小さい頃側転できた?と尋ねられた。

続けて、いまもできる?と言われ、私はとりあえず「できない」と答えた。

同時に小学校時代の同級生の安藤さんを思い出した。

安藤さんはクラスで一番人気のある女の子で、誰よりも優しく天真爛漫だった。

器械体操を習っていた安藤さんに、小学4年生のときにロンダートを教えてもらってから、やたらと私はロンダートばかりやっていた。

気軽に私の名前を呼ぶ安藤さんにいつのまにか惹かれていた私はいつも安藤さんと同じグループにいたし、常に彼女の言うことに従っていた。


小学校を卒業してから、私は男子校に進学したのだが、そこで異性に目覚め、とにかく誰か彼女が欲しく、他校の安藤さんへやたらと連絡をとった。


何度も何度もメールをし、しつこく電話をかけ、家の前で待ち伏せまでした私は紛れもなくストーカーだった。

結局彼女の迷惑ヘイトが溜まりに溜まったところで、友人の1人が私が離席した瞬間に私の携帯を使用し勝手に彼女に電話をし、彼女は激怒。

その件で私は地元の笑い者になっただけでなく、彼女との関係は完全に断たれることとなった。


あの頃はあまりのショックで立ち直れなかったし、それから数年は黒歴史として深く苦しむことになったが、それもしばらくすれば完全に自虐ネタとして利用できるまで昇華した。


安藤さんはいまどうしているだろうか。


久しぶりにロンダートでもしてみるか、と私は助走をとろうとした。


しかし、いざやろうとすると、どの程度かはわからないが怪我を追う可能性に恐怖した。

どう考えても運動不足のこのだらしない身体で、ロンダートは無理だった。

結局私は、こわくてこわくて、ロンダートも側転もできなかった。