「いつも怖くて、震えている」
戦場カメラマンの渡部陽一は、「命懸けで戦場に行くときは毎回どんな気持ちなの?」という問いにそう答えた。
きっかけひとつで生命を失いかねないような場所の真実を世界に伝える彼の役割故のその言葉は、余りにも重く、また刺さるものがある。
「石の上にも15年」
危険に身を置きながらもなかなか自身の写真と文章が使われることのなかった下積み時代を、師から頂戴した言葉を引用し、渡部陽一はそう評した。
15年。
早々に私は自分の活動を“才能がない”と自虐したものの、継続だけはちゃっかり続けている私はあと12年くらいでいきなり芽が出たりするのだろうか。
『いまどこー?』と中迫は言った。
「まだオフィスで仕事してる」と返すと、
『これからカラオケ行くんで駅前きてください』と強く彼女は言い、電話を切った。
特に何もアクションを起こさずに再び仕事をしていると、今度はLINEで
【まだー?】と送られてきた。
【誰がいるの?】と返すと、どうやら私の知らない人の送別会が行われていたようで、会もお開きになり有志達で二次会としてカラオケに行っているそうだった。
【早く!早く!】と中迫は急かしてくる。
【いや知らない人いるのにシラフでカラオケはきついて】
【ならこれ1時間で終わりますからその後飲みましょ】
【終わる頃には23時だよ…】
【大丈夫!大丈夫!】
大丈夫なことなんか何ひとつないわけで、すかさず同席しているであろう同じく同僚の加藤さんに
【中迫さん酔ってます?】
と送ると
【結構酔ってますね】
と返信がきた。
まったく…。
そう思いながら中迫さんに【いや今日は帰りなよ】とだけ送り、携帯の電源を切った。
中迫さんは社内でも人気が良いしノリは良いしかわいい。
ぶっちゃけ嫌いなことは何ひとつなかったが、それでもいまひとつ気分がのらなかった。
数日前、中迫さんはどこかのお土産のチョコレートを配った。
私の席にもやってきて、『お土産のチョコです』と言い、私にそれを渡す。
だが私は1か月前、中迫さんに、私はチョコレートが苦手で食べれないということを熱く語ったばかりだった。
もちろん中迫さんは何も悪くない。
普通に考えて、私ごときに興味を持ったり気をつかったりすりほうがおかしい。
世の中にはたまたま見かけた他所の家の子供に手を振ったりコミュニケーションをとったりして幼女にモテるー!と喜びつつも出来れば適齢期(女子大生から人妻から熟女辺りの年頃)の方に好かれたい!とはしゃぐおっさんもいるが、
きっと私も彼らとあまり変わらないのかもしれない。恐れ多い考えだ。
けれども不思議なことに、ひどくがっかりしてしまったのだ。
昔、2年間付き合った彼女が、最後のバレンタインにチョコレートをくれた。
「俺食べれないんだけど…」と言うと彼女は『あれ?そうだったっけ?』と言った。
2年間は長いようで短いが、その期間は間違いなく彼女ののことを一番大事に愛していたので、当たり前のように全て理解してくれているものだと思っていたし、チョコレートについてはどれだけ嫌いかも話していた。
それだけにあまりにもショックだった。
それを不覚にも思い出してしまったのだ。
石の上にも15年。
何かを成し遂げのにそれだけかかるのであるなら、私という人間を他人が理解するのにたかだか1か月ではどうにもならないことはわかってはいる。
でもつらいじゃないか。
頼むから人生に一度で良いから、俺のことはなんでも理解してる、って人間、生まれてくれよ。
しかしそんなことどうにもならないのがわかっているから、あと15年を耐え続けるしかないのだ。
戦場カメラマンの渡部陽一は、「命懸けで戦場に行くときは毎回どんな気持ちなの?」という問いにそう答えた。
きっかけひとつで生命を失いかねないような場所の真実を世界に伝える彼の役割故のその言葉は、余りにも重く、また刺さるものがある。
「石の上にも15年」
危険に身を置きながらもなかなか自身の写真と文章が使われることのなかった下積み時代を、師から頂戴した言葉を引用し、渡部陽一はそう評した。
15年。
早々に私は自分の活動を“才能がない”と自虐したものの、継続だけはちゃっかり続けている私はあと12年くらいでいきなり芽が出たりするのだろうか。
『いまどこー?』と中迫は言った。
「まだオフィスで仕事してる」と返すと、
『これからカラオケ行くんで駅前きてください』と強く彼女は言い、電話を切った。
特に何もアクションを起こさずに再び仕事をしていると、今度はLINEで
【まだー?】と送られてきた。
【誰がいるの?】と返すと、どうやら私の知らない人の送別会が行われていたようで、会もお開きになり有志達で二次会としてカラオケに行っているそうだった。
【早く!早く!】と中迫は急かしてくる。
【いや知らない人いるのにシラフでカラオケはきついて】
【ならこれ1時間で終わりますからその後飲みましょ】
【終わる頃には23時だよ…】
【大丈夫!大丈夫!】
大丈夫なことなんか何ひとつないわけで、すかさず同席しているであろう同じく同僚の加藤さんに
【中迫さん酔ってます?】
と送ると
【結構酔ってますね】
と返信がきた。
まったく…。
そう思いながら中迫さんに【いや今日は帰りなよ】とだけ送り、携帯の電源を切った。
中迫さんは社内でも人気が良いしノリは良いしかわいい。
ぶっちゃけ嫌いなことは何ひとつなかったが、それでもいまひとつ気分がのらなかった。
数日前、中迫さんはどこかのお土産のチョコレートを配った。
私の席にもやってきて、『お土産のチョコです』と言い、私にそれを渡す。
だが私は1か月前、中迫さんに、私はチョコレートが苦手で食べれないということを熱く語ったばかりだった。
もちろん中迫さんは何も悪くない。
普通に考えて、私ごときに興味を持ったり気をつかったりすりほうがおかしい。
世の中にはたまたま見かけた他所の家の子供に手を振ったりコミュニケーションをとったりして幼女にモテるー!と喜びつつも出来れば適齢期(女子大生から人妻から熟女辺りの年頃)の方に好かれたい!とはしゃぐおっさんもいるが、
きっと私も彼らとあまり変わらないのかもしれない。恐れ多い考えだ。
けれども不思議なことに、ひどくがっかりしてしまったのだ。
昔、2年間付き合った彼女が、最後のバレンタインにチョコレートをくれた。
「俺食べれないんだけど…」と言うと彼女は『あれ?そうだったっけ?』と言った。
2年間は長いようで短いが、その期間は間違いなく彼女ののことを一番大事に愛していたので、当たり前のように全て理解してくれているものだと思っていたし、チョコレートについてはどれだけ嫌いかも話していた。
それだけにあまりにもショックだった。
それを不覚にも思い出してしまったのだ。
石の上にも15年。
何かを成し遂げのにそれだけかかるのであるなら、私という人間を他人が理解するのにたかだか1か月ではどうにもならないことはわかってはいる。
でもつらいじゃないか。
頼むから人生に一度で良いから、俺のことはなんでも理解してる、って人間、生まれてくれよ。
しかしそんなことどうにもならないのがわかっているから、あと15年を耐え続けるしかないのだ。