キャンドルジュンさんのピアスが怖すぎてまともにキャンドルジュンさんを直視できません。
空いてないはずなのに自分の耳に大穴が空いているような感覚になり、それがなぜか痛みを感じます。まさかの幻肢痛。ファントムペインなう。
ちなみに前情報一切なしで映画館に"最後まで行く"を観に行ったところ、広末涼子が出ており、またいつものように広末広末していたので大いに萎えました。
不倫でこうなる遥か昔から、私は広末涼子と西野七瀬が嫌いだ。
この二人が出てくるだけで、やたらと損した気分になってくる。
◯
iPhoneがリンゴループに突入し、使用不能になって早1週間が経過した。
とはいえ社用携帯が別にあるので、電話やメールはすることができるし、パソコンさえ開いてしまえばこのようにいくらでもインターネットができる。
唯一苦痛となる交通機関利用中の退屈については、家に積んである筒井康隆の"旅のラゴス"を読むことでなんとか耐えることができている。
要するに意外と、iPhoneひとつ無くなってもどうにでもなるのだ。
ただ不安はLINEだ。
いま現在確認することができないことはさほど問題無いのだが、逆に「もし回復してLINEを起動したとき、誰からも一件もLINEがきてなかったらどうしよう」という不安が非常に大きい。
既に1週間を超えている。
最低でもこの人とこの人とこの人は連絡かとれないことを心配してなんらかのLINEを入れておいてほしい。
もしもそれがなければ最悪だ。
孤独以上に自分の存在意義を見失ってしまう。
そしてもうひとつわずかな心配ではあるが、以前仲の良かった女性と頻繁に逢瀬していた時に、人気ゲームのフォールアウト4にハマってしまい、2週間以上一切携帯を見ずにゲームをやり続けたことがある。
2週間後にLINEを確認すると『来週暇?』みたいなスタートから『どうしたの?心配だよ』というメッセージを経て『連絡して!』というやや怒ってるっぽいLINEて締められている。
慌てて「ごめん、携帯見てなかった」と返信すると
『もう2度とそういう連絡がとれないとかやめて。次許さないから』と怒られてしまった。
現在その子とはその時ほど仲良くなく、連絡自体も微々たるものではあるが、もしたまたまこのリンゴループ時に彼女がなんらかのLINEを送ってきたとしたら、もう関係修復は不可能だろう。
なんてことだ。ただでさえ希少な女性関係が、いや、人間関係が、失われてしまう。
それはあまりにも怖い。
怖くてやはり、iPhoneの復旧が到底できそうにない。
◯
『宮崎さんに今度食事に行こうって言われたんです。だからみんなの予定聞いておきますね、って言ったら"俺は2人っきりが良いんだけど"って言われて。これってやっぱりほういうことなんですか?』
「間違いなく宮崎さんは狙ってるよ」
『私22歳ですよ?』
「え?キミ今年入社なの?」
『そうです。宮崎さんはおいくつなんですか』
「宮崎さんは…69歳だね」
『40歳も離れてる女性を誘うもんなんですか?』
「そこだよね。あれはオスとはいえお爺さんだからね。まさかお爺さんが孫くらいの子を口説くなんて思いやしないからね誰も。だからハラスメントにならずにすんでるんだよ」
『お断りしたほうがいいですかね?』
「断ったとしても本人も気にしないよ。チャラ男だから心は」
コロナがあけて飲み会が増えてきた。
先日は以前いた部署で一部社員の送別会があり、馴染みがあったことからありがたいことに私もお呼ばれすることとなった。
そこで初めて会話した吉村さんは、いままでマスク越しにしか顔を見たことがなかったが、いざ素顔で対面すると想像以上に美人だった。
「吉村さんはあれだな、有名女優に似てるね」
『え?言われたことないですけど誰に似てるんです?』
「…鈴村あいり」
『え?知らないです。有名なんですか?』
