”芥川龍之介がスライを聴いて、お歌が上手とほざいたという。”

何百曲とあるサザンオールスターズの曲の中で数多のフレーズの中から最も印象的なものは?と問われ、この部分をあげる人は決して少なくはないだろう。

マンピーのGスポットという曲名とその歌詞のインパクトに溢れながら、1900年代初頭を生きた日本を代表する小説家の芥川龍之介が、1960年以降ソウルファンクミュージックシーンを牽引したスライストーンの曲を聴くという架空の歌詞は、否が応でも目立つものがある。

そのスライストーンが亡くなった。

享年82歳。

年齢だけ聞けば大往生に思えるが、その一生はウィキペディアを読む限り、才能と薬物と搾取にまみれたものであったように思える。

薬物に手を染め、盟友達と袂を分かち、信頼していた人に裏切られ、住む家すら失ってしまった彼ではあるが
それでも紡ぎだすメロディーは、明快かつ悲壮的で、素人の私がいま聴いても素晴らしい。

言葉にはできない良さがある。


それを文豪たる芥川龍之介が、ただただ”お歌が上手”で済ませることを「ほざく」で締めたこの歌詞は、あまりにも痛烈だ。

痛烈で皮肉的な妄想だ。だからこそエロとうまく絡みあう。

エロだっていつも妄想なのだから。


そういえば前にこの芥川龍之介がスライを聴く、という日記を書いた。

その時は4カ月ぶりに散髪をした美容院で読んだBRTUSがサザンオールスターズ特集を組んでいて、全曲の象徴的な歌詞を一覧化していた、という内容だった。

あれが3月だったからもう4か月だ。


つまり散髪の季節だ。


せっかくだから今度は、スライストーンの全盛期か教科書に載る芥川龍之介か、或いは桑田佳祐みたいにしてみようか。

ってするわけないでしょ。

ほざいてろ。