私は先生に質問した。
「腐ってしまっている箇所を切除しなければ、死ぬというのにこれを拒む理由は
なんでしょうか?」
先生はおっしゃった。
「まずは切除することへの恐れです。そして、未知なることへの恐れ。もう一つ、
その患者は『切除しなくても死ぬことは無い』と思っているのです。むしろ、
『切除するなんて何て変なことを言うのだろう』と疑問に感じているでしょう」
「つまり、私と見立てが違うということですね?」
「そのとおりです」
私は続けて質問した。
「今すっかり零落してしまいましたモノがあります。けれど、私は昔の
恩義があり、どうしても助けたいのです。何か手助けをしたいと思っても、
この手を拒まれてしまうのですが、如何にすべきでしょうか?」
先生はおっしゃった。
「あなたの最善を尽くしなさい。出来ることを全てやることです。しかしながら、
その手をつかむかどうかは相手の決定です。相手がつかまないと判断したなら、
滅びていくのもこの世の理です。あなたが全力を尽くしたなら罪悪感を抱くことは
ありません。滅びたのは相手自身の責任です。
自分で蒔いた種は自分が刈り取らねばなりません」
私は
「然り」
と答えた。