感染10日目。

ついにこの懲役刑が終わりを迎える。

まず何をしに外へ行こうかと考え、映画を観たり散歩をしたり外食をしたりと色々考えたが、結局美容室を予約することにした。

一度感染したこの身をどこか洗浄したい気持ちになったのだ。


同時に10日間伸ばした髭ともおさらばである。


普段は髭を伸ばさないため、最初の3日くらいは伸びる髭を整えながら、「おいおい、髭を伸ばしたらわりとイケメンじゃねえか」なんて鏡を見ながら考えていた。

けれどもそれも5日目あたりからは形骸化した上、何かしら引っかかるこの髭が鬱陶しくて仕方なくなってしまった。


いまはどちらかといえば脱毛したいくらいだ。




この10日間を振り返ってみる。


感染初日はあれ?これやっちゃったくさいな程度であったが、2日目3日目はその体調の悪さは一般的な風邪とは比較にならなかった。

なんにせよ無事に生きて日常に戻れて良かった。



とにかく孤独だった。


それは人恋しさが絡みつくものではない孤独だ。


喩えるなら世界の中でただ一人だけ、時間の流れから置き去りにされてしまったような。

何も起きないし、何が起きているのかもわからない孤独。

やることがないのでとりあえず家で可能な限り仕事をしたり、家事をしたりするが、それは通常の時間の流れからは外れているのだ。


感染者の中には、この時間を有意義に活用する人もいるだろう。

しかし私はそれができなかった。

結果として、時間だけがどんどん失われていく感覚に陥ってしまう。

そして循環の中の人々を見て思うわけだ。孤独だと。


何かを考えさせられたり、誰かに救われたりということも特筆してなかったと思う。


この10日間に意味があったとは思えない。


故に、浮かぶことは一つだ。


もう二度と、コロナウイルスに感染したくない。