「社外向けの広報用に何人か写真撮影するから。メンバーは俺が選ぶから」
と部長は言うと、すぐに何人かの名前を呼んだ。
「やっぱり見映えの良いイケメンがいいよな、うん。じゃあイケメンたち、撮影行くよー」
決してイケメンでもなんでもない中高年の部長は肩で風を切りながら社内のイケメン達を引連れて別室へと自慢気に消えていった。
…私は選ばれなかった。
言い訳すべきことはあって、もともと部長は私が嫌いだ。
間違いなく嫌いだ。
だがそれでもこう「お前はイケメンではない」という現実をはっきりと突きつけられるのは、厳しいものがある。
「あれ?撮影行かなったんですか?」
この日の夕方、席に戻ってきた多田が話しかけてきた。
「…呼ばれてないんですよ僕」
「え?だって自分で昔はイケメンだったって言ってたのに。呼ばれてないんですか?」
「…もうイケメン引退してるんで僕。ほっといてくれませんか」
多田は紛うことなきイケメンだ。
ジャニーズ系とも違う、海外モデル系のイケメンだ。
イケメンな上に190cmの高身長で、定時であがり生まれたばかりの子供の育児に奥様と共に励むなどもう完璧に近い。
そんな多田も、まさかの私のイケメン扱いされない不貞腐れに戸惑いをみせている。
「いやでもまあ…社歴で選ばれてるみたいですよ。社歴が低い人優先で」
「…僕、多田さんより社歴一年下です」
「あと年齢ですよ。若い人中心って言ってたし」
「…僕、多田さんより年齢ひとつ下です」
自分で言っていて惨めな気持ちになった。
多田さんわかりますか?この惨めさがわかりますか?
わからないでしょう?そうでしょう。
そりゃ多田さんにだって悩みはあるかもしれないですよ。
イケメンにはイケメンにしかわからない悩みがあるかもしれませんよ。
でもそんなことわからないですよ。イケメンじゃないんだから俺は。
「ダメもとでお願いしていいですか?」
「なんですか?」
「多田さんの顔画像使ってマッチングサイトやっていいですか?」
「ダメに決まってるじゃないですか」
「イククルとか…」
「絶対ダメだわ。訴えますよ」
いやイククル知ってんのかい。
このイケメンも、どうやら闇は深そうだ。
と部長は言うと、すぐに何人かの名前を呼んだ。
「やっぱり見映えの良いイケメンがいいよな、うん。じゃあイケメンたち、撮影行くよー」
決してイケメンでもなんでもない中高年の部長は肩で風を切りながら社内のイケメン達を引連れて別室へと自慢気に消えていった。
…私は選ばれなかった。
言い訳すべきことはあって、もともと部長は私が嫌いだ。
間違いなく嫌いだ。
だがそれでもこう「お前はイケメンではない」という現実をはっきりと突きつけられるのは、厳しいものがある。
「あれ?撮影行かなったんですか?」
この日の夕方、席に戻ってきた多田が話しかけてきた。
「…呼ばれてないんですよ僕」
「え?だって自分で昔はイケメンだったって言ってたのに。呼ばれてないんですか?」
「…もうイケメン引退してるんで僕。ほっといてくれませんか」
多田は紛うことなきイケメンだ。
ジャニーズ系とも違う、海外モデル系のイケメンだ。
イケメンな上に190cmの高身長で、定時であがり生まれたばかりの子供の育児に奥様と共に励むなどもう完璧に近い。
そんな多田も、まさかの私のイケメン扱いされない不貞腐れに戸惑いをみせている。
「いやでもまあ…社歴で選ばれてるみたいですよ。社歴が低い人優先で」
「…僕、多田さんより社歴一年下です」
「あと年齢ですよ。若い人中心って言ってたし」
「…僕、多田さんより年齢ひとつ下です」
自分で言っていて惨めな気持ちになった。
多田さんわかりますか?この惨めさがわかりますか?
わからないでしょう?そうでしょう。
そりゃ多田さんにだって悩みはあるかもしれないですよ。
イケメンにはイケメンにしかわからない悩みがあるかもしれませんよ。
でもそんなことわからないですよ。イケメンじゃないんだから俺は。
「ダメもとでお願いしていいですか?」
「なんですか?」
「多田さんの顔画像使ってマッチングサイトやっていいですか?」
「ダメに決まってるじゃないですか」
「イククルとか…」
「絶対ダメだわ。訴えますよ」
いやイククル知ってんのかい。
このイケメンも、どうやら闇は深そうだ。