国(政府)は、1200兆円もの借金を抱えていることになっていますが、これはとても不思議なことだと言わなければなりません。

なぜなら、日本国において、通貨を発行できる唯一の存在は、政府だからです。

民間の人間なり、企業なりがお金を発行できるはずはありません。そんなことをすれば、法律違反になります。

唯一政府だけがお金を発行できるのです。その政府が借金を抱えているとは、おかしいではないですか?


このような不思議な誤解が生まれた原因は、我々個人が持つ財布と、政府が持つ財布を、同一のものと考えるところから生まれるのです。

一般人は、収入以上に支出する場合は、借金をすることになります。

そして、その借金は、いずれ返済しなければなりません。これは当たり前のことです。


しかし、日本国において、唯一、この縛りから超越した存在がなければならないのです。

なぜなら、国全体の生産力は、年々向上し増大するからです。

20世紀から21世紀にかけて、ものすごい勢いで科学が進歩発展し、技術革新が起きています。生産現場においては、この技術革新を利用、応用することによって、著しい生産能力の向上が起き続けています。


国全体の生産能力が向上すると言う事は、それだけ生産されるモノ、サービスの量が増えると言うことです。

量が増えれば、より多くのお金を国民が持っていなければ、生産されたものが全て購入される事はありません。


したがって、政府は通貨を発行して、国民に十分なお金を与え、生産されたものが全て買い取られるようにしなければならないのです。

これを怠れば、せっかく生産したものが売れ残ってしまうので、生産する側は生産を控えることになります。

日本のGDP (国内総生産)が30年間増えなかった理由は、まさにここにあります。


ここで反論が起きるでしょう。「生産能力が向上すれば、そこで働く労働者の賃金も上がるはずではないか。賃金が上がれば、それだけ消費も増えるはずだから、問題は無いではないかと。」


いえいえ、そうはならないのです。

現実においても、日本では30年間賃金が上がっていません。

その理由は、まさに生産能力が向上するからです。機械、コンピューター、ロボットが高い性能を発揮し、高度な仕事をこなすので、もはや人間は高い技能を習得する必要がなくなったからです。


機械、コンピューターに任せて、補助的で単純な労働しかしなくなった人間に、企業は、高い賃金を出すはずがありません。


科学、技術が進歩発展し、生産能力が著しく向上したからこそ、賃金が上がらなくなり、したがって、国民全体の購買力(需要)が落ち込むと言う状況になったのです。


まさに、生産能力(供給力)が高まるのに、消費(需要)が低下すると言う、アンバランスが生まれたのです。

これこそ、日本の30年間続くデフレ不況の真の原因であり、動かしがたい構造上の問題なのです。


なんとなく、うまくいかなくて不況が続いているとか、なんとなく賃金が上がりにくい時代になったとか言うものではありません。


本来、科学、技術が進歩すれば、社会は豊かになるはずであるのに、われわれは科学、技術の進歩を豊かさに結びつけることができていないのです。


しかし、民間の力では、この状態をいかんともすることができません。

企業は、競争に勝つために、優れた機械、ロボットなどの設備を導入し、生産力を上げなければなりません。そうすると、当然余分な人員を削減し、さらに経費節約のため賃金を下げようとします。


これは、企業が生き残るために取る当然の行動であって、誰も責めることはできません。

そして、生産(供給)と消費(需要)のアンバランスは、ますます開くことになり、デフレは解消しないでしょう。


さて、民間の力では、どうすることもできないのであれば、誰が解決するのか?

もちろん、それは民間を超越した強力な権限を持つ存在である政府しかありません。

政府は、一国の中にあって、唯一通貨を発行する権限を持っているのです。


政府は、科学技術が進歩発展することによって、失われていく国民の所得を、補充するのです。

そうすることによって、供給と需要のアンバランス(供給>需要)を解消するのです。


供給と需要のアンバランスを是正して、一国経済を正常な状態に戻すのだから、通貨を発行する事は何の問題もありません。


ところが、ここに大問題があるのです。

それは政府は紙幣を発行しないことになっているからです。(硬貨は発行している)

紙幣を発行しているのは、政府の子会社である日本銀行です。


その日銀は、紙幣を民間銀行に送り込むことができるだけであって、一般社会に直接紙幣を送り込むことはできません。

なぜなら、日銀は金融機関とは取引するが、一般社会とは取引しないからです。


では、紙幣はどのような経路をたどって、一般社会に届くのか?

それは、企業なり個人なりが、銀行からお金を借りると、銀行の中にある紙幣、もしくは預金が銀行から出て、一般社会に行き渡るのです。

すなわち、実際にお金を発行しているのは、民間銀行なのです。

日銀及び政府は、直接社会にお金を発行してはいないのです。


ただし、日銀は金利を操作することができます。金利を低くすれば、人々はお金を借りやすくなり、高くすると借りにくくなります。

このようにして、金利の上げ下げによって、世の中に出回るお金の量(マネーストック)を調節することはできます。


それなら、日銀の金利操作は万能かというと、そうではありません。その良い例が、アベノミクスです。

2013年から始まったアベノミクスでは「異次元の金融緩和、ゼロ金利政策」によって、マネーストックを増大させ、2年で2%程度のインフレを起こすと表明しましたが、現実には10年以上たっても2%のインフレは起きませんでした。


アベノミクスは、壮大な社会実験を行って、見事に失敗したのです。

ただし、この間、消費税を8パーセント、10%へ上げたのが失敗の原因ではありますが。


結局、マネーストックを増大させ、デフレ不況を解消するためには、政府自身が直接通貨を発行しなければならないのです。

すなわち「政府紙幣」を発行するのが、最も良い方法なのですが、これはハードルが高いようです。


ではどうすれば良いのか?

それは、政府が銀行からお金を借りて、これを財源として、歳出すれば良いのです。

これによって、銀行に眠っているお金が、世の中に出て行き、通貨発行になるのです。


政府が国債を発行すると、その大半を銀行が買います。これで銀行からお金を借りたことになるのです。

政府が国債を発行して、銀行に買ってもらう事は、すなわち通貨の発行と同じことなのです。


したがって、現在の国債発行残高、すなわち財政赤字は、正真正銘の通貨発行なのです。

だから、増税することによって、財政赤字を減らすようなことをしてはいけません。そんなことをすると、せっかく発行した通貨が消滅してしまい、日本は大不況になるのです。


「消費税を廃止するのは良いが、その財源はどうするのか?」と言う議論をよく聞きます。

財源は税収だけでは無いのです。増大する生産力が財源です。これを政府は、お金に換算して支出すればいいのです。