『うちの子はね、小学3年生なんだけど変わってて。自分の世界観を大切にしてるっていうのかなあ?だからその世界にそぐわない子のことはすぐに名前も存在も忘れちゃうの。悪気はないの。だからそういう子にはほんと申し訳ないっていうか。そういう変わった子だから気にしないで、って感じ』



…よく言えるなあ自信満々に。


『学校の勉強はあんまり意味がないと思うの。だからそれ以外のところに価値を見出せる子になってほしいのよね』



…よく語れるなあ自信満々に。



『保護者の役員決めで私がクラス代表になったんだよね。立候補するつもりはなかったけど、なんかみんなやりたがらないから手をあげたらどうぞどうぞって感じになって。まあやってもいいかな、みたいな』


…よく自慢気に喋れるなあ。



そう嬉々として発していた同僚が、今日小学校に呼び出されたとのことで早退した。



『お子さん、宿題も一切やってないし毎日忘れ物だらけで一度現状見に来てくださいってなったみたい。体育着とかも持ち帰らないから相当不潔だってなってるみたいよ』



事務課で昼を共にしている黒沢さんが言った。

「いたなあ。小学校のときずっと体操着持ち帰らなくて怒られてた奴」


『あれだけ自慢してたのにね、お子さんのこと』

「恥ずかしくて仕方ないんじゃないですか?あれだけイキってたのに」

『結局ほったらかしてたんじゃない?あの人自分のことばっかりだし。気づいてすらなかったんだと思うよ、子供の現状』

「化粧エグいですからねあの人」

『それは関係ないでしょwでも良かったんじゃない?お子さんにとっては』



だっさ。



その一言につきた。


彼女はろくにコミュニケーションもとらないくせに自分の子育て論や教育論だけはやたらと語りたがるし、それができない他の親を不幸だとする。

勘違い以外の何者でもないし、不愉快でもある。


仕事もそうだ。


こうと決めたこと以外は頑としてやらない。



『自分のスタイルばっかりこだわって、あの子は相手のことを見れないのよ』


黒沢さんはそう言っていたが、まさにその通りだと思う。



以前会社に、彼女は突然自分の4歳の子供を連れてきたことがある。

『すみません、今日どこにも預けられなくて』

そういう彼女に最初は同情したが、それが1ヶ月近く続いたときにさすがに私はうんざりしてしまった。

『じゃあ在宅すればいいのに』


ヒソヒソと周りがそう言い出しても彼女は構わず、業務中も子供をあやしていた。


彼女のつけまつ毛は日を追うごとにグリンとなっていく。


濃い化粧、毎日白のブラウス、臭い香水。

何もかもが嫌いだった。



世間的には思いやりをもって彼女に接しなくてはいけない。

けれどもそれは難しい相談に感じる。



『毎日家事も育児も旦那がやってくれるんで。理想の旦那です』


その旦那は子供を会社で面倒見る嫁に何も思わないんだな。


まったくよくできた旦那だよ。



どっちに似たんだろうな。その不潔な世界観の中を生きるお前の子供は。

ちゃんとみてやれよ、と思う。