「いやまあカルト的ではあるけど…それくらい人気がありそうだってことだよ」
『そうなんですか?そういえば実は…』
そう言って彼女は69歳の宮崎さんに目下口説かれ中であることを相談してきた。
こうしてみると宮崎さんはまるでハリソンフォードのようなイケオジであるかのように思えるかもしれないが、実態は足を引き摺った100kg超えの汗臭い爺さんである。
『俺のホテルで飲もうって言われたんですこの間。それってやっぱりラブホテルのことですよね?』
「いや、ビジネスホテルだな」
『え、わざわざ飲むためにビジホとるんですか?』
「いやビジネスホテルから通ってるんだよ会社に毎日」
『え?家無いんですか?』
「あるよ。千葉の先に賃貸が。でもそこからだと通勤に時間がかかるでしょ?あの人電車乗りたく無いんだよ。だから会社の最寄でビジネスホテルとってるんだよ」
『お金持ちってことですか』
「ないよ…ただでさえ薄給のこの仕事で彼は嘱託だよ?しかも貯蓄もゼロだから」
そこまで言うと吉村さんも完全に引いていた。
オスの老人、というよりはむしろ珍獣を見るに近い感覚なのだろう。
「何ごとにもキリってものがあるってことだよね。あの爺さんみたいに若い頃から先のこと何も考えず、夢と女だけ考えて遊びまくってると70前にしても生活のために仕事しなくちゃならなくなるし、身体が悪くても誰もフォローしてくれなくなる。遊び人の末路だよ。彼は女好きなのに風俗に行く金もないんだ」
自分で言いながらなぜか自分が悲しくなってきてしまった。
俺もだいぶ後先考えず好きに生きちゃってるな…
未来のことを何も考えていないどころか、最近はそれを考えようとすると鬱になるため意図的に避けるようにすらなっている。
「俺もああなるんだろうな」
『ええ…同じように女性社員を口説いたりするんですか?皆さん』
「いや今の時代そんなことする奴いないよ。マジで時代の違い知らない爺さんだけだよ」
『じゃあ同じにはならないんじゃないですか?』
「同じにはならないよ。でも同じになるような気はするんだ」
『…深いですね』
吉村さんはスマートフォンを取り出した。
『LINE交換してくださいよ。宮崎さんのこと相談とかさせてください』
「ええ!?いいの!?」
『まずいですか?会社的に』
「いや全然大丈夫でしょ」
ラッキー!うっそ!超ラッキーなんですけど!!
私はすかさず携帯を取り出す。
そこで気づく。
ああ・・・俺携帯壊れてるんだった・・・
「吉村さんごめん。俺携帯壊れてるんだ」
『え?ああそうなんですか。なんかすみません』
「・・・いやほんとだからね」
『いやいや。何がです?』
「あのね。断りたくてこういうことを言ってるわけじゃないんだよ。本当に壊れてて」
『わかりました。大丈夫です。すみません』
「いやいや嘘でしょ。ラインID書いて!それで直ったら送るから!」
『いやそこまでしなくてもほんと大丈夫ですよ』
「いや違うから!え?なんで??なんでIDくれないの!?」
昔から連絡先教えてくださいと尋ねて『いま携帯壊れてるので…』と断る女に対しては「しょーもない理由こじつけやがって」と憤りを抱いていたが…まさか自分がその立場になろうとは。
そういえば10年くらい前になんかのオフ会でバーベキューに参加していた女性があまりにも綺麗だったので、一か八か思い切って「正直めちゃくちゃタイプなので連絡先教えてくれませんか?」と尋ねたことがある。
それを目にした参加者の泥酔自衛隊数名が私を見てクスクスと笑ったが、女性は一度私を上から下までじっくり眺めて『LINEのID、いまから口頭で言うんで覚えてくださいね』と言い、IDを教えてくれた。
家に帰り覚えたIDを打ち込んでみると"そのIDは存在しません"というメッセージが流れた。
あれは私を吟味した上で、一番後腐れないような断り方をしたということなのだろう。
