「遺族の意向を汲んで、判決は死刑でお願いします」
裁判の冒頭でそう発言した被告人は、しかしながらその犯行の事実や動機に関しては全て黙秘をした。
大阪天満カラオケパブ事件。
女性従業員に恋をした56歳の男性による凄惨な事件であるが、やはり犯人の身勝手さがとても目を引く。
自身の死刑を望みながら犯行自体を黙秘するのはなぜか。
あくまで私的な考察ではあるが、やはりそれもこの男の身勝手だろう。
事実として、自身が犯した事件であるのは間違いない。起訴事実に関しても。
だが認めたくないのだ。
これだけ愛し、心も通わせていると一方的に感じていた相手に拒否、拒絶され、それに逆上し犯行に及んでしまったという事実を。
それを認めてしまえば、ここまでは店員と客以上の関係だと思っていたものが、しつこく面倒くさい客のストーカーになってしまう。
恐らくそれが耐えがたいのだろう。
この被告人自身以外の人類は全て既に、そういう認識しかしていないのにも関わらず。
56歳にもなり、妻子もある身でありながら自惚がすぎる。あまりにも身勝手だ。
そして「死刑でお願いします」も、愛する人の生命を奪ったことを死でもって償う。それこそが愛であるという、あまりにも身勝手な自惚れでしかないのだ。
そこに一切の反省はないのだろう。
○
以前職場の先輩に、今村という男がいた。
ある日彼に「お前の行きつけの店に連れてってくれ」と頼まれ、仕方なくその当時よく通っていたガールズバーへ案内したところ、今村は店員の1人であるカスミちゃんに一目惚れし、翌日からカスミちゃん出勤日は毎日その店に通うようになった。
差し入れやプレゼントは最初は些細なスナック菓子やジュースだったものが、いつのまにか服や装飾品へと代わり、最終的に彼は高そうな時計まで買ってあげていた。
しばらくして店員の一人から私は相談を受けた。
『今村さんがカスミちゃんがあがるまで店に居座ったり、カスミちゃんにしつこく住所をきいたりしてそろそろもうまずい。そういうことをやめるよう説得してくれない?』と。
彼女が言うにはカスミちゃんはNGを出すつもりだが、逆恨みされそうだからだすに出せず、困っていると。
また、無責任な同僚従業員が今村と連絡先を交換し、カスミちゃんのスケジュールやプライベートについてもリークしていることが判明する事態になっているという。
正直面倒ごとはごめんだったが、私自身が仕事も含めて今村のことがめちゃくちゃ嫌いになっていたので、感情もあいまりそれを引き受けることにした。
「ストレートに伝えていいの?」ときくと『カスミちゃんどうこうじゃなく、店として出禁だからもう来ないでくださいと伝えてほしい』と言う。
そして後日、私は今村にそれを伝えると、彼は「なんで関係ないお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ」とやはり憤った。
「紹介したのが俺だから俺まで怒られてるんです。警察呼ばれますよ?」
と言うと「カスミに電話してきく」と言ってきたので、あわてて
「出禁店の人に電話したのが判明したら本当に警察呼ばれますよ。それに俺も会社に報告します」
と言うと、そのまま何も答えず、フラフラとどこかへ行ってしまった。
数日後に今村は鬱病による休職を申し出、その半年後には自主退職をした。
あれから私も気まずくて店にも行っていないし、相談してきた女の子の連絡先も消してしまったし、もちろん今村とも連絡はとってもいないのでどうなったのかはわからないが、大きな報道になっていないあたりは一安心といったところだろう。
だが一歩間違えれば、同じような事件が起きていたのかもしれない。
私の対応も、あれが正しいのかわからない。
同時に、これまた一歩間違えれば、自分自身が今村、あるいは大阪天満カラオケパブ事件の被告のようになってしまっていたのかもしれない。
私自身、モテない寂しさやストレスを埋めるため、当時はガールズバーに通っていた。
一目惚れしてしまうようなかわいい店員を何人も知っているが、いま私がそこでトラブルを抱えず生きているのは、たまたまなのかもしれない。
この差がなんだったのかはわからない。
けれども、
けれどもだ。
己の欲のため、他人の生命を奪うようなことがあってはならない。
彼らよりは少しばかり、他人を思いやることができ、少しばかり他人の苦痛をわかることができる人間でよかった。
遺された遺族の方のみならず、自身の妻子や人生での知り合いを想い、被告人はとんでもなく自身を恥じてほしい。
そして奪った生命に償いをしてくれ。
どうせこいつは死刑を求めても死刑になるなんて思ってもいない狡猾な卑怯者だ。
反省に反省を重ねた上で、是非死刑よりも重い人生を苦しむと良い。
