本当に地獄で何も得るもののなかった新入社員現場配属時代、唯一救いだったのは勤務時間が10時〜19時であったことのように思える。
満員電車はそれほどでもないし、何より朝ダラダラとテレビをみて、起きた頭で電車の中で携帯をダラダラも見ていられるのは精神的にもかなりデカい。
あれから15年以上が経ってしまった現在、私は激務の中に身を置いており、今月に入るや否や心身に限界が訪れてきていることを察してしまっている。
その状況でせめてもの救いとなっているのが、勤務時間のフレックス制だ。おかげさまで10時出社の不落シフトを驀進できる。
「電車の中では遊ぶのではなく、何か勉強をしたり本を読んだり、とにかく無駄のないように過ごせ。歳をとれば、嫌でもそうなる」
そんなことを新入社員教育で目を見ながら言われたことを覚えているが、少なくとも15年後の今になっても、私は電車の中で携帯を見るか漫画を読むか寝ている。
勉強をしようなんて気には到底ならない。
先日、グループの親会社の初任給が35万円以上になったというリリースが出た。
「35万円への値上げにかかった経費は"70億で済んだ"と言っていたらしい。うちは仮に全社員の基本給を3万円あげるとしたら、30億かかり、利益が吹っ飛ぶ」
課会で上司がそう言っているのを聞いて、私の給与が無条件で上がるという希望は消え、同時に初任給35万円以上というのは選ばれし世界なのだということを実感した。
たしかに新卒時の就職試験の際に、提示された初任給が30万という会社はあったが、その場合は賞与がなかったり、手当が永続的になかったりとカラクリがあった。
だがいま耳にしているこの話は、まぎれもなく選ばれし世界の話だ。
やはり高校時代、ちゃんと勉強をして、ちゃんと大学を選ぶべきだった。
あの大学に入った多くが、予備校や塾の異常なほどの推薦かあてなきスベリ止め、あるいはその両者だ。
なかには「私はこの大学にどうしても入りたくて、あえてここを選びました」という奴もいるが、だとすればそいつは最もバカだ。
彼らの中に選ばれし世界に至っている人間がいったい何人いるのだろうか。いないかもしれない。
○
最寄り駅で繁原を見た。
土曜日だというのにスーツを着た、いかにもビジネスチャンス探してますみたいな太った眼鏡の男性と喫茶店を探しているようだった。
駅前のコメダ珈琲に入ろうとしているようだったが、私はあそこがどうやったって満員で入店できないことを知っている。
娘を習い事に通わせている間、私はルノアールでスマホを弄りながら待機しているのだが、しばらくするとそのルノアールに繁原とビジネスチャンスが入店してきた。
コメダ珈琲はやはり満員か、と心の中で呟き、彼らの動向を見守っていると、予想通りビジネスの話をしているようだった。
土日にルノアールでビジネスの話って。実に繁原らしいな。
そんなことを思いながら顔を除いてみると、それは確実に繁原ではなかった。
比喩ではなく、シンプルに別人だった。
これは、繁原は土日にルノアールでビジネスの話をするという先入観が、そのビジネスマンAの顔を繁原に変えてしまったということだ。
これを“バイアス”と言う。知らんけど。
昨年の今頃何をしていたのか確認すると、亀戸駅から徒歩数分の場所にあるタイ料理屋の屋台で、昼間からガパオとグリーンカレーを食べていた。
たった1年でこの生活差だ。本当にこの国の働き方はどうかしている。
時折、このまま働かなかったらどうなっていたかを考える。
そうなるとやはり結果的に老後働かないといけなくなるので、やはりそうなるわけにはいかない。
前会社の巡回チームの豊島さんは約1年間かけて復帰したが、会社はどうやらなんとしても退職させたいらしく、出退勤に2時間かかる八王子への異動を決行した。
50代、独身。重度の持病有りで健康問題有り、資格無し、事務処理不可、とんでもないアンモニア臭。溶けた歯。
加えて賃貸アパートで長年に渡り猫の多頭飼いをしているため、退去となるととんでもない復旧費用を請求されることになる。
犯罪こそ犯していないものの、彼の人生は牢獄そのものだ。
宮路さんもそうだ。
70歳を迎えた高齢者でまともに歩行もままならないのに、まだ働かないといけない。
品川が勤務場所なのに千葉の賃貸アパートを解約せずにウィークリーマンション暮らしをしている。
それなら賃貸アパートを解約すれば良いのにと普通は思うが、解約してしまったら最後、彼は2度と賃貸アパートを借りれないだろう。
もう1人超高齢の今泉さんに関しては1300万円の損害賠償を叩き出してしまったときく。
70超えても始末書を書かせるのかこの国は。
いつか自分もそうなってしまう気がしてならない。
もう先はないのだ、とこの歳で確信をしている。
