連続アメブロ演義「まとひ」 問題の核心 | 連続アメブロ演義 まとひ

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剣龍之介のいま、つたえたい話

李阮がめずらしく先生に尋ねた。

「現在の問題の核心はなんでしょうか」

先生はこうおっしゃられた。

「地上界の問題の大半は、物質主義・唯物思想が人間の行為と思考を牛耳っているところに原因があります。特に貪欲と強欲が地上を覆っている大病です」

李阮は続けて尋ねた。

「しかし、それは今に始まったことではないと思います。何千年も前から、歴史にある限り、人間や国家、ある種の集団は貪欲と強欲で栄枯盛衰を繰り広げてきました。今さらそれが治るとも思えません。それならば、欲望のままになりふりかまわずわが世の春を謳歌した方がよっぽど利口ではないでしょうか」

先生は、ゆっくりと話し出された。

「まさにそれこそが、大部分の人々の本音です。ですが、その考え方は間違っているとあえて申し上げます。世界は欲望のまま何をやっても良い世界ではなく、やさしく守るべきものが確かに存在する世界なのです。

歴史を調べれば分かる事です。欲望のままに人々を苦しめた人が、今日どのような評価を受けているでしょうか。異端審問や人種差別での拷問や火あぶり、さらに残虐な所業の数々、これを知って、あなたの良心は何も感じないでしょうか。

いつの時代でも、どのような逆境であれ、か弱い他人を守り、間違いは間違いであると声をあげ、堂々と行動し続けた人々が確かにおります。彼ら彼女らは道半ばで命を落とすことも少なくありませんでした。ですが、この人々こそ、時代を超えて私たちに感動と勇気を与えてくれています。この勇気ある人々は、私たちの兄であり、姉なのです。いい加減、私たち人間は、どう生きるべきか悟っても良い頃なのではないでしょうか」