コロナ感染症の保険金を申請した。


そもそも高校に入るときに、その学校の指定でわけもわからず加入した保険は、現在に至るまでほぼ何もしておらず、お恥ずかしい話、掛け率すらよくわかっていなかった。


『ご連絡ありがとうございます。良ければお会いして直接お話できませんでしょうか』


電話口では保険金がいくらおりるのかはお答えできないと担当を名乗る女性は、私に喫茶店で会いましょうと告げた。



あーこれ絶対なんらかの営業かけられるわー。



すぐにそう思ったが、それでも保険金は欲しいので、やむなくその誘いにのることにした。


電話口の声はなかなか良い感じだ。

 

これでもし美人だったら契約をちらつかせてエロいことがしたい。

 

かつては平然とそういうことを言っていたし、なんなら本人にさえそういうことを言っていたような気さえするが、いまは本当にそういうことを言うのもダメになってしまった。

 

それは仕方のないことかもしれないが、今回私はやはりなんでコロナの保険金申請してその支給条件のひとつが会って面談なんだよと思っているし、死ぬほど億劫ではあったのでもう誰かにめちゃくちゃ怒られてでもそう思うことにした。

 

 

『14:00に西口のマクドナルド2階でお待ちしています』

 

 

電話口の女性はそう言った。

 

 

当日、いざ時間に現地へ赴くと、店内は非常に混雑していた。

 

西口のマクドナルド2階・・・与えられた情報はこれだけである。

 

平日の昼に都内のマクドナルドでスーツ姿の女性を1人見つけることがどれだけ困難なことか皆さんお分かりになるだろうか。

 

もうまったくどの人がこの保険のお姉ちゃんであるかわからない上、「すみません。待ち合わせの人ですか?」と訊いてまわるわけにもいかず、ただただ時間だけが過ぎていく。

 

もうこの段階で私はだいぶウンザリしていた。

 

センスがなさすぎないか。待ち合わせ場所も条件も乱雑すぎる。

 

出会い系サイトの待ち合わせより難しいわこれ。

 

 

しばらくすると入電。

 

『どちらにいますか?』

 

「探したのですが見当たらなくて」

 

『もしかして3階行きました?2階ですよ』

 

 

それは西口のマクドナルドじゃなくて東口のマクドナルドだ。

 

西口のマックは3階ねえよ。塾だよ。

 

しかしそれを指摘するのもうんざりした私は、「すぐに行きます」とだけ伝え、電話を切った。

 

 

 

辿り着いた東口のマクドナルドで待ち受けていたのは60歳前後のおばちゃんだった。

 

老齢のベテランじゃないかよ・・・

 

 

がっくりしながら席につく私におばちゃんは『この度は大変でしたね。もう大丈夫なんですか?感染はいつからですか?』と畳みかけた。

 

すぐに店内に、あ、こいつコロナだったんだ。そして保険申請してるな・・・という空気が流れた。

 

老練保険員とは思えぬ配慮の無さ。

 

もう帰りたくて仕方なかった私は会話も早々に陽性証明書と銀行口座を伝えた。

 

『これで申請します』と老練は言った。

 

そしてすぐに

 

『ドルで積立しませんか?』

 

と言ってきた。

 

 

ほらきたよ・・・これがメインだよ・・・

 

ここからはひたすら私は検討します。とだけ伝えた。

 

 

『よかったらライン交換しませんか?』

 

「すみません。ガラケーでラインやってないんです」

 

なんで60のおばちゃんに俺ガラケーですと伝えねばならないのか。逆だろうよ普通・・・

 

 

それでも

 

 

保険屋さんありがとうございます。

 

おろしていただける保険、本当に助かります。

 

ただ使うのではなく、有意義に生活のために使用致します。

 

あなたがたもこの国を支えてくれる、大きな一員の一人です。

 

引続きよろしくお願い申し上げます。