3月頭に申請した5月1日からの業務新契約の契約書が4月中旬に差し掛かろうかという現在、捺印はおろか当社内での確認が完了していない。
「そちらが提案してきた内容なのに契約書がこれだけ時間がたっても出ないのはどういうことなのですか?」
普段温厚な顧客担当者は明らかに憤っていた。
「大変申し訳ありません。再度確認します」
「明日ですよ明日。明日までにいただけないのであれば申し訳ないのですがこの話は白紙にします」
「しかし…」
「御社ほどではないのですが、うちも新規契約になると稟議に時間がかかるんです。5月1日に間に合わせるのであれば明日までが限界です。わかりますよね?」
「すみません。一度確認しますので折り返しさせてください」
私の勤める会社は契約管理に関する部署は独立し、専門部署となっている。
あいにく契約書草案の確認完了までのスケジュールは全てその専門部署が握っているため、たとえ顧客要望があろうがそこにはタッチできない。
『4月1日付の契約ですか?いま年度末なので間に合いません。5月1日付になるようお客さんと交渉してください』
2月28日の夜に契約の起案をしたところ、すぐに契約管理部の志村から翌日そのような連絡がきた。
「先方は4月1日付を希望しているのです」
『みんなそうです。そりゃみんな4月1日狙うでしょ。それで溢れているのでいままわされても確認できません』
「1カ月前に起案したのにですか?」
『そうです。年度末が業務が溢れることくらい念頭においた営業をしてもらわないと困ります。2カ月前行動になるようにスケジュールしてください』
なんて嫌なことを言うのだろうか。
まるで世界が自分中心に回っているとでも言わんばかりだ。
このタイプは相手にするだけ損をしてしまう。
仕方なく私は顧客へ事情を説明し、自身のスケジューリング不足であることを謝罪した上でひと月ズレでの契約開始を打診した。
内心納得はいっていなかったようだが、顧客もここで揉めても仕方ないとでも思ったのだろう。
「では5月1日は絶対で」と念を押し、了承してくれたのだ。
そして今日。申請から1カ月以上経ち、なんと志村の確認がまだ完了していない事態に至る。
ここから最速でも捺印申請まで1週間。郵送して+2日。下手をすれば顧客へ契約書が届くのは4月末くらいになるかもしれない。
「マジで遅いっす…」
『ですからもっと前もってスケジューリングしてくれと伝えたんです』
「いやいや…こっちはそれ飲み込んで1カ月延ばしてるんですよ。なんでできてないんですか。顧客マジギレです。白紙にする的なことまで言ってます」
『その顧客管理は営業さんの仕事でしょう?』
「その仕事が出来てないんです」
『それはそちらの問題でしょう』
「あの、ほんと怒られるのも俺、謝るのも俺、責任とるのも俺なんです。じゃあ契約書いいんで謝罪に同行してください」
『はあ?なんで謝罪同行しなきゃいけないんですか?そちらのスケジューリングの問題でしょ?これ以上言うならハラスメントで相談しますよ?』
「好きにしてください…」
この後上司伝いで本当にハラスメントのクレームがきてしまった。
「今回はおさめてよ。気持ちはわかるけど」
「…」
「納得できないの?」
「いや納得できないのではなく、こんな2カ月前行動のスケジューリングをそんなのダメだって言うなら営業なんかとってこれませんよ。せめてそれなら何ヶ月前ならどうにかなるのか指標出してほしいです」
「わかった。伝える」
「あのほんと言いたくないですけど、全部俺なんです。悪いのも俺、怒られるのも俺、謝るのも俺、責任をとるのも俺。別の部署でないのはもちろんのこと、同じ部署も責任個人にガン振りじゃないですか。それでおさめてくれって無理です」
「そうだよな。なんとかする」
いまの上司になってからというものこればかりだ。
なんでも言ってくれ、俺がなんとかするばかり。
しかしそれがなんとかなったことが一度たりともない。
言わせるだけ言わせておいて何もされない何も変わらないのが仕事において一番モチベーションが下がるのだ。
それなら頭ごなしに「無理」と否定されるほうがまだマシである。
「本当に…本当に困っています。助けてください。このことで責任を取りたくありません。納得せずに始末書を書きたくありません。助けてください」
