先週の金曜日に、知らない番号から会社携帯に連絡が入っていた。
折り返してみると電話口から「私、コーギー社の種田と申しますが、ダックスフンド社の有馬さんでよろしいですか?」と問われた。
そうです。と答えると「先日からお願いしている横浜の案件、その後進捗いかがでしょう?」とさらに尋ねられた。
私は横浜の案件などひとつもやっておらず、全く心当たりがない。
しかしながら電話口のコーギー種田は、ダックスフンド私を名指しにしている。
「ごめんなさい。失礼ですが何の件だったでしょうか?」
「え?横浜の件ですけど。どういうことです?」
「この番号はどちらで?」
「マルチーズ社の小倉さんに教えてもらいました」
小倉さん…私の顧客のひとつであるマルチーズ社の担当窓口だ。ということは私で間違いない。
「すみません、ちょっと確認させていただいてよろしいですか?」
「はい。そしたらすぐまた折り返しいただけるのですね?」
「わかりました」
電話を切り私は動揺してしまった。
え?どういうこと…。
まったく心当たりがないんだけど横浜。
しかし全ての関係者が私を名指ししている。
ということは関係無いということはない。
可能性としては私が完全にこの案件を受けながらすっかり忘れ去ってしまっているか、あるいは私の不在中に社内の誰かが勝手にこの仕事を受け、私を担当にし、それを伝え忘れているか。
あるか?そんなこと。
考えても埒があかないので、恥をしのんで私はマルチーズ小倉に電話をしてみた。
「すみません。実は御社から連絡先を聞いたということでコーギー社の種田さんから電話がありまして」
『はいはい。ありましたか。そしたら直接やりとりしてもらっていいですか?』
「すみません…お恥ずかしい話なのですが私、この件全く心当たりがなく…どういう案件か教えていただけないでしょうか」
『え?なんで?メールしてくれたじゃないですかこの件』
「…いえ。多分私はメールしてないので…もしかしたらうちの別の者とやりとりとかなさってます?」
『いやいや、有馬さんとしてますよ』
「もしかしたら別会社の有馬さんとか…」
『いや、ミニチュアダックスフンド社の有馬さんですよ』
「なるほど…あの、私はミニチュアダックスフンドの有馬ではなくダックスフンドの有馬でして…。ミニチュアダックスフンドさんは弊社ダックスフンドと名前は似てるのですが無関係の別会社さんです…」
『…ごめんなさい。大変失礼しました。間違えました。あとは私で対応します。ほんとごめんなさい』
「いえいえ!全然大丈夫です」
そう言い私はホッとした。
びっくりしたー!!マジで仕事受けときながら無意識に忘れたのかと思ったー!
もうそうなったらなんらかの病気だからほんと怖かったー!よかったー!
