ここ数ヶ月、いや半年に渡り仕事ばかりでまったく楽しいことがない。

プライベートもいまひとつ不調であり、どうにも過去にしがみつきがちで何も進んでいない。

ためしにマッチングアプリをインストールはしたが、結局やるのが億劫でその後一切起動せず、通知も切っている。


YouTubeで"女性にモテる方法"で検索するとあまりにも多種多様な動画がヒットする。

だがそのどれもが、やれ女性の承認欲求を満たせだの、やれスマートに身体に触れろだの、やれデートに誘うときはファミレスや居酒屋ではなくうんたらだのと言ってくる。


いやこっちはそもそも誘えないし、喋れないんだよ。


1を100にする方法はみんな好き勝手に述べるが、0を1にする方法は誰も述べない。
そして私がみたいのは後者なのだ。


メンタリストのDaigo氏に至っては"周囲の目がない場所では相手に理解を示し、周囲の目がある場所では相手の現実逃避にのっかる"と言っていた。

どういうことなのかちんぷんかんぷんだ。


かいつまんで言えばそれは"相手の顔をたてろ"ということだったっぽいが、そんな社会ど真ん中みたいなことをプライベートでもやらないといけないとなると絶望する。


要は常に社会ど真ん中であれ、ということだ。

気を衒うな。サブカル気取るな。

だがそれができたとしても、私はモテないだろう。


なぜなら私は太っていて不潔だからで、

1ではなく0だからだ。









6月に受けた健康診断の結果、メタボの兆候が大幅に見られ、糖尿病予備軍入りを果たしたことによって急遽グループ会社の主催する健康セミナーを受講することとなった。


対象が同じく糖尿病予備軍と診断された人に加えて、40歳未満という条件も加わったことで、セミナールームに押し掛けた100人余りの男性は、全員が全員全く同じような体型の小太りだった。

さながらラーメン屋の行列のようだ。

講習の際も我々小太り集団の行動は全て同じで、みんな開始2分でウトウトしだしたし、講師の人が「今後取り組もうと思うことに〇をつけてください」と言うと、みんなそろって“1時間運動をする”に〇をつけていた。

断言できることが、開始早々寝るのは炭水化物の取りすぎだし、1時間の運動なんて正直誰もやらない。

元アナウンサーの田中みなみがテレビでお笑い芸人の永野に『みんな良い年齢なのに揃って大盛を頼んでみっともない。落ち着きはないのか』と言っていた。

たしかに私も大盛を毎回頼んでしまう。特に理由はないのに。

『大盛をしながら残すのが一番嫌いだ』と田中みなみは言っていたが、私も残しこそしたことはないものの、“大盛を頼んでおいて残す”行為は十分に理解できてしまう。


おそらくこのセミナールームに集結した約100人の小太りも大盛を頼むし、なんなら残すだろう。


「俺の数値は5.6だったわー。5.5未満がセーフだからギリギリだよね。この中ではマシなほうだから大丈夫だ」

後ろの席の小太りはそうつぶやいた。

まんまとだ。典型的なおバカちゃんだ。


まずは運動しなくては。

そうしないとモテない。

0を1に変える力はなんなのか。

それはまぎれもなく、運動である。

そう感じずにはいられない1日だった。