なんだかんだビアガーデンに行ってきた。
参加者の中には篠崎愛似の女子がいるというわけで私のテンションは否応なしにあがった。
それだけでなく参加者の過半数以上が女性ということらしい。
かまとと女子問答無用。出会い厨罷り通るの精神を持つ私としては是が非でも女性の連絡先をゲットし、水面下での睡蓮花を行いたいところであった。
篠崎愛はマストだろう。最優先事項だろう。
しかしながら世界はそんなに甘くないのである。
集合時間まであと一時間を切ったところで上司からの
「ごめん・・・請求の締め今日だった。集計終わってる?」
「(はあ?1週間もズレてるじゃんか!!)あ、今からやります」
そしてお客様からのまさかの電話。
「取り急ぎ御見積を頂きたいんですが・・・」
「わかりました。それでは明日中にご提出致します。」
「それが・・・取引先との打合せをもう明日の10時に組んだので・・・それまでにいただけませんかね?」
「(ふざけるな!)かしこまりました。」
かくして一時間以上の遅刻をしてしまった私である。
やめてよもう・・・
もう絶対篠崎愛オッパイ揉まれてるよー。
絶対篠崎愛似もニヤニヤしながら応じてるよー。
〇
「あれは俺が呼んだ女の子。あれは俺の知り合い。それであれは俺の友達であれは俺の妹的存在」
遅刻した私を出迎えた吉田はそう女の子たちを紹介した。
どうやらほとんどの参加者の女の子が吉田を媒体にしているらしく、ほとんどの女の子が吉田が何かしゃべるたびにトロンとした目をして、ほとんどの女の子が吉田が微笑むたびにだらしなくヨダレをたらしていた。
吉田は夏休み中ということで、濃いオレンジ色のTshirtというラフな格好をしていたわけだが、それでいて会の中心にいるわけだからやれやれだ。
私はそのうちの1人であるトリッシュのことが好きだった。
以前私と吉田とトリッシュとチャールズ少年で新宿のダーツバーでジェンガに興じたことがあった。
その時もトリッシュはテキーラを飲みながら吉田のことばかり見ていた。
私とチャールズ少年が吉田を見つめるトリッシュを見つめていたとき、吉田が見つめていたのはバカげた恋愛なんかではなく、この国の行く末を見つめていたのだから驚きだ。
ちなみに注目の篠崎愛との絡みであるが
「二次会行かないんですか?」
『はい。私は行きません』
これだけで終わってしまった。
無念である。
〇
モテモテの吉田であるが悲劇は二次会で訪れた。
吉田のお気に入り且つ片想いの相手であるカーラが、やしきたかじんと一緒に夜の池袋に消えてしまったのである。
カーラはカーラで吉田のことが気に入っていて、相思相愛は固いと思われていただけに、やしきたかじんを選んだのには少々驚いた。
袖にされた吉田は何かを忘れるように赤玉ポートワインを舐め続け、溺れるようにアルコールに酔い、抱いたつもりが引っかくようにレイシーの膝の上で眠ってしまった。
まあそのレイシーも今度私とマクドナルドでデートをすることが決まっている。
こうなってくるといよいよ人間関係がよくわからない。
だがいいのだ。
私は自暴自棄なのだから。
私はトリッシュに
「ねえ。付き合おうよ。本当に。好きなんだキミが」
とわりと本気で伝えたのだが返答は
『もう。えー・・・本当ですかー・・・』
とわりと本気のダメな感じのやつだった。
やれやれ。
トリッシュには相手にされず、篠崎愛とは話もできず、笑いを取るチャンスは二次会途中から参加してきた隠し砦の三悪人のうちの二人に奪われてしまった。
ここにはもう、何もない。
私は何ひとつ得るものがなかった大学時代を思い出しながら、ひとり池袋の街を去ったのだった。
〇
帰りに最寄り駅のコンビニに寄ろうとすると、いかにも“私はイケメンです!”と言わんばかりのシャレオツな格好をした二人組が路上ライヴをしていた。
結構な人だかりができていたので何を歌っているのか覗いてみると、aikoの“花火”であった。
三角の目をした羽ある天使が恋の報せをきいて
右腕にとまって目配せをして
“疲れてるんならやめれば”
夏の星座にぶら下がって、上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです
仕方ないんです
夏の星座にぶら下がって、上から花火を見下ろして
涙を落として火を消した
初めてこの歌を聴いたときは普通にいい歌だなあと思ったわけだが、このバカげたオシャレなイケメン二人が歌うとなんてもバカげた歌に聴こえた。
何より歌いながら途中途中
“これめっちゃいい歌!”
とか
“ほら、いいでしょ?”
とか
“これ思い出の曲!”