亡くなられた被害者の方のご冥福を心より祈ります。
裁判の冒頭でそう発言した被告人は、しかしながらその犯行の事実や動機に関しては全て黙秘をした。
大阪天満カラオケパブ事件。
女性従業員に恋をした56歳の男性による凄惨な事件であるが、やはり犯人の身勝手さがとても目を引く。
自身の死刑を望みながら犯行自体を黙秘するのはなぜか。
あくまで私的な考察ではあるが、やはりそれもこの男の身勝手だろう。
事実として、自身が犯した事件であるのは間違いない。起訴事実に関しても。
だが認めたくないのだ。
これだけ愛し、心も通わせていると一方的に感じていた相手に拒否、拒絶され、それに逆上し犯行に及んでしまったという事実を。
それを認めてしまえば、ここまでは店員と客以上の関係だと思っていたものが、しつこく面倒くさい客のストーカーになってしまう。
恐らくそれが耐えがたいのだろう。
この被告人自身以外の人類は全て既に、そういう認識しかしていないのにも関わらず。
56歳にもなり、妻子もある身でありながら自惚がすぎる。あまりにも身勝手だ。
そして「死刑でお願いします」も、愛する人の生命を奪ったことを死でもって償う。それこそが愛であるという、あまりにも身勝手な自惚れでしかないのだ。
そこに一切の反省はないのだろう。
○
以前職場の先輩に、今村という男がいた。
ある日彼に「お前の行きつけの店に連れてってくれ」と頼まれ、仕方なくその当時よく通っていたガールズバーへ案内したところ、今村は店員の1人であるカスミちゃんに一目惚れし、翌日からカスミちゃん出勤日は毎日その店に通うようになった。
差し入れやプレゼントは最初は些細なスナック菓子やジュースだったものが、いつのまにか服や装飾品へと代わり、最終的に彼は高そうな時計まで買ってあげていた。
しばらくして店員の一人から私は相談を受けた。
『今村さんがカスミちゃんがあがるまで店に居座ったり、カスミちゃんにしつこく住所をきいたりしてそろそろもうまずい。そういうことをやめるよう説得してくれない?』と。
彼女が言うにはカスミちゃんはNGを出すつもりだが、逆恨みされそうだからだすに出せず、困っていると。
また、無責任な同僚従業員が今村と連絡先を交換し、カスミちゃんのスケジュールやプライベートについてもリークしていることが判明する事態になっているという。
正直面倒ごとはごめんだったが、私自身が仕事も含めて今村のことがめちゃくちゃ嫌いになっていたので、感情もあいまりそれを引き受けることにした。
「ストレートに伝えていいの?」ときくと『カスミちゃんどうこうじゃなく、店として出禁だからもう来ないでくださいと伝えてほしい』と言う。
そして後日、私は今村にそれを伝えると、彼は「なんで関係ないお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ」とやはり憤った。
「紹介したのが俺だから俺まで怒られてるんです。警察呼ばれますよ?」
と言うと「カスミに電話してきく」と言ってきたので、あわてて
「出禁店の人に電話したのが判明したら本当に警察呼ばれますよ。それに俺も会社に報告します」
と言うと、そのまま何も答えず、フラフラとどこかへ行ってしまった。
数日後に今村は鬱病による休職を申し出、その半年後には自主退職をした。
あれから私も気まずくて店にも行っていないし、相談してきた女の子の連絡先も消してしまったし、もちろん今村とも連絡はとってもいないのでどうなったのかはわからないが、大きな報道になっていないあたりは一安心といったところだろう。
だが一歩間違えれば、同じような事件が起きていたのかもしれない。
私の対応も、あれが正しいのかわからない。
同時に、これまた一歩間違えれば、自分自身が今村、あるいは大阪天満カラオケパブ事件の被告のようになってしまっていたのかもしれない。
私自身、モテない寂しさやストレスを埋めるため、当時はガールズバーに通っていた。
一目惚れしてしまうようなかわいい店員を何人も知っているが、いま私がそこでトラブルを抱えず生きているのは、たまたまなのかもしれない。
この差がなんだったのかはわからない。
けれども、
けれどもだ。
己の欲のため、他人の生命を奪うようなことがあってはならない。
彼らよりは少しばかり、他人を思いやることができ、少しばかり他人の苦痛をわかることができる人間でよかった。
遺された遺族の方のみならず、自身の妻子や人生での知り合いを想い、被告人はとんでもなく自身を恥じてほしい。
そして奪った生命に償いをしてくれ。
どうせこいつは死刑を求めても死刑になるなんて思ってもいない狡猾な卑怯者だ。
反省に反省を重ねた上で、是非死刑よりも重い人生を苦しむと良い。
亡くなられた被害者の方のご冥福を心より祈ります。