皆が幸せなはずのクリスマスイブに自転車を盗まれてしまった。

毎週土曜日は自転車を使用して外出する用事があるため、いつものように家を出たところ、あるはずの私の自転車が駐輪場から無くなっていた。

即座に盗まれたことを察し、気持ちを切り替えたことで外出先への遅刻はせずに済んだが、まさか住んでいる家の駐輪場からわざわざ自転車を盗まれるなんて思いもせず、そんな民度の場所に住んでしまっていることにガッツリと凹んでしまった。


あんまりではないか。


昨年のクリスマスはたしか来年こそは良いことがありますようにと祈りながら終えた筈だが、その来年がこのザマである。

私自身は自転車はおろか盗まれやすい傘等も盗んだことは一度もない。


以前まったく無意識でコンビニでガムを手に握りしめ、他の商品をカゴにいれて会計を済ませて家に帰ったあとで手に握りっぱなしのガムを会計していないことに気がついたこともあったが、その時もちゃんとコンビニに戻り事情を話して謝罪した上でしっかりと会計をした。


そんな私から盗む…奪うというのかこの街は。



用事を済ませて家に帰ってテレビをつけると、新海誠の新作のCMが流れていた。

大学の時、ちょうどメジャーデビューして間もなかったRADWIMPSにハマり、その後の人生はとにかく暇さえあればRADを聴いていたわけだが、数年前に新海誠とタイアップしたあたりから、それまでが嘘かのように全くRADを聴かなくなってしまった。


いまでも学生時代の知り合いに「まだRAD聴いてるの?」なんて尋ねられることがあり、「いや最近は全然」と答えると「まあ我々の年齢でRADはきついよな」的なリアクションをされる。

だいたいの人がそうだ。

私の場合は決してそんな年齢とともにRADが苦手になったというわけではなく、新海誠作品か苦手で、結果セットに考えられることが多くなったRADから自然と離れていった…といった感じだ。

まあそれを年齢とともに苦手になった、というかもしれないが。



「誘われていったライブでRADWIMPSの何十年後かに君と出会っていなかったアナタに向けた歌を初めて聴いて、マジで圧巻で言葉が出なかったのをいまでも覚えてるけど…あれはすごかったな」


その年のクリスマスはどんなもんだっただろうか。

少なくとも夜遅くに自転車の防犯登録の書類を探すような人生だとは想像もしていなかっただろう。



あなた1人と他全人類、どちらかひとつ救うとしたらどっちだろかな。

迷わずYOU。


そんなことを恥ずかしがりもせずに当時の恋人に言い放っていた頃を懐かしく思う。


きっと自転車は返ってこないだろう。


それでも盗まれたのは死ぬほどムカつくので、しっかりと警察に届出るつもりである。