またバレンタインがくるのか・・・という季節になってきた。
毎年毎年この時期に決してなにか起こるわけでもなく、またバレンタインがくるのか・・・をつぶやいてしまう。
いつもなんだかんだ何かある気もしているし、なんだかんだ何もない気もする。結局30を過ぎてからの数年間の2月14日は、自分でも何がなんだかわからない。
以前書いたかもしれないが、私はチョコレートが苦手だ。
大学生の頃、サークルのメンバーで夏場にレンタカーで遊びに行った際、そのうちの一人がズボンの後ろポケットにチョコをしまっていたことを忘れて熱気溢れる車内でそれが溶け出し、絵面も臭いも最悪であったことがあり、以来それがトラウマなのだ。
それからしばらくして、当時1年以上付き合っていた彼女がバレンタインデーにチョコレートをくれた。
前年はワッフルだったのに。
「ありがとう。でも俺チョコ食べれないんだけど。知ってると思うけど」
『え?そうだっけ?』
このやりとりがあまりにもショックだった。
何度も何度も私はチョコレートが食べれないと言っていたし、デートでは毎回それを避けてすらいた。
にも関わらず、本来最も大切な相手の苦手なものを、彼女は忘れていたのだ。
なぜか自分という存在が失われたような感覚になったのを覚えている。
これが一因となり、ほどなくして私はその彼女と別れた。
『それは多分、その彼女は他に複数人と付き合ってたんですよ』
17年後の現在、隣席の木下に雑談でその話をすると、彼女はそう言った。
「え、そういうことなんですか?」
『思い当たるふしありますか?』
「ああ・・・」
そう言われて思い出したのは、わずかに4年前のことだった。
突然なんの前触れもなく、その彼女からラインがきたのだ。
『久しぶり。覚えてる?』
と。
「うん覚えてるよー」と返すと少しばかり私と付き合っていたころの思い出を彼女は続けた後に
『もしよかったら久しぶりに会わない?嫌いだったり嫌だったら無視していいから』と送ってきたのだ。
違和感があった。
なぜなら私達の別れはお互い忙しくなってきて会う機会も減っていって気持ちがなくなって・・・というもので、決して連絡もとりたくない会いたくないとなるほどの別れをしたわけではなかったからだ。
それなのにそういう言い方って・・・。
正直彼女になんの未練もなく、またわりと昔の彼女を会うことに一切の興味を私は抱かないため、このライン自体を無視し、以後連絡をとることもなかった。
だが今日、木下にそう言われて合点がいった。
ああ。浮気してたのかなあ。
実際彼女は家の近くに住んでいる幼馴染と怪しい関係だった。
多分そいつだなと思った。
あの幼馴染ムカつくわー。なんか一回ジーッとこっちみてきたけど。
なんのつもりでガン見してきてたんだよ。腹立つなー。
そりゃ忘れるわな。俺のチョコなんて。
思い出せば思い出すほど、苦いものです。
まるでビターチョコだよ。俺食えないけど。