同時にまあ誰も悪くないけど紛らわしい話だなと思った。
○
昨日、また知らない電話番号から電話がかかってきた。
出ると「私、コーギー社の久保田と申します。有馬さんのお電話でよろしかったでしょうか」と聞こえてくる。
またかよ…
「あ、例の件ですよね?マルチーズさんにはお伝えしたのですが当件ミニチュアダックスフンドさんの担当案件でして。私どもは会社名が似てるのですがダックスフンドでして。大変申し訳ないのですがダックスフンドの有馬でなくミニチュアダックスフンドの有馬さんへご連絡いただけますか」
「え?はあ。じゃあそのミニチュアダックスフンドの有馬さんの連絡先教えてください」
「名前は似てるのですが無関係な会社さんですので、マルチーズさんにご確認お願いできますか?」
「教えてくれないんですか?」
「いえ、存じないんです。申し訳ありません」
「そうですか」
そう言って電話は切られた。
感じ悪いな…ちょっとうぜえ感じだったな。
そんなことを思いながらしばらく自分の仕事をしていた。
午後になるとまたコーギーの久保田から連絡がきた。
その時私は忙しかったため、少しイライラしていたこともあり、その電話を無視した。
その後もしつこく連絡があったので、こちらも意地になり徹底的に電話を無視した。
夕方、総務の井元さんが私に言う。
『有馬さん、コーギー社の久保田さんという方から電話が入っているのですが』
「あー。そいつね、全然間違い電話で別会社への連絡を延々僕に問い合わせてきてるんですよ。ウザイんで有馬は休みだって言ってもらえますか?」
『わかりました。ただなんか至急で連絡取りたいそうです。六本木の件で』
「…六本木?横浜の件ですよね?」
『いや、六本木って言ってました』
「…ちょっと保留にしといてもらえますか」
『わかりました』
嫌な予感がした。
すぐに私はパソコンでいまかかってきているというコーギー社の番号をGoogleにて入力した。
そして携帯に先週の金曜日にかかってきていた番号と照らし合わせる。
…別の番号だ。
携帯に入っていた番号を今度はGoogleで検索する。
…べ、別の会社だ。
なんとコーギー社はコーギー社で、名前は全く同じでありながら全然別の会社が2社あったのだ。
つまりこの日にかけてきた電話相手は、先週金曜日のミニチュアダックスフンドに用のあるコーギーではなく、正真正銘ダックスフンドに用のあるコーギーだったのだ!!
やべえ!!
あわてて電話にでて、すぐに謝罪する。
「私の勘違いでおかしな対応になってしまい申し訳ありませんでした!!!」
「いや別にいいですけど…ちょっと疲れました」
「本当に申し訳ありません」
こんなことがあるだろうか。
針の穴を通すようなレベルの偶然の確率が重なり尽くし、私はやらかしてしまったのだ。
ちょっと怒られながらも私は感動した。
こんなこと現実におこるなんて。アンジャッシュのコントだよまるで。
同時にこうも思った。
こんなしょーもないことで、宝くじ当選ばりの確率を使っちゃったよ…と。
もう私はこの先、強運を手にできることは二度とないだろう。
折り返してみると電話口から「私、コーギー社の種田と申しますが、ダックスフンド社の有馬さんでよろしいですか?」と問われた。
そうです。と答えると「先日からお願いしている横浜の案件、その後進捗いかがでしょう?」とさらに尋ねられた。
私は横浜の案件などひとつもやっておらず、全く心当たりがない。
しかしながら電話口のコーギー種田は、ダックスフンド私を名指しにしている。
「ごめんなさい。失礼ですが何の件だったでしょうか?」
「え?横浜の件ですけど。どういうことです?」
「この番号はどちらで?」
「マルチーズ社の小倉さんに教えてもらいました」
小倉さん…私の顧客のひとつであるマルチーズ社の担当窓口だ。ということは私で間違いない。
「すみません、ちょっと確認させていただいてよろしいですか?」
「はい。そしたらすぐまた折り返しいただけるのですね?」
「わかりました」
電話を切り私は動揺してしまった。
え?どういうこと…。
まったく心当たりがないんだけど横浜。
しかし全ての関係者が私を名指ししている。
ということは関係無いということはない。
可能性としては私が完全にこの案件を受けながらすっかり忘れ去ってしまっているか、あるいは私の不在中に社内の誰かが勝手にこの仕事を受け、私を担当にし、それを伝え忘れているか。
あるか?そんなこと。
考えても埒があかないので、恥をしのんで私はマルチーズ小倉に電話をしてみた。
「すみません。実は御社から連絡先を聞いたということでコーギー社の種田さんから電話がありまして」
『はいはい。ありましたか。そしたら直接やりとりしてもらっていいですか?』
「すみません…お恥ずかしい話なのですが私、この件全く心当たりがなく…どういう案件か教えていただけないでしょうか」
『え?なんで?メールしてくれたじゃないですかこの件』
「…いえ。多分私はメールしてないので…もしかしたらうちの別の者とやりとりとかなさってます?」
『いやいや、有馬さんとしてますよ』
「もしかしたら別会社の有馬さんとか…」
『いや、ミニチュアダックスフンド社の有馬さんですよ』
「なるほど…あの、私はミニチュアダックスフンドの有馬ではなくダックスフンドの有馬でして…。ミニチュアダックスフンドさんは弊社ダックスフンドと名前は似てるのですが無関係の別会社さんです…」
『…ごめんなさい。大変失礼しました。間違えました。あとは私で対応します。ほんとごめんなさい』
「いえいえ!全然大丈夫です」
そう言い私はホッとした。
びっくりしたー!!マジで仕事受けときながら無意識に忘れたのかと思ったー!
