不思議と共感性羞恥の湧く光景だった。

隣の部署から聞こえてきた会話に私は耳を傾けざるをえない状況になっていた。

『今回の電蟹観ました?えぐかったですね』

「いやあいまいちだったかな。次に期待って感じだな」

『一回観に行きたいんですよね』

「おっ!行く?一緒に行こうよ」

『結構昔から好きなんですか』

「まあ昔から観てたよ。まさかチンチロが武道館でやるなんて思いもしなかったなあ」


霜降り明星粗品のここ最近の無双っぷりはもう説明の必要はないレベルだ。

“二択を間違え続けた男”こと元雨上がり決死隊の宮迫氏を呼び捨てにし、批判。
ベテラン芸人達を大声で老害と切り捨てる姿は、たしかに惚れ惚れするほど恰好が良い。

電蟹とは粗品の月イチでルミネで行う単独ライブ、“電池の切れかけた蟹”のことだ。

もちろんチンチロは粗品のYoutube内の人気コンテンツである。


私が粗品のYoutubeを観たのは、大炎上直前の犬系カップルとコラボした回だったが、たしかにそれ以前から特にチンチロは人気を博し、“天井知らず”になっていたように思える。


反面、急激に、にわか粗品ファンのような連中が増えた。


その大半がこの会話に出てきたような“私、他の人とはちょっと視点違うんですよねー”アピのすごいサブカルバカ女と、それに群がる結構なオッサンなように思える。

「チンチロって奥が深いからいいんだよね。そりゃ武道館でも盛り上がるわ」

奥が深いとか・・なーにが武道館だよ。
俺らはずっとカイジのチンチロで育っただろうが。

そしていまとなりの部署で会話をしている二人もまぎれもなく“私、他の人とはちょっと視点違うんですよねー”アピのすごいサブカルバカ女と、それに群がる結構なオッサンだ。

そしてそしてそのオッサンはかつての俺だ。

この手のカウンターカルチャー女はだいたい自分自身の耐久力が異常なほど低いから、ちょっと同じ趣味分かる感出してなんとなく大人な感じで悩みを出しておけばどうにかなる。

そう思っていた時期がたしかにあった。

そうして私は大事な時期を好きでもないサブカルに費やしてしまったことがあった。

オッサン、うまくはいかないんだ。

なぜならそのバカ女をバカと見抜いて群がってくるオッサンはあんただけじゃないんだ。

たくさんたくさんいるんだ。ちょろいから。

そのバカをめぐって争いがおこる。

もう止まらない。オッサン同士で潰しあうことになる。

電池の切れた蟹を観に行けるのは・・・たった一人なんだよオッサン。

もう突き抜けるほどそのカルチャーを極めるしか勝ち目はないんだ。

そんなのおかしいじゃないか。もともと興味なんてないだろ。

チンチロそこまで興味ないだろ。

女は自分の代わりに言えない悪口を代表して言ってくれる人に憧れるだけで、オッサンはその穴を欲しがってるだけだ。

って全部俺じゃねえか。おぞましい。


でも粗品面白いですよね。

いつか霜降り明星の漫才を生でみたいと思っております。