「僕は妻に全てをオープンにしてます。夫婦間で秘密は無いです」
移動中の電車で、年下の上司は私にそう言い放った。
「本当ですか?じゃあ仮に奥さんに今すぐ携帯見せてって言われたら見せれるんですか?」
「もちろん見せれます」
「それはたとえば浮気とか女性関係だけでなく、趣味とかちょっと見られたら恥ずかしいなみたいなものも含めて、全部オープンにできるってことですか?」
「そうです。全部見せれます」
それはそれでキツいな…と思ってしまった。
偏見や先入観丸出しで言わせてもらえば、なんとなくモラハラ気質なんじゃなかろうか。
いずれにせよ正気の沙汰ではない。
私は初めての彼女を除いていままでのパートナーに携帯を見せたことがない。
むしろ画面ロック、アプリロック、LINEロックをそれぞれ違うパスワードでかけている。
つまりLINEを開くには3通りの異なる桁数の数字を入力しなくてはならない。
顔認証や指紋認証はもちろんいれていない。
これが相手に対してのマナーであるとすら思っている。
先述の初めての彼女はとんでもなく束縛主義だった。
携帯は全部オープンは当たり前だし、女性の番号は全て電話帳から削除させられたし、流行りで登録していたブログやSNSも全部削除させられた。
"モテ"に対して非常に貧乏性な私は、全オープンや全削除が嫌だったので、メールは2in1で彼女と一緒にいる時間は他の人からメールが届かないようにしていた。
電話帳や消されたら困るデータについてはMicroSDカードに全て移し、筆箱の中の消しゴムのカバーの中へ隠した。
連絡をとりたいときはカバンから筆箱を出し、消しゴムを出し、カバーを外して中からSDカードを取る。
電車内でそれを行っていたところ、一連の動作を見ていた別の乗客が小声で「スパイだ、スパイだ!」と煽ってきたことすらあった。
にもかかわらずなんとなく彼女が寝ている隙に携帯を見ると、浮気の履歴がワンサカ出てきて愕然としたものだ。
以来、見る必要がないものはお互い見ない、知らぬが仏がマナーだと思い込むようになった。
一般的にはどっちが良いのだろうか。
カレー味のウンコかウンコ味のカレーか理論だ。
で、あれば当然、カレー味のカレー、つまり自分は見せずに相手のは見れる、がベストなのだろう。
だがそんな都合が良いことなんてないので、今一度考えてみる。
私はウンコ味のカレーだ。
ウンコを食うよりはマシだからだ。