もうそうなったらなんらかの病気だからほんと怖かったー!よかったー!
同時にまあ誰も悪くないけど紛らわしい話だなと思った。
○
昨日、また知らない電話番号から電話がかかってきた。
出ると「私、コーギー社の久保田と申します。有馬さんのお電話でよろしかったでしょうか」と聞こえてくる。
またかよ…
「あ、例の件ですよね?マルチーズさんにはお伝えしたのですが当件ミニチュアダックスフンドさんの担当案件でして。私どもは会社名が似てるのですがダックスフンドでして。大変申し訳ないのですがダックスフンドの有馬でなくミニチュアダックスフンドの有馬さんへご連絡いただけますか」
「え?はあ。じゃあそのミニチュアダックスフンドの有馬さんの連絡先教えてください」
「名前は似てるのですが無関係な会社さんですので、マルチーズさんにご確認お願いできますか?」
「教えてくれないんですか?」
「いえ、存じないんです。申し訳ありません」
「そうですか」
そう言って電話は切られた。
感じ悪いな…ちょっとうぜえ感じだったな。
そんなことを思いながらしばらく自分の仕事をしていた。
午後になるとまたコーギーの久保田から連絡がきた。
その時私は忙しかったため、少しイライラしていたこともあり、その電話を無視した。
その後もしつこく連絡があったので、こちらも意地になり徹底的に電話を無視した。
夕方、総務の井元さんが私に言う。
『有馬さん、コーギー社の久保田さんという方から電話が入っているのですが』
「あー。そいつね、全然間違い電話で別会社への連絡を延々僕に問い合わせてきてるんですよ。ウザイんで有馬は休みだって言ってもらえますか?」
『わかりました。ただなんか至急で連絡取りたいそうです。六本木の件で』
「…六本木?横浜の件ですよね?」
『いや、六本木って言ってました』
「…ちょっと保留にしといてもらえますか」
『わかりました』
嫌な予感がした。
すぐに私はパソコンでいまかかってきているというコーギー社の番号をGoogleにて入力した。
そして携帯に先週の金曜日にかかってきていた番号と照らし合わせる。
…別の番号だ。
携帯に入っていた番号を今度はGoogleで検索する。
…べ、別の会社だ。
なんとコーギー社はコーギー社で、名前は全く同じでありながら全然別の会社が2社あったのだ。
つまりこの日にかけてきた電話相手は、先週金曜日のミニチュアダックスフンドに用のあるコーギーではなく、正真正銘ダックスフンドに用のあるコーギーだったのだ!!
やべえ!!
あわてて電話にでて、すぐに謝罪する。
「私の勘違いでおかしな対応になってしまい申し訳ありませんでした!!!」
「いや別にいいですけど…ちょっと疲れました」
「本当に申し訳ありません」
こんなことがあるだろうか。
針の穴を通すようなレベルの偶然の確率が重なり尽くし、私はやらかしてしまったのだ。
ちょっと怒られながらも私は感動した。
こんなこと現実におこるなんて。アンジャッシュのコントだよまるで。
同時にこうも思った。
こんなしょーもないことで、宝くじ当選ばりの確率を使っちゃったよ…と。
もう私はこの先、強運を手にできることは二度とないだろう。