とか
“感情移入しちゃうわ”
などとイケメン二人組がイチイチ意味のわからない合いの手をいれながら歌うので私の気持ちはすっかり萎えてしまった。
おまえらがついついaikoの“花火”に感情移入しちゃうような切ない恋愛は、ぶっちゃけ端から見ればウンコみてえなもんだよ。きっと。
でもきっと万人は私の立派な人生よりキミらみたいに路上ライヴとか恥ずかしいこと平気でやっちゃう人生を選ぶよ、きっと。
そもそも、私の人生は立派なのだろうか。
そんなことを考えながらアスファルトを歩いた2022年、夏。
参加者の中には篠崎愛似の女子がいるというわけで私のテンションは否応なしにあがった。
それだけでなく参加者の過半数以上が女性ということらしい。
かまとと女子問答無用。出会い厨罷り通るの精神を持つ私としては是が非でも女性の連絡先をゲットし、水面下での睡蓮花を行いたいところであった。
篠崎愛はマストだろう。最優先事項だろう。
しかしながら世界はそんなに甘くないのである。
集合時間まであと一時間を切ったところで上司からの
「ごめん・・・請求の締め今日だった。集計終わってる?」
「(はあ?1週間もズレてるじゃんか!!)あ、今からやります」
そしてお客様からのまさかの電話。
「取り急ぎ御見積を頂きたいんですが・・・」
「わかりました。それでは明日中にご提出致します。」
「それが・・・取引先との打合せをもう明日の10時に組んだので・・・それまでにいただけませんかね?」
「(ふざけるな!)かしこまりました。」
かくして一時間以上の遅刻をしてしまった私である。
やめてよもう・・・
もう絶対篠崎愛オッパイ揉まれてるよー。
絶対篠崎愛似もニヤニヤしながら応じてるよー。
〇
「あれは俺が呼んだ女の子。あれは俺の知り合い。それであれは俺の友達であれは俺の妹的存在」
遅刻した私を出迎えた吉田はそう女の子たちを紹介した。
どうやらほとんどの参加者の女の子が吉田を媒体にしているらしく、ほとんどの女の子が吉田が何かしゃべるたびにトロンとした目をして、ほとんどの女の子が吉田が微笑むたびにだらしなくヨダレをたらしていた。
吉田は夏休み中ということで、濃いオレンジ色のTshirtというラフな格好をしていたわけだが、それでいて会の中心にいるわけだからやれやれだ。
私はそのうちの1人であるトリッシュのことが好きだった。
以前私と吉田とトリッシュとチャールズ少年で新宿のダーツバーでジェンガに興じたことがあった。
その時もトリッシュはテキーラを飲みながら吉田のことばかり見ていた。
私とチャールズ少年が吉田を見つめるトリッシュを見つめていたとき、吉田が見つめていたのはバカげた恋愛なんかではなく、この国の行く末を見つめていたのだから驚きだ。
ちなみに注目の篠崎愛との絡みであるが
「二次会行かないんですか?」
『はい。私は行きません』
これだけで終わってしまった。
無念である。
〇
モテモテの吉田であるが悲劇は二次会で訪れた。
吉田のお気に入り且つ片想いの相手であるカーラが、やしきたかじんと一緒に夜の池袋に消えてしまったのである。
カーラはカーラで吉田のことが気に入っていて、相思相愛は固いと思われていただけに、やしきたかじんを選んだのには少々驚いた。
袖にされた吉田は何かを忘れるように赤玉ポートワインを舐め続け、溺れるようにアルコールに酔い、抱いたつもりが引っかくようにレイシーの膝の上で眠ってしまった。
まあそのレイシーも今度私とマクドナルドでデートをすることが決まっている。
こうなってくるといよいよ人間関係がよくわからない。
だがいいのだ。
私は自暴自棄なのだから。
私はトリッシュに
「ねえ。付き合おうよ。本当に。好きなんだキミが」
とわりと本気で伝えたのだが返答は
『もう。えー・・・本当ですかー・・・』
とわりと本気のダメな感じのやつだった。
やれやれ。
トリッシュには相手にされず、篠崎愛とは話もできず、笑いを取るチャンスは二次会途中から参加してきた隠し砦の三悪人のうちの二人に奪われてしまった。
ここにはもう、何もない。
私は何ひとつ得るものがなかった大学時代を思い出しながら、ひとり池袋の街を去ったのだった。
〇
帰りに最寄り駅のコンビニに寄ろうとすると、いかにも“私はイケメンです!”と言わんばかりのシャレオツな格好をした二人組が路上ライヴをしていた。
結構な人だかりができていたので何を歌っているのか覗いてみると、aikoの“花火”であった。
三角の目をした羽ある天使が恋の報せをきいて
右腕にとまって目配せをして
“疲れてるんならやめれば”
夏の星座にぶら下がって、上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです
仕方ないんです
夏の星座にぶら下がって、上から花火を見下ろして
涙を落として火を消した
初めてこの歌を聴いたときは普通にいい歌だなあと思ったわけだが、このバカげたオシャレなイケメン二人が歌うとなんてもバカげた歌に聴こえた。
何より歌いながら途中途中
“これめっちゃいい歌!”
とか
“ほら、いいでしょ?”
とか
“これ思い出の曲!”
とか
“感情移入しちゃうわ”
などとイケメン二人組がイチイチ意味のわからない合いの手をいれながら歌うので私の気持ちはすっかり萎えてしまった。
おまえらがついついaikoの“花火”に感情移入しちゃうような切ない恋愛は、ぶっちゃけ端から見ればウンコみてえなもんだよ。きっと。
でもきっと万人は私の立派な人生よりキミらみたいに路上ライヴとか恥ずかしいこと平気でやっちゃう人生を選ぶよ、きっと。
そもそも、私の人生は立派なのだろうか。
そんなことを考えながらアスファルトを歩いた2022年、夏。