相方の丸島が修羅の道を歩んでいる。




「聞いてほしい話がある」というので耳をかたむけてみると、喫茶店で彼は場所をわきまえることもなく


「俺は人妻と不倫している」と言った。



私と彼はもともとプロレスが好きなのだが、なんと彼はTwitterで「一緒にプロレスを観にいきましょう」とDMナンパを繰り返していたのだから驚きだ。



「初めて会ったときも身体のラインがわかるエロい服を着ていて、”階段がヒールだときついから”って俺の腕に絡みついてきたんだよ。そりゃやるもんもやるでしょ」



一度恰好つけたように煙草を燻らせた丸島は続ける。



「でも相手の旦那にバレたんだ。夜いきなり彼女から電話がかかってきて”旦那が話したいことがあるって”って言ってきたときはマジで焦ったよ」



きけばなんでも電話で旦那に「お前らのことを全部知ってるけど、正直お前らに使う労力すらもったいない」と言われたらしい。


「だからそのまま関係を続けているんだけどねー。やばいかな?」


「え?不貞の事実を認めた上でさらに関係続けてるの??」


「そうそう。やばいのはわかってるけど、相性が良いんだよなあ」



積み重なっていく罪・・・。アホなのかこいつは。



「どう思う?やめたほうがいい?」


「いややめたほうがいいでしょ。やばすぎるでしょ。何もかも失うくらい報復される危険性ありますよ」


「だよねー。やめるかー。残念だなー」



これをきいて直観的に私は思った。


こいつ、やめないな、と。



彼の女性遍歴は地雷に溢れている。



一人称がボキの私服に蝶ネクタイをつけるマジシャン。


自称魔法使いで居酒屋のトイレでキスをせがむぬりかべのようなおばさん。


ネットに自撮りのヌード写真を載せ、『男役になって』と誘うおばさん。


SEX中も怪獣の帽子を取らない女。


夜這いをサプライズ的に仕掛けてくる手塚治虫似の漫画家。


デートの度に唐揚げ弁当を手作りしてくるぬらりひょんみたいなおばあさん。


カニバリズム愛好家を自称し、公衆の面前で丸島に足を舐めさせる明らかにやばい女。


そして旦那にばれているのに同じ相手と不倫を続ける人妻。



彼は地雷が好きなのだ。





不倫は悪しき罪だと人は言う。


たしかにそうなのかもしれない。


だが、少なくとも第三者がそこに首を突っ込む必要は無いと私は思う。


当事者間で話し合い、解決に至らない場合がしかるべき専門家の出番であり、そこに我々野次馬が介入できるスキはないはずだ。




きっと丸島は近い将来制裁を受けるだろう。




そうなったとしても、私の人生には、正直何の影響もない。


だが、取材はさせてほしいなとは思っている。