日本は、この30年間GDP (国内総生産)がほぼ横ばいで、ほとんど経済成長していません。これは、世界の先進国(OECD)中、唯一日本だけの現象で、他の国々は、2倍、3倍と経済成長しています。

実に、不思議としか言いようがありません。30年間日本は、科学、技術の進歩がストップして、生産力が全然向上しなかったのでしょうか?

そんなはずはありません。この30年間こそ、過去に例がないほどのスピードで、技術革新が進み、生産性は著しく向上しています。他の国々と比較して、劣っているはずは全くありません。


では、なぜ日本はGDPが増えないのでしょうか?

GDP (国内総生産)とは、モノ、サービスの生産額であるが、別の面から見ると、購入されたモノ、サービスの額でもあります。

生産はしたけど、買ってもらえなくて売れ残れば、GDPに加算されません。あるいは、生産する側は、当たり前ですが、売れ残りが出ないように生産します。すなわち、売れると予測できる範囲内で、ものを生産します。

したがって、現在の日本のGDPが、500兆円台から増えないのは、生産能力が向上しないのではなく、500兆円程度しかモノ、サービスを買ってもらえないと言うことを意味しています。

なぜ、それ以上買ってもらえないのか?

それは、日本国民がそれ以上のお金を持っていないからです。

なぜ、持っていないのか?

それは、日本国民の所得が増えないからです。賃金が上がらないからです。まさに、この30年間、日本は賃金が上がっていません。賃金が上がらなければ、ものを買う額も増えません。

その証拠に、日本は30年間デフレ状態にあります。生産(供給)は強いのに、消費(需要)が弱いからです。

だから、GDPが増えないのです。経済成長は止まったままなのです。

ところが、政治家も経済学者もマスコミも、GDPが増えないのは、生産性が向上しないからだといいます。だから、もっと設備投資を行い、労働者の技能を高めて、生産性を上げなければならないと言いますが、これは大間違いです。


さて、なぜ賃金は上がらないのか、について述べます。

それは、科学が進歩し、技術革新が急速に進んだからです。機械、コンピューター、ロボットが進化して、これらが生産現場で活用されるようになり、その結果、人間の仕事を奪い、あるいは、人間の高い技能を不必要とするようになったからです。

その最も典型的な例を、自動車工場の中に見ることができます。

自動車工場の生産ラインでは、まず、組み立てロボットが自動車を組み立て、次に溶接ロボットが溶接し、塗装ロボットが塗装すると言う仕組みになっています。ほとんどロボットが主体で、従業員は少人数が工場の隅で、機械、ロボットの調整や補助を行っているようです。(YouTubeで自動車工場の内部を見ることができる)

30年前までは、多数の従業員がライン上に並び、スパナでボルトを閉めたり、溶接をしたりなどの作業をしていたのです。

このように、生産現場では、ものすごい変化が起きているのです。

当然、かなりの数の人員が削減され、なおかつ、機械、ロボットが高度な技能を発揮するので、人間は補助的、単純労働的な仕事しかしなくなったのです。

さて、この自動車工場は、単純労働の従業員に、高給を与えるでしょうか?

さらに、人間に代わって仕事をする、機械やロボットには給料を支払う必要はありません。給料を貰わない機械やロボットは、当然、税金を納めないし、社会保険料も払いません。

当たり前ですが、給料をもらわないので、消費行動もしません。せいぜい電気と油を食うぐらいです。


人間に代わって仕事をする機械やロボットは、人間以上に能率良く仕事をして、大いに生産を上げるが、しかし、税金も社会保険料も払わず、消費もしません。

このような生産現場における著しい変化が、20年、30年と続いて、日本経済に大いなる影響与えたのです。

生産力はどんどん向上するが、消費(需要)は振るわず、国の税収、社会保険料はますます不足すると言う経済社会が誕生したのです。

すなわち、国の財政赤字は膨らむ一方で、しかもデフレ不況と言う、まさに日本の現状そのものではないですか。


以上のような、生産現場の機械化、ロボット化は、製造業だけではありません。サービス業においても同じです。

このようにして生産現場から、はじき出された人々は、正社員として他の仕事に就く人もいるでしょうが、非正規雇用になってしまった人も多数いるでしょう。(現在は就業者全体の4割近くが非正規労働者)

非正規労働者の多くは、社会保険には加入していません。さらに、給料は正社員よりかなり少ないので、納税額も少なくなります。したがって、この人たちも財政赤字と消費減退に貢献することになります。


日本経済の変化はこれだけではすみません。日銀が公表する「資金循環統計フロー表」を見ると、はっきりわかることがあります。

それは、戦後ずっと「資金の借り入れ部門」であった「法人企業部門」が、1998年を境に、ついに「資金余剰部門」に転換して、現在に至っていることです。

これはどういうことかと言うと、かつては多くの企業は、銀行から資金を借り入れて、事業を行うのが一般的であったが、1998年以降、その借り入れていたお金を、どんどん銀行に返済し始めたと言うことです。

その理由はいくつかあるでしょうが、そのうちの1つに、賃金を上げる必要がなくなった事と、非正規雇用者が増えたことにより、相当経費を削減することができるようになったことがあるでしょう。


さて、世の中に出回るお金の総量を「マネーストック」と言います。マネーストックは、誰かが銀行からお金を借りると、その借りた額だけ増えます。その反対に、誰かが借りていたお金を銀行に返済すると、その額だけ減ります。

(ちなみに、お金を増やしたり減らしたりしているのは、日本銀行ではありません。日本銀行は、金利の上げ下げの操作をしているだけです。実際にお金の増減に関わっているのは民間銀行です。)

したがって、日本中の多くの企業が、どんどんお金を返済している現実は、日本のマネーストックの減少を、もたらしていることになります。

賃金が上がらないから、マネーストックも増えない‼︎ いや、マネーストックが増えないから、賃金が上がらないのか‼︎

何しろ、日本全体が金欠病に陥っているのです。機械、ロボット、コンピューターが性能を高め、日本全体の生産能力は大いに向上しているのに、日本全体が金欠病にかかっているのです。

これで日本経済が良くなるはずがありません。デフレ不況も収まりません。日銀が、どんなに低金利政策を続けても、好転するはずがありません。


まず、世の中に出回るお金の量(マネーストック)を増やすことですが、これができるのは政府しかありません。民間の力ではどうすることもできません。

政府は、減税を行って可処分所得を増やし、その上で国民全体に十分な給付を行うことです。

このようにして、とにかくお金の量を増やせばいいのです。そうすると、消費が喚起され、不況が収まり、中小零細企業にも余裕が生まれます。

このとき初めて、日本中に賃金を上げようとする機運が、沸き起こるのです。

「で、政府はその財源をどうするのか?」と言うでしょう。

もちろん、国債を発行すれば良いのです。国債の発行とは、すなわち貨幣の発行と同等なのですから。

何しろ、充分高い生産能力に、ふさわしい消費能力を与えるのだから、日本経済を本来あるべき姿に、戻しているだけです。

国債は国の借金ではありません。貨幣の発行です。


そもそも、科学、技術が著しく進歩しているのに、経済成長しない、豊かになれないとは一体どういうことでしょう?

これは政治の責任です、政治の怠慢です。

政府は、生産力にふさわしい貨幣量を、国内に注ぎ込めば良いのです。ふさわしい貨幣量であればインフレにはなりません。