お酒が好きだ。


中学生くらいの時は自分がお酒が好きになるであろうことなんか想像もしていなかったし、大学生の時初めて二日酔いを経験し、お酒なんぞ二度と飲んでなるものか!とさえ思っていたが、年をおうにつれてどんどんどんどお酒が好きになっていく。


もちろん私は、誰かと飲むのが好きだ。


普段一人で飲んでいるが、それは一緒に飲んでくれる人がいないからであって、基本的には誰かと一緒に飲みたいと思っている。



けれどもここ最近は飲み仲間であった大木が妊娠で産休に入り、川崎は寿退社で去ってしまったので飲みにいってくれる相手がいなくなってしまった。



そこへ彗星の如く現れたのが村井だ。


村井はとにかく酒が好きだ。


毎日のように飲んでおり、「酒の誘いだったら絶対行きますよ」と言う。



たいていこういう人間は飲んでみると妙に酒癖が悪かったり、自分の武勇伝ばかりでウンザリするものだが、この村井は非常に酒癖が良く、また聞き上手でもある。


正直最高の人材だ。何度か飲んでみたが全て楽しい。



昨日はとても飲みたい気分だった。


とにかくお酒が飲みたい。


そうだ。いまの俺には村井くんがいる。


村井くんと飲みにいこう。



「村井くん。今日どうですか?行きませんか?」


「すみません。実は先約が・・・」



ああ・・・忘れていた。


この手の大当たり人材を、私ごときが独占できるわけがない。


盲点だった。


「ああ・・・ごめんなさい」


「いえこちらこそ。来週も実は前の部署の人とかとでいっぱいなんですよ」



来週もいっぱい・・・多忙・・・



そうだよなあ・・・有限なんだよなあ人気者は。



人生で人気者を独占できたことがないな俺は・・・



こうして私はまた、ひとりで神田の居酒屋で飲んだわけである。


これまでもそうであったかのように、これからもそうなるのだろう。



ああ・・・誘いにくくなっちゃったな村井くん。



なんだかんだ・・・なんだかんだやっぱり誘って断られるの凹むんだよな。


これあと人生約40年。ずっと同じことでへこんでいくのでしょうか。



まあその前に私は死ぬでしょう。