妹がいつのまにか手術を受け、入院していた。

『あんまり言わないほうがいいかと思って』と母親は言ったが、さすがに入院していることくらいは言ってくれてもいいのではないかと思った。

まあ色々あるのだろう。言わない理由は。


先日探偵ナイトスクープで中学生の頃以来30を超えてからも会話が一切無いという兄妹をみた。

実に16年あまりも会話もコミュニケーションもないようだが、特に何か大きなトラブルがあってそうなったというわけではないという。


一見理解しがたいかもしれないが、私はなんとなくそれがわかる気がした。


私と妹も決して仲は良くなかった。

ケンカをするとか会話もコミュニケーションもないとかそういうひどい状況ではないが、やはり中学生くらいの時から確実に壁のようなものがあり、それは今日に至るまで取り除かれてはいない。


以前双方ともに一人暮らしをしていた際に両親と出かけ、帰りの電車で先に両親が降車して二人になってしまったとき、とりあえず気まずくてお互い無言で車両を変えたことすらある。

妹は結婚をし、旦那も良い人で正月には会話を交わすことはあるが、やはりそれ以上お互いの近況に踏み込んだりはせず、別々に帰る。


しかし前述の通り、仲が険悪であるとかそういうことではないので、「兄妹仲悪いんだね」とカテゴライズされるのも非常に面倒くさく、そもそもまるで兄妹がいないかのように私は振る舞っている。おそらく妹も。


「いま親父の遺産の問題で妹とめちゃくちゃ揉めてるんだ。裁判しなくちゃならないし」


同僚の矢野はそう語った。


探偵ナイトスクープのその兄妹も含めて、色々な形がそれこそ人間の数だけある。


恐らく妹と遺産で揉めることはないだろう。


お互いに実家をもらう意思はないため、家は売りに出し、両親はその金でマンションに住むという。


変な関係だが身内と裁判することになるよりは遥かにマシだ。



そして何より、やはり妹なので、できれば健康で長生きしてもらいたいものだ。