退職したはずの以前の会社に再度就職する夢を観た。

何もかもが嫌になり、もう一生戻ることはない、なんなら絶対許さないくらいに思っている会社だ。

強制的に定時で打刻させられたタイムカードも、立て替えといて言われて店にもらった領収書も、束になって家に眠り、貰えるはずのものも、返してもらうべきものも、何ひとつ得ることができなかった勤め先だ。


勤務終盤、私はほぼキレていて何もかもにイライラしていたはずだったが、そこは夢の中。当時の関係者達が当時の関係者のまま私の再就職を受け入れた。

そしてまた、何事もなかったかのようにブラックな日々が始まっていった。


そこで目が覚めた私は、身体中の脂汗をタオルで拭いながら、寝惚けたままこう思った。



ああ、結局ここに戻ってくるのか。

結局、俺が通用する世の中はこういう犯罪組織に近いレベルのクソみたいなブラック企業界隈だけなのか。

と。


夢で良かったは良かったが、現実私は誰の役にも立てていない日々が続いている。



でもまあ不本意に生命削られるよりマシか。なんて思いながら再び眠りについた。



また夢をみた。



とんでもない悪臭を放つ女性器を、長時間舐めさせられる夢だった。


これはこれでまた、耐えがたい悪夢であった。









取引先の若い担当者が飛んだ。

以前から「コミュニケーション能力だけは自信があります」を地で行くような仕事ぶりで、納期を全く守れない彼に私は多少ならずともうんざりしていた。

その彼は先週中に必要書類や資料を全て用意しますと豪語し、リマインドをかける度に大丈夫です!と強く言っていた。

それが金曜日末になってもなんの音沙汰もなくなってしまったので相手会社の固定電話にかけると休んでいると代理返答があった。

今日までに提出していただくものがあるのですがと告げると彼の上席を名乗る男が電話に出て、「大至急私でやります」と慌てながら返答し、その日の夜23時に無事資料は提出された。


そして本日。

いきなり知らない番号から電話がきたので応答すると、それはその取引先の彼からであった。

「お世話になった人を裏切りたくないので」と彼はそれっぽいことを言っていたが、訊けば訊くほど彼の弁明は呆れたものだった。


「つらくて仕方ない状況だったんですけど、知り合いに"逃げてもいいんだよ"と言われて。それで逃げ出してしまいました」


まあ他社のことなのでその内情はどんなものなのか追及も言及もしないが、その代わりに誰かが大事か金曜日を終電間際まで犠牲にしなくてはならなくなった現実があるということを忘れてはならない。

「今度プライベートで飲みにいきましょうよ」と彼は言った。

「何言ってんの?」とさすがに私も声を大にしてしまった。

ぶっちゃけバカだとは思っていたし、まあ納期は守らないだろうと1週間近く締切を早めていたので私自身の被害は薄いが、少なからず迷惑を掛けた相手にヘラヘラと飲みに行きましょうよとは何事か。


まったく。



昨今、Twitterではインフルエンサーたるアカウントが、このギスギスした世の中を生きる術の、手段のひとつとして「辛かったら逃げてもいいんだよ」とツイートをする。

それをみた社会人経験も無さそうな有識者ごっこみたいなアカウントが、さも自らが発信しているかのようにそのツイートを引用する。

そしてあまりにも無責任に、ドヤ顔で言うのだ。


「逃げていいんだよ!つらいときは逃げよう!」

と。



あのね、基本逃げちゃダメだから。



ほんと無責任なこというなよ。
代わりに被った迷惑分の何かをあなたに要求するよ?



いま逃げようとしているあなたもそう。

相談して初手で逃げていいんだよ?なんて言う大人、ほぼ働いてないから。あなたより遥かにバカな人だよその人たちは。



本当につらくても逃げない、逃げられない人がたくさんいるんだよ。

その人たちに対しても、無責任なことを言うんじゃないよ。




手前味噌で申し訳ありませんが、

逃げるリスクも相当ありますからね。そこちゃんと踏まえて提案しましょう。
甘いことだけ言うのは詐欺師みたいなもんです。