僕らは大学の学友であり、同時に竹馬の友でもあるんだ。
彼はイケメンでしょ?
そうだな、たとえるなら“君に届け”の風早くんに似てるでしょ?
キミの年齢はいくつ?あ!言わないで。僕らは年齢を当てるのが得意なんだ。当てるよ。
18歳でしょ?
え?違うの?なんだ17歳かー。どっちかだと思ったんだけどなー。
え?違う?
まあまあ。いいじゃない別に。
あと名前を当てるのも得意なんだ。
だからもし名前が当たったら、連絡先を交換してよ。
キミの名前はズバリ!田中さんだ!
え?違う?
じゃあとりあえず僕たちといる時はキミは田中さんということにしておこうよ。
OK?じゃあこれでキミは田中さんね。はい。名前当てたから連絡先教えて。
ところで田中さんはさ、“猫の町”って知ってるかな?
実は先日、僕はひとり旅に出たんだ。
行先も目的もない、あてどない旅だ。
何本も列車を乗換、その度に気分で方向を選ぶと、いつのまにか列車は僕がまったく知らない駅に着いていた。
“猫の町”
僕は降りるべき駅はここだ!と思い、列車を降りたんだ。
そこは文字通り、人間でなく猫が支配する町だった。
何もかもが猫で営まれており、人間はひとりもいなかった。
その物珍しさに僕は興味を惹かれ、町の時計台に潜み、しばらくの間彼らを観察することにしたんだ。
数日が経ち、一匹の猫が声をあげた。
「あれ?人間の臭いがするぞ」
最初はそんなことに耳も貸さなかった他の猫たちも、徐々に段々と「たしかに人間の臭いがするぞ」「本当だ。人間の臭いだ」と騒ぎだした。
その日の夜になる頃には、猫たちは団結し捜索隊を結成し、人間探しを始めたんだ。
ひとしきり町を探しまわった猫たちは、「あそこから臭いがするぞ」と僕の潜む時計台を指さした。
僕は必死に息を殺して気配を消そうとしたんだけど、臭いだけは消せず、猫たちがどんどん時計台の僕が潜む場所へ迫ってきた。
「ここだ。ここから臭いがする」
ついに猫たちは僕の目と鼻の先までやってきた。
僕は覚悟をした。
けれども猫たちは、僕の顔の近くに鼻を近ずけて臭いを嗅ぎ、あたりを見渡すと
「おかしいな。たしかにここから人間の臭いがするんだけど」と言って、みんな引き返していってしまった。
わけがわからなかったが僕は助かったと思い、それから一睡もせず、朝になると荷物をまとめて町を飛び出した。
すぐにでもここを離れたかった僕は駅に着いて列車を待った。
だが、行きは停車した筈の列車は、駅に停車することなく、目の前を走り去っていった。
1本、2本、また1本と。
まるでそこに駅自体が存在していないかのように、列車は走り去っていく。
そこで僕は初めて気がついたんだ。
僕は既に、失われてしまっているのだ、と。