また人員が補充された。

あまり気にとめていなかったが、どうにも私の部署は異動が多すぎる。

「僕が前いた部署は異動なんて滅多になかったですよ。1人異動するだけで大騒ぎでした」

今月の頭に赴任してきた稲田さんはそう言って呆れていた。



とにかく部長はすぐに人を異動させる。

自分の飲み友達だけを据え置き、他の人間はまるで細胞を入れ替えるかのように変えていく。

最たる例では、1ヶ月前に異動してきた岩本さんは、1週間で異動させられた。

部長のお眼鏡にかなわなかったのだろう。


離職率も非常に高い。
人事部はヒアリングばかりするが何ひとつ変わらない。

ハラスメントの面談自体も担当者が部長自身なのでもう詰んでいる。


昨月はついに派遣社員まで入れ替えた。


新たに配属された派遣の武藤さんは40歳の美人だった。

『私ツボが浅くて〜』と言いながら彼女は誰の会話にも大笑いするのだが、当然部長のトークでも大笑いをするので、まんまとお気に入りになってしまった。

毎日何度も何度も武藤さんの席の周辺の社員にあれはどうなったこれはどうなったと詰問をし、くだらないジョークを交え、武藤さんの顔色を見て笑われて満足して帰っていく。


「あれほんと共感性羞恥出て無理です。オッさんが女性の機嫌とろうと高校生ノリかましてるみたいな感じで。ほんときついです」

目の前の席の青山くんが言った。


「人事に相談しようかな」

「やめなよ。自分が働きずらくなるだけだよ」


そう言って止める自分もだいぶ終わっているなと感じる。




ビッグモーターの不正事件はいまやハラスメント事件にまで発展し、とどまることを知らない。

あの会社に比べれば我が社の私の周辺など些細でしかない。


けれどもあの企業の報道以来常に、うちもいきなり大炎上しないかなーと思っている。

明日がこなければいいなー、と同じくらいの質量で思っている。