彼女はいまも元気にしているのだろうか。
空いてないはずなのに自分の耳に大穴が空いているような感覚になり、それがなぜか痛みを感じます。まさかの幻肢痛。ファントムペインなう。
ちなみに前情報一切なしで映画館に"最後まで行く"を観に行ったところ、広末涼子が出ており、またいつものように広末広末していたので大いに萎えました。
不倫でこうなる遥か昔から、私は広末涼子と西野七瀬が嫌いだ。
この二人が出てくるだけで、やたらと損した気分になってくる。
◯
iPhoneがリンゴループに突入し、使用不能になって早1週間が経過した。
とはいえ社用携帯が別にあるので、電話やメールはすることができるし、パソコンさえ開いてしまえばこのようにいくらでもインターネットができる。
唯一苦痛となる交通機関利用中の退屈については、家に積んである筒井康隆の"旅のラゴス"を読むことでなんとか耐えることができている。
要するに意外と、iPhoneひとつ無くなってもどうにでもなるのだ。
ただ不安はLINEだ。
いま現在確認することができないことはさほど問題無いのだが、逆に「もし回復してLINEを起動したとき、誰からも一件もLINEがきてなかったらどうしよう」という不安が非常に大きい。
既に1週間を超えている。
最低でもこの人とこの人とこの人は連絡かとれないことを心配してなんらかのLINEを入れておいてほしい。
もしもそれがなければ最悪だ。
孤独以上に自分の存在意義を見失ってしまう。
そしてもうひとつわずかな心配ではあるが、以前仲の良かった女性と頻繁に逢瀬していた時に、人気ゲームのフォールアウト4にハマってしまい、2週間以上一切携帯を見ずにゲームをやり続けたことがある。
2週間後にLINEを確認すると『来週暇?』みたいなスタートから『どうしたの?心配だよ』というメッセージを経て『連絡して!』というやや怒ってるっぽいLINEて締められている。
慌てて「ごめん、携帯見てなかった」と返信すると
『もう2度とそういう連絡がとれないとかやめて。次許さないから』と怒られてしまった。
現在その子とはその時ほど仲良くなく、連絡自体も微々たるものではあるが、もしたまたまこのリンゴループ時に彼女がなんらかのLINEを送ってきたとしたら、もう関係修復は不可能だろう。
なんてことだ。ただでさえ希少な女性関係が、いや、人間関係が、失われてしまう。
それはあまりにも怖い。
怖くてやはり、iPhoneの復旧が到底できそうにない。
◯
『宮崎さんに今度食事に行こうって言われたんです。だからみんなの予定聞いておきますね、って言ったら"俺は2人っきりが良いんだけど"って言われて。これってやっぱりほういうことなんですか?』
「間違いなく宮崎さんは狙ってるよ」
『私22歳ですよ?』
「え?キミ今年入社なの?」
『そうです。宮崎さんはおいくつなんですか』
「宮崎さんは…69歳だね」
『40歳も離れてる女性を誘うもんなんですか?』
「そこだよね。あれはオスとはいえお爺さんだからね。まさかお爺さんが孫くらいの子を口説くなんて思いやしないからね誰も。だからハラスメントにならずにすんでるんだよ」
『お断りしたほうがいいですかね?』
「断ったとしても本人も気にしないよ。チャラ男だから心は」
コロナがあけて飲み会が増えてきた。
先日は以前いた部署で一部社員の送別会があり、馴染みがあったことからありがたいことに私もお呼ばれすることとなった。
そこで初めて会話した吉村さんは、いままでマスク越しにしか顔を見たことがなかったが、いざ素顔で対面すると想像以上に美人だった。
「吉村さんはあれだな、有名女優に似てるね」
『え?言われたことないですけど誰に似てるんです?』
「…鈴村あいり」
『え?知らないです。有名なんですか?』
「いやまあカルト的ではあるけど…それくらい人気がありそうだってことだよ」
