親友のカフカ青年は社会人になりたての頃、よくナンパをしていた。

「ナンパ」というものが私の人生における対極であり、それまで全く縁もなく、また他人の行為にも興味がなかったため、通過しない人生ではあった。

しかしながら親友たるカフカ青年がそれを行っているとなると話は変わってくる。

彼のナンパは紛れもなく、彼自身がブログを書くためのジャーナリズムだった。

わかりにくい表現になってしまったが、簡潔に言えば成功失敗を度外視し、行為がもたらす自身への影響に全ての重きを置いているといったところだ。

だからこそナンパは第三者として面白かった。



先日ドトールで時間をつぶしていたときのことだ。

閉店20時の店舗に、残り30分を切った段階で若い男性が少し年上に思える女性を連れて入店してきた。

私の真横に彼らは座ると、男性は開口一番、「年齢聞いてもいいですか?お若いですね?」と話しかけた。

「20代ですか?」と畳みかけると女性は『ちょっと!そんなわけないでしょう?40です』と言った。

「まったく見えないですね!すごく綺麗で声を掛けなきゃ後悔すると思って」

と男性は言う。


これはナンパだ!と思った。


同時に男性の恰好をみると筋肉隆々で、それを見せつけるようにタンクトップを着ている。

自分に自信がある格好だ。さすがナンパ師。

しかし隣の席でこの会話はなかなか気まずいじゃないか。
ドトールの席の近さを舐めないでほしい。


大学生の頃、一時期は週に1度ドトールに朝食をとりに来店していた時期がある。

トーストとアイスティーを食べていたわけだが、毎回同じ席に陣取り、その横には同じく毎回身体障碍者の方がジャーマンドッグを食べていたのが思い出される。

あの頃はトーストを口にしただけで夜までご飯を食べなくても平気だったが、いまは少しでも間食を取るように、脳が私を動かし胃を酷使する。


話を戻すが、会話の内容から察するに男性はたまたまこの最寄り駅を利用する社会人1年目の男性で、女性は40代の既婚者であった。

友達と飲んだ帰りにフラッと歩いていたところ、この男性が声をかけたという。

テンプレートな話だ。

男性がナンパしなれているのに対して、おそらくこの女性も遊んでいる。


「僕は既婚者にはいかないです。それは誰かを傷つけるので」

『えらい。すごく良いと思う。一番大事なこと』


すごい会話だ。真実が何ひとつない。じゃあお前らはなんでいまドトールでアイスコーヒーを飲んでいるんだ。


やはり社会人1年目はナンパをする時期なのだろうか。

カフカ青年のナンパが本当に好きだった。

成功よりも失敗を饒舌に書く彼は、まさにペンで女性を口説いていた。

彼の見た目は真面目を絵にかいたような清廉潔白な男性だ。

そんな彼がナンパをして怒られるからこそ物語は面白い。



そしていま真横にいるこいつらはこの日ゴールするかどうかは別として次の店には間違いなくいくはずだ。


閉店まで残り7分。

私はさすがに退店をしたが、彼らはまだ会話に花をさかせていた。


いいなあ。

俺もあやかりたいわー

だがそれ以上に思ったことがある。



ナンパ師、声でかすぎだろ。