年内の仕事が納まった。

今年の納会は無しとお達しがあったため、非常に静かな最終日となったわけだが、午後の段階でやる仕事はもうほとんど無くなっていた。


今年から赴任した上司からの指示は出なかった。


「15時から大掃除をして定時になったら皆さん帰りましょう」と言ったが、我々が欲していたのはその言葉ではなく、「納会も無いですから各自仕事と掃除が終わり次第帰ってください」であったた。



15時になり雑巾や箒を用意しだしてみたが、ほとんどの社員が仕事の手を止めず、パソコンをかたかたと打ち続ける。


「15時から掃除だって言ってんだから仕事やめろよ。意味わからない奴らだな」

近くで太田がブツブツと不満を漏らした。


まったくその通りだなと思ってしまった。


けれども掃除も少人数であっても1時間程度で終わってしまう。

そこから定時までの約2時間は本当にやることがなく、ただ椅子に座りYahooニュースやWikipediaに目を通す時間となる。


前の課では上長が「仕事終わってる人はどんどんあがっちゃってねー」と早い帰宅を促していただけに、この無駄な2時間は私のストレスを蓄積させた。


適当に外出予定をいれて帰ろうと私は決めた。


そのため年末の挨拶を直接せず、チャットで終わらせることにした。



私は井元さんにチャットを送った。


以前の日記にも書いたが、私は井元さんへジグザグというバンドの布教を行い、失敗に終わっている。


『ずっと言おうと思っていたんですけど伝える機会がなかなか無かったので…私、前にジグザグはあまり合わなかったって言いましたけどいまめちゃくちゃ聴いてます』


「ええ?本当ですか!?ジグザグですよ??」

『なぜか妙に耳に残ってしまって。引き返して聴いてみたらすごく良かったです』

「えー!嬉しいです。外したと思ってたので」

『いつも良い音楽紹介してくれてありがとうございます。1月になったらカラオケ行きましょうよ』

「ぜひ!必ず誘います!」



なんて幸せなチャットだろうか。


これはデート確定である。


「ちなみになのですが、二人でいいんですか?カラオケ」

『いいですよ。それとも誰か誘いますか?』

「いや、二人で行きましょう。美味しいご飯食べましょう」

『それはカラオケじゃなくなってますねw』



モテない私でもわかります。


これはワンチャン、ある。

まんざらでもないっぽいなあの女。



きせずしてとても良い仕事納めとなりましたとさ。