を摘発し、昨年だけでも約100件に上る。PAでの注意喚起も続けている。今回の対策はこうした取り組みを増強するものだ。 具体的には、四つの柱を掲げた。 速度違反を取り締まる「オービス」で持ち運びが可能な「可搬式オービス」の追加配備、私服警察官によるPA監視の強化、PAで毎日実施する検問、そして赤色灯を点灯したパトカーによる注意喚起だ。ルーレット族はPAの駐車場や路肩を占拠して撮影会や情報交換をするため、PAでの声かけも徹底する。 乱暴な運転ができないよう、首都高速道路会社にも協力を仰ぎ、規制速度で走る黄色いパトロール車を積極的に都心環状線に出してもらう。警察のパトカーが並走するなどして、暴走しようとする車両の速度を上げにくくする。 緊急対策は当面の間、続ける方針という。高速道路警察隊幹部は「危険な走行ができないような道路環境を整える」と話す。その上でルーレット族に対しては「首都高はサーキットではない。危険な走行は自分の命だけでなく、人の命を奪う。絶対にやめてほしい」と呼びかける。(大山稜)