『そうなんですか?そういえば実は…』
そう言って彼女は69歳の宮崎さんに目下口説かれ中であることを相談してきた。
こうしてみると宮崎さんはまるでハリソンフォードのようなイケオジであるかのように思えるかもしれないが、実態は足を引き摺った100kg超えの汗臭い爺さんである。
『俺のホテルで飲もうって言われたんですこの間。それってやっぱりラブホテルのことですよね?』
「いや、ビジネスホテルだな」
『え、わざわざ飲むためにビジホとるんですか?』
「いやビジネスホテルから通ってるんだよ会社に毎日」
『え?家無いんですか?』
「あるよ。千葉の先に賃貸が。でもそこからだと通勤に時間がかかるでしょ?あの人電車乗りたく無いんだよ。だから会社の最寄でビジネスホテルとってるんだよ」
『お金持ちってことですか』
「ないよ…ただでさえ薄給のこの仕事で彼は嘱託だよ?しかも貯蓄もゼロだから」
そこまで言うと吉村さんも完全に引いていた。
オスの老人、というよりはむしろ珍獣を見るに近い感覚なのだろう。
「何ごとにもキリってものがあるってことだよね。あの爺さんみたいに若い頃から先のこと何も考えず、夢と女だけ考えて遊びまくってると70前にしても生活のために仕事しなくちゃならなくなるし、身体が悪くても誰もフォローしてくれなくなる。遊び人の末路だよ。彼は女好きなのに風俗に行く金もないんだ」
自分で言いながらなぜか自分が悲しくなってきてしまった。
俺もだいぶ後先考えず好きに生きちゃってるな…
未来のことを何も考えていないどころか、最近はそれを考えようとすると鬱になるため意図的に避けるようにすらなっている。
「俺もああなるんだろうな」
『ええ…同じように女性社員を口説いたりするんですか?皆さん』
「いや今の時代そんなことする奴いないよ。マジで時代の違い知らない爺さんだけだよ」
『じゃあ同じにはならないんじゃないですか?』
「同じにはならないよ。でも同じになるような気はするんだ」
『…深いですね』
吉村さんはスマートフォンを取り出した。
『LINE交換してくださいよ。宮崎さんのこと相談とかさせてください』
「ええ!?いいの!?」
『まずいですか?会社的に』
「いや全然大丈夫でしょ」
ラッキー!うっそ!超ラッキーなんですけど!!
私はすかさず携帯を取り出す。
そこで気づく。
ああ・・・俺携帯壊れてるんだった・・・
「吉村さんごめん。俺携帯壊れてるんだ」
『え?ああそうなんですか。なんかすみません』
「・・・いやほんとだからね」
『いやいや。何がです?』
「あのね。断りたくてこういうことを言ってるわけじゃないんだよ。本当に壊れてて」
『わかりました。大丈夫です。すみません』
「いやいや嘘でしょ。ラインID書いて!それで直ったら送るから!」
『いやそこまでしなくてもほんと大丈夫ですよ』
「いや違うから!え?なんで??なんでIDくれないの!?」
昔から連絡先教えてくださいと尋ねて『いま携帯壊れてるので…』と断る女に対しては「しょーもない理由こじつけやがって」と憤りを抱いていたが…まさか自分がその立場になろうとは。
そういえば10年くらい前になんかのオフ会でバーベキューに参加していた女性があまりにも綺麗だったので、一か八か思い切って「正直めちゃくちゃタイプなので連絡先教えてくれませんか?」と尋ねたことがある。
それを目にした参加者の泥酔自衛隊数名が私を見てクスクスと笑ったが、女性は一度私を上から下までじっくり眺めて『LINEのID、いまから口頭で言うんで覚えてくださいね』と言い、IDを教えてくれた。
家に帰り覚えたIDを打ち込んでみると"そのIDは存在しません"というメッセージが流れた。
あれは私を吟味した上で、一番後腐れないような断り方をしたということなのだろう。
彼女はいまも元気にしているのだろうか。