益州の牧(現代でいう州知事のこと)の大建が先生を訪ねた。かねて、治安を安定させるに長じた者と評判があった。
大建が言った。
「我々は何が悪であるか、以前より分かるようになって参りました。悪の行き過ぎがあれば、善の心の必要性、
改善の必要性が見つけられるでしょう」
先生はただ、然り、とだけおっしゃった。
「人々の精神が知性ほどに発展を遂げた暁には、悪が消滅し、この世に理想の国々が現れましょう」
大建は権門に追従しなかったので、中央で出世はしなかったが、地方を良く治め、彼が死ぬと領民はみな泣いた。
南の大理国までも弔意を表すほどだった。
後に、先生は大建を懐かしむ事が度々あった。