後は諦めて受け入れる覚悟だけだ。
だがこれが、とにかく難しい。
満員電車はそれほどでもないし、何より朝ダラダラとテレビをみて、起きた頭で電車の中で携帯をダラダラも見ていられるのは精神的にもかなりデカい。
あれから15年以上が経ってしまった現在、私は激務の中に身を置いており、今月に入るや否や心身に限界が訪れてきていることを察してしまっている。
その状況でせめてもの救いとなっているのが、勤務時間のフレックス制だ。おかげさまで10時出社の不落シフトを驀進できる。
「電車の中では遊ぶのではなく、何か勉強をしたり本を読んだり、とにかく無駄のないように過ごせ。歳をとれば、嫌でもそうなる」
そんなことを新入社員教育で目を見ながら言われたことを覚えているが、少なくとも15年後の今になっても、私は電車の中で携帯を見るか漫画を読むか寝ている。
勉強をしようなんて気には到底ならない。
先日、グループの親会社の初任給が35万円以上になったというリリースが出た。
「35万円への値上げにかかった経費は"70億で済んだ"と言っていたらしい。うちは仮に全社員の基本給を3万円あげるとしたら、30億かかり、利益が吹っ飛ぶ」
課会で上司がそう言っているのを聞いて、私の給与が無条件で上がるという希望は消え、同時に初任給35万円以上というのは選ばれし世界なのだということを実感した。
たしかに新卒時の就職試験の際に、提示された初任給が30万という会社はあったが、その場合は賞与がなかったり、手当が永続的になかったりとカラクリがあった。
だがいま耳にしているこの話は、まぎれもなく選ばれし世界の話だ。
やはり高校時代、ちゃんと勉強をして、ちゃんと大学を選ぶべきだった。
あの大学に入った多くが、予備校や塾の異常なほどの推薦かあてなきスベリ止め、あるいはその両者だ。
なかには「私はこの大学にどうしても入りたくて、あえてここを選びました」という奴もいるが、だとすればそいつは最もバカだ。
彼らの中に選ばれし世界に至っている人間がいったい何人いるのだろうか。いないかもしれない。
○
最寄り駅で繁原を見た。
土曜日だというのにスーツを着た、いかにもビジネスチャンス探してますみたいな太った眼鏡の男性と喫茶店を探しているようだった。
駅前のコメダ珈琲に入ろうとしているようだったが、私はあそこがどうやったって満員で入店できないことを知っている。
娘を習い事に通わせている間、私はルノアールでスマホを弄りながら待機しているのだが、しばらくするとそのルノアールに繁原とビジネスチャンスが入店してきた。
コメダ珈琲はやはり満員か、と心の中で呟き、彼らの動向を見守っていると、予想通りビジネスの話をしているようだった。
土日にルノアールでビジネスの話って。実に繁原らしいな。
そんなことを思いながら顔を除いてみると、それは確実に繁原ではなかった。
比喩ではなく、シンプルに別人だった。
これは、繁原は土日にルノアールでビジネスの話をするという先入観が、そのビジネスマンAの顔を繁原に変えてしまったということだ。
これを“バイアス”と言う。知らんけど。
昨年の今頃何をしていたのか確認すると、亀戸駅から徒歩数分の場所にあるタイ料理屋の屋台で、昼間からガパオとグリーンカレーを食べていた。
たった1年でこの生活差だ。本当にこの国の働き方はどうかしている。
時折、このまま働かなかったらどうなっていたかを考える。
そうなるとやはり結果的に老後働かないといけなくなるので、やはりそうなるわけにはいかない。
前会社の巡回チームの豊島さんは約1年間かけて復帰したが、会社はどうやらなんとしても退職させたいらしく、出退勤に2時間かかる八王子への異動を決行した。
50代、独身。重度の持病有りで健康問題有り、資格無し、事務処理不可、とんでもないアンモニア臭。溶けた歯。
加えて賃貸アパートで長年に渡り猫の多頭飼いをしているため、退去となるととんでもない復旧費用を請求されることになる。
犯罪こそ犯していないものの、彼の人生は牢獄そのものだ。
宮路さんもそうだ。
70歳を迎えた高齢者でまともに歩行もままならないのに、まだ働かないといけない。
品川が勤務場所なのに千葉の賃貸アパートを解約せずにウィークリーマンション暮らしをしている。
それなら賃貸アパートを解約すれば良いのにと普通は思うが、解約してしまったら最後、彼は2度と賃貸アパートを借りれないだろう。
もう1人超高齢の今泉さんに関しては1300万円の損害賠償を叩き出してしまったときく。
70超えても始末書を書かせるのかこの国は。
いつか自分もそうなってしまう気がしてならない。
もう先はないのだ、とこの歳で確信をしている。
後は諦めて受け入れる覚悟だけだ。
だがこれが、とにかく難しい。