ついにコロナ感染期間を終えた。

伸びきった髭を剃り、顔を洗い、歯を磨き、身支度を整え、いよいよ10日ぶりに外出をした。

美容室を予約していたため、電車に乗らねばならなかったが、たった10日では駅も街も特に変わることはなかった。


待望の外食。

吉野家へ行き牛丼を食べたが、まあいつも通りそれは美味しかった。

しかし清掃が行き届いておらず、床がとても汚かったので、ここで食べたのは失敗したなあと感じた。



美容室では髪の毛を一気に短くした。


もともとあまり髪を切らないため、髪型にも無頓着であり、最後に散髪したのは今年の5月の頭だった。

普段は5ヶ月から半年は散髪をしない。

なのでいつもよりは早いほうだ。


けれども10日間自宅軟禁を余儀なくされ、何回も鏡の前の自分と向かい合っているうちに、やたらと髪の長さを不潔に感じ、一刻も早く散髪したくなってしまった。

こればかりは自宅療養を経ての変化なのだろう。



「ああ…ちょっとこの髪質じゃあその髪型は難しいかもしれません」


私の髪質が特異なのかどうかはわからないが、事前にこの髪型にしたいと選んだものやその場でヘアカタログを読みながら決めた髪型を指定すると、だいたいどの美容師にもこう言われてしまう。


これはまるで、「お前その身なりでその髪型とか似合うわけねえだろ」と厳しめに否定されているように毎回思ってしまうので、一か八か髪型を決めていくときは悪口を言われるんだという覚悟をもたないといけない。


今回は見事にバチへと転じたため、どうせまたコボちゃんみたいな髪型にされるんだろと半ばあきらめつつ、「じゃあおまかせで」と告げてみた。


数十分後、案の定私はコボちゃんだった。


もうこの日本という国では、散髪においてはベースをコボちゃんにする、という法律が存在しているのではないか。

あるいは定期的に客の髪型をコボちゃんにしないと、美容室としての営業許可を剥奪されてしまうのではないか。

そうとすら感じるレベルで安定のコボちゃんだ。


私は礼を述べ、コボちゃんで外の空気を吸った。



緑色のワンピースを着た女が目の前を通り過ぎていった。


肌の露出は多く、胸の谷間はくっきりと開き、尻のラインはくっきりと、というかもうTバッグが透けて見えんばかりだった。


もはややりすぎでちょっと頭のネジとんじゃってんのかなとも思ったが、5分後に私を包み込んだのは眼福だったなあという歓喜だった。

それもこれも、外に出れるからこそ。


こうして私は、日常に戻ったのだった。