私は何度も上司に頭を下げた。
今回はどうなるのだろうか。
「そちらが提案してきた内容なのに契約書がこれだけ時間がたっても出ないのはどういうことなのですか?」
普段温厚な顧客担当者は明らかに憤っていた。
「大変申し訳ありません。再度確認します」
「明日ですよ明日。明日までにいただけないのであれば申し訳ないのですがこの話は白紙にします」
「しかし…」
「御社ほどではないのですが、うちも新規契約になると稟議に時間がかかるんです。5月1日に間に合わせるのであれば明日までが限界です。わかりますよね?」
「すみません。一度確認しますので折り返しさせてください」
私の勤める会社は契約管理に関する部署は独立し、専門部署となっている。
あいにく契約書草案の確認完了までのスケジュールは全てその専門部署が握っているため、たとえ顧客要望があろうがそこにはタッチできない。
『4月1日付の契約ですか?いま年度末なので間に合いません。5月1日付になるようお客さんと交渉してください』
2月28日の夜に契約の起案をしたところ、すぐに契約管理部の志村から翌日そのような連絡がきた。
「先方は4月1日付を希望しているのです」
『みんなそうです。そりゃみんな4月1日狙うでしょ。それで溢れているのでいままわされても確認できません』
「1カ月前に起案したのにですか?」
『そうです。年度末が業務が溢れることくらい念頭においた営業をしてもらわないと困ります。2カ月前行動になるようにスケジュールしてください』
なんて嫌なことを言うのだろうか。
まるで世界が自分中心に回っているとでも言わんばかりだ。
このタイプは相手にするだけ損をしてしまう。
仕方なく私は顧客へ事情を説明し、自身のスケジューリング不足であることを謝罪した上でひと月ズレでの契約開始を打診した。
内心納得はいっていなかったようだが、顧客もここで揉めても仕方ないとでも思ったのだろう。
「では5月1日は絶対で」と念を押し、了承してくれたのだ。
そして今日。申請から1カ月以上経ち、なんと志村の確認がまだ完了していない事態に至る。
ここから最速でも捺印申請まで1週間。郵送して+2日。下手をすれば顧客へ契約書が届くのは4月末くらいになるかもしれない。
「マジで遅いっす…」
『ですからもっと前もってスケジューリングしてくれと伝えたんです』
「いやいや…こっちはそれ飲み込んで1カ月延ばしてるんですよ。なんでできてないんですか。顧客マジギレです。白紙にする的なことまで言ってます」
『その顧客管理は営業さんの仕事でしょう?』
「その仕事が出来てないんです」
『それはそちらの問題でしょう』
「あの、ほんと怒られるのも俺、謝るのも俺、責任とるのも俺なんです。じゃあ契約書いいんで謝罪に同行してください」
『はあ?なんで謝罪同行しなきゃいけないんですか?そちらのスケジューリングの問題でしょ?これ以上言うならハラスメントで相談しますよ?』
「好きにしてください…」
この後上司伝いで本当にハラスメントのクレームがきてしまった。
「今回はおさめてよ。気持ちはわかるけど」
「…」
「納得できないの?」
「いや納得できないのではなく、こんな2カ月前行動のスケジューリングをそんなのダメだって言うなら営業なんかとってこれませんよ。せめてそれなら何ヶ月前ならどうにかなるのか指標出してほしいです」
「わかった。伝える」
「あのほんと言いたくないですけど、全部俺なんです。悪いのも俺、怒られるのも俺、謝るのも俺、責任をとるのも俺。別の部署でないのはもちろんのこと、同じ部署も責任個人にガン振りじゃないですか。それでおさめてくれって無理です」
「そうだよな。なんとかする」
いまの上司になってからというものこればかりだ。
なんでも言ってくれ、俺がなんとかするばかり。
しかしそれがなんとかなったことが一度たりともない。
言わせるだけ言わせておいて何もされない何も変わらないのが仕事において一番モチベーションが下がるのだ。
それなら頭ごなしに「無理」と否定されるほうがまだマシである。
「本当に…本当に困っています。助けてください。このことで責任を取りたくありません。納得せずに始末書を書きたくありません。助けてください」
私は何度も上司に頭を下げた。
今回はどうなるのだろうか。