ここ数ヶ月あまりにも頭痛がひどいので、専門医に診てもらうようになった。


インターネットで調べた頭痛の高度医療体制の恵比寿のクリニックは、今回予約をとり二度目の受診となる。


しかし休日にも関わらず恵比寿につくと協力会社から電話がある。
「明後日のアポイントがどうしても調整がつかず…」


わざわざ休みに掛けてくるな。頭が痛い。


京都弁の混じる谷医院長は20代後半くらいでとても美人だ。
先生を見ているだけで頭痛が治る。


10分後に協力会社から再び入電。「やっぱり明日で大丈夫です」

いったいなんのつもりなのか。頭が痛くて仕方ない。


恵比寿駅改札を出ようとすると「係員の窓口へ」と表示され、出ることができなかった。


指示通り係員のところにいくと相撲取りのような女が、イライラした様子で駅員に何か言っていた。

これだけ太ってれば体感温度も高くイライラもするだろう。それにしても、胡麻のような目を引き攣らせて、くちゃくちゃとガムを噛み、摂政のない女だ。見ていて頭が痛くなる。


しかし谷先生は素晴らしい。

『暑い中何度も歩かせてしまってすみませんね』

『今日はこの前とは違う検査をしますね。スパルタでいきますからね』



谷先生



好きです。


著名な小説家になれば女医と結婚できるだろうか。

谷先生は恵比寿改札の相撲取りとは正反対のタイプだ。


さらに若くて可愛い看護師に別室での検査へ案内され、何やら写真をたくさん撮られていると、その途中で外で天気雨が降った。

「やば。僕ふとん干してきちゃいました」

『あら、そうなんですか』

「あー今夜は谷先生の自宅で休まないとだな。谷先生は誰か看護師の方の家かホテルに行くことになりますね」


そう言うと看護師さんツボに入ったらしく、ずっと笑い、思い出し笑いも止まらなかった。

笑いすぎだよ。


けれども私の芸風を理解してくれる人は稀少だ。


そんな会話内容も知らず、診察室に戻ると谷先生は『しばらくはなるべく運動はしないように。お酒もだめ。セックスや笑いすぎもだめ。本でも読んでゆっくりしてくださいね』と言った。


私は礼を言い、窓口で金を払い、自宅に戻ってから、シーヴァス・リーガルをストレートで飲みながら、Netflixで女たちは二度遊ぶを観た。



ダメと言われればやりたくなってしまうのが人間の性だ。

しかしながらセックスだけは一人ではやりたくてもどうにもならない。

風俗か…

そこまでして自分の懐を虐める必要があるだろうか。

そんなことを考えていると、より一層頭痛は悪化したのだった。