11月以来4ヶ月ぶりに散髪をした。

先日会社で上司に「髪が本当にだらしないから切ってくるように」と注意を受け、それに対し「髪切る時間もないくらい働かされてます」とめちゃくちゃ感じの悪い対応をしてしまい、私は少しばかり後悔していた。

何もあんな返し方はする必要はなかった。

そんなセルフもやもやを払拭しようと意地でも髪を切ろうと、いつもの美容室ではなく、外出先の近くにあった美容院に閉店間際ギリギリに飛び込んだ。


「どんな髪型にしましょう?」

と美容師は言う。


いつも私はここで、成田凌や町田啓太の画像を出し、こういう風にしてほしいと頼むわけだが、毎回毎回成田凌や町田啓太でなくコボちゃんにされてしまうため、今回こそはそれを避けようと決意を固めた。


私は思いきってコリンファレルの画像を出した。



昔から私はコリンファレルが大好きだった。

初めて彼を目にしたのは本八幡のTOHOシネマズで、たったワンシーンだけ出演するキーファーサザーランドを観たいがためにチケットを買ったフォーンブースだ。

電話BOXの中でひたすら展開されるスリリングなストーリーで、喜怒哀楽の全方位を駆けるコリンファレルに私は夢中になった。

その後何度もコリンファレルの作品を視聴したわけだが、マイノリティリポートでの脇役や、デアデビルでの悪役(彼の言う"ブルズアイ!"がたまらなくカッコよかった)、またトータルリコールやマイアミバイスで魅せるアクションは今も深く印象に残っている。

そして私が見せたコリンファレルは、比較的最近のファンタスティックビーストのコリンファレルの写真だった。


「なるほど。はい。わかりました」

そう言って美容師はすぐにハサミを手にとった。


これは期待できるぞ、と思い。安心して私は手渡されたBRUTUSを読んだ。


今月はサザンオールスターズが特集されていた。

どうやらニューアルバムをリリースしたようで、内村光良をはじめとした著名人達が先行してアルバムを聴いた上でのコラム、メンバーひとりひとりのインタビューが掲載されており、私はそれを興味深く読んだ。


中でも、これまでリリースされたサザンの各曲の象徴的なワンフレーズを羅列するコーナーは、タブレット越しに雑誌に穴が開くのではないかというくらい凝視した。


"芥川龍之介がスライを聴いて、おうたが上手とほざいたと言う"


これはマンピーのGスポットのBメロの冒頭に登場する歌詞だ。

タイトルからわかるように、人前で歌うにはあまりにも恥ずかしい曲であるため、一度も歌ったことはないのだが、この"芥川龍之介が〜"のフレーズはサザンの中でも最も好きなフレーズのひとつであり、よく私も家で口ずさんでしまう。

それが見事にラインナップされたわけだから、私は嬉しかった。


「長さこちらでよろしかったでしょうか」


美容師がそう言うので顔をあげてみた。

抜群の長さだ。これでスタイリングしてもらえればコリンファレルだ。

私はウキウキしながら礼を述べ、シャンプーをしてもらい、スタイリングをお願いした。


5分後、そこにいたのはコリンファレルではなく、なすなかにしの中西だった。



なんでこうなるんだ…




要するにどうやったって成田凌にも町田啓太にもコリンファレルにもなれやしないということだ。

美容師はよく魔法をかけるなんて比喩が用いられる。

童貞も魔法を使える。

だがそれが相殺して、結果私に魔法が効かないとするのならば

あまりにも皮肉な人生だ。