先週頃からやたらと喉に違和感があり、どうにも気持ち悪く思っていると徐々に痛みを感じだした。

風邪か、はたまた花粉症の悪化かと考え、どこかのタイミングで病院にでも行こうと考えているところに、シロからラインで【大事な話がある】ときた。

48歳の熟女の大事な話なんてどうせロクでもないだろう。

面倒なのは家庭関係を持ち出してきたり、私を嫉妬させようと他の男との恋愛で悩んでいたりの話であるが、それは想定外のものとなった。

『ごめんね。マイコプラズマになった』

「え?はあ。大丈夫ですか?」

『性病になるの初めてだからショック受けてる』

「うん?マイコプラズマは肺炎とかでしょ?」

『違うよ。性病のマイコプラズマだよ』


調べてみるとたしかにマイコプラズマの性病が存在していた。

性病なんてものは、大手どころだとクラミジアや淋病なんかが有名だが、どうやらこの性病マイコプラズマがいまかなり流行っているらしい。

『だからもしかしたら伝染してるかもだから検査受けたほうがいいかも』

「いやでも僕淋病やったことありますけど特に異常はなさそうですよ?」

『それは下半身?喉は?』


え・・・おいちょっと待て。

めちゃくちゃ違和感あるけどこれまさか、、、風邪じゃなくて性病なんか。


さらに調べてみると、前戯中のある行為によって感染することが十分にありえるらしい。

はーマジかよ。



翌日わざわざ会社を半休し、千駄ヶ谷の専門医にかかったところ、見事にマイコプラズマだった。

最悪。なんで俺が・・・


抗生物質を処方してもらい、1週間後に再度受診の上で検査を行い、そこで問題がなければ完治ということになるらしい。

やれやれ。なんで俺が・・・。


『3月の頭に年収2000万円くんのマンションに行ったんだよね。で先週2000万くんから連絡もらったの。“マイコプラズマにかかったから検査うけたほうがいい”って。それで検査したらビンゴだって』

「ビンゴもクソもないよ・・・なんて迷惑な」

『ごめんね。なんか2000万くんは色んな女が寄ってくるからそのうちの誰かに伝染されたみたい。でも誰からだかわからないって』


そりゃ年収2000万円あったらモテるだろう。


くそ。


なんでハイスぺでモテモテの富裕層がわざわざ低スぺ非モテ貧困層の俺に性病押し付けるんだよ。腹立つなー。


「僕は別に保険で診察受けたってかまわないんですよ。でもあえて保険適用外で診察受けるからその2000万円男に俺の診察代負担しろ!って言っておいてください」

『年収2000万だからそれくらい払うよ多分』

「払うか払わないかじゃないんですよ。ドラッガーだって言ってたでしょ。ドリルが買いたいんじゃなくて壁に穴を開けたいんだって。そんなのもわからないから性病になるんすよ」


ってまあ俺もだけど。


しばらくデートは控えるとシロは言う。

だけども申し訳ないし、私とは会うと言う。

私は正直彼女に会う必要がないので、適当にあざーっすとだけ解答することにした。


すごいな年収2000万円は。

マンション、女、車、名誉、友達・・・

私にないものをすべて持っている。

で、唯一の施しが性病かよ。泣けるぜ。



これこそが現代日本であると勝手に私は納得し、静かに抗生物質を口に運んだのだった。