「僕が小学生の時、家でマンガを読んでいたときのことなんです。


その時、後ろで弟がゲームをしていたんですけどね。”音がうるさいから小さくして”ってお願いしたんです。


それからしばらく僕はマンガを読んでて。


でも弟は全然言う事をきいてくれず、音量を下げてくれないんです。


さすがに頭にきて、振り返って怒鳴りつけようと思って。


で振り向いたら・・・そこに弟がいないんですよ。


あれ?いつの間に部屋を出てったんだろう?なんて考えながらまたマンガを読んでるとですね、


玄関から”ただいまー”って声がしたんです。


駆けつけてみると、帰宅したばかりの両親と…弟がいたんです。


あれ?いつ外出たの??


そう尋ねると両親は言うんですよ。


”いやいや。最初から一緒に買い物に行ってたよ”って。


聞けば弟、勉強の合間で、両親と買い物に行くか留守番してテレビゲームをするか迷ったって言うんです。



つまりですよ。


僕が見たあの弟は、買い物に行かなかった世界線の弟ってことです。


それ以外に説明がつきますか?」




「いやゲームのデータは?」


「データ?」


「セーブデータ見なさいよ。それで現実かどうかわかるでしょ記録残るんだから」


「ああ・・・」


「あのね、その話でいけば、”テレビの音量を下げてくれ”が正解だよ。ゲームじゃ記録が残るから並行世界感が薄れるんだよ」


「じゃあこの話は嘘だと思いますか?」


「嘘だよ。それもわりと有名な話だよ」



「なんだー。またかー」



「またかじゃないよ。とよぴーね、キミは以前俺にボロクソ言われてからなぜかオカルト話を自分の体験談のように持ってくるけど。それなに目的なの?」


「いや本当かもしれないじゃないですか」



「キミさあ。テレビみなよ。ネット見なよ。キミいちいち説教くさく本読め本読め言うけどさ。本ばっか読んでるからアホみたいなこと言うんだよ」


「テレビやネットみてもなんの意味もないですよ?」


「本読んでも意味ないよ」


「ありますよ」


「キミ、ビジネスの勧誘が最初でしょ。もう何しに来てるの?」


「友人として遊びたいだけですよ」


「あ、そう。ならわりと楽しいわ」