プロでも無いのにSNSでちょこちょこ自作小説や脚本の出来進捗を報告する人の書く文章、めちゃくちゃ。

これはもう学会で発表しても良いレベルの精度である。

かくいう私自身もめちゃくちゃなので、仮に小説や脚本を書いていても、絶対にクソみたいな進捗報告や完成度公開はしないつもりでいる。







帰りの電車に揺られながら窓の外を眺めていると錦糸町に大きな大きなラブホテルができていた。


錦糸町駅前といえばラブホテルの椿が電車から見えるで有名だが、そのラブホテルが見えたのは一瞬のことで名前はわからなかった。


電車から見えるという点でいけば椿ホテルよりも亀戸駅周辺にみえるガラスの城というラブホテルが感慨深い。


高校生の頃よく一緒に帰っていた岩本と鹿間と3人で総武線の窓から誰が一番最初にガラスの城を視認して「ガラスの城!」と言えるかというあまりにも幼稚な30秒〜1分程度のゲームを毎日のようにしていた。

あの頃私達3人は高校生とは言うもののまだまだ子供であった。

そしてそれぞれガラスの城がラブホテルであることは薄々わかってはいたが、決してラブホテルであるということを口にせず、「ガラスの城!」と叫んでは「ウェーイ」と謎にちょけ合っていた。


自分達が童貞のまま終わるわけがないと既に信じていたし、いつかその時がきたら利用客としてそこを訪れ、昼間からsexをし、総武線から車窓を見る高校生に「ガラスの城!ウェーイ!」と呼ばれる日がくることも信じていた。




岩本は結婚し子供も生まれた。

彼に瓜二つの顔をして生まれた娘を彼がInstagramやFacebookで自慢するたびに、同級生達は口を揃えて「親に顔が似て不憫だ」と言った。

それは悪意に溢れていたが、彼の子供自慢はなぜか鼻についた。


鹿間には私自身が競馬を愛する彼に「そんなに好きなら馬刺でモノをしごいてろ」と誹謗中傷リプを浴びせてブロックされてしまい、それっきりだ。



私は3年前に椿ホテルを利用した。


『家がユニットバスだから大きいお風呂でゆっくり足を伸ばしたい』という女の子をたくみに…というよりは金で釣り椿ホテルへ誘導し、大きな泡風呂で酒を口うつしで飲み、そのままSEXを終えた後にベッドで2人で松原タニシ原作亀梨和也主演の事故物件を観た。

なぜか音量を低くしてみていたため何が起きているのかも何を言っているのかもよくわからなかったが、そのうち江口のりこが唐突にめちゃくちゃ怖く死んでびっくりした。


それから車窓から椿ホテルを見るたびに江口のりこがめちゃくちゃ死ぬ姿ばかりがイメージされるようになってしまった。



あの日の3人が3人、おそらくであるがガラスの城を利用したことは、今に至ってもないだろう。


性を覚えてからはラブホテルがピンキリであり、良いとこはめちゃくちゃ良いことを知ってしまったし、それ以前に我々3人は顔が悪くチャンスなんか数えるほどしかまわってこない。



だがまた何かのきっかけで3人で総武線に乗り亀戸駅を通過する際は、競い合いたいものだ。


誰があのホテルを最初に見つけ、叫べるかを。



「ガラスの城!ウェーイ!」


20年近く前に信じて疑わなかった未来で、実際にそう叫ぶことになるのは2000年代生まれの高校生ではなく、どうやら中年になった私達のようだった。