コロナ禍による影響をものともしないように、ネット社会の止まらぬ発展と共に進化し続けたアンダーグラウンドエロ業界にメスが入りつつある。
記憶に新しいところだと浜名湖で開かれた実に120名もが参加した超大規模大人の社交会が摘発を受けている。
120人もいながら逮捕者はわずかに4人。恐らく主催者は相当の手練れであり、摘発を警戒し公然での猥褻行為を防止。
下半身には衣服を着用することで、黒色を灰色に変えた手腕は見事としか言いようがない。
けれども120人もいるのだから、統率をとるのは困難極まりなく、ルールを逸脱した一部の参加者と内通者により、上述の摘発となった。
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“私の親友”(親友というよりは分身という表記のほうが近いかもしれないが、誤解防止のため親友とする)も実はこの手の大人の社交会に参加経験がある。
彼が参加したのは22歳の時で、渋谷区某地での開催だったが、やはりSNSのクローズドコミュニティからのお誘いだった。
いまにして思えばそのお誘いに乗ってしまう危険性に呆れるばかりだが、当時の彼にリスクという言葉は存在しなかったのだろう。
「元気な若者が欲しい」と主催者は言い、それに誘われむかった会場は、思ったよりも明るい雰囲気であったと彼は言う。
浜名湖パーティーの参加者の平均年齢が40~50代であったように、その会の年齢層もどうやら高く、彼が会場に入るや数少ない若者としてちやほやされたそうだ。
ソファに腰掛けるも居場所がなく一人そわそわしていると、とても美人な30後半くらいの女性が『初参加?』と声を掛けてきた。
「そうです」と緊張しながら挨拶をすると、彼女は『よろしくね』と言いながら背を向けスカートをまくり、彼の顔に尻を押し付けた。
黒のとてもキワドいランジェリーが異常な程彼女には似合っており、淫靡さで彼は既に発射しかねない状況だった。
興奮していると今度は彼女の連れの男性が現れ、「お。挨拶したの?じゃあ俺もよろしくー」と背を向けズボンをおろし、彼の顔に尻を押し付けた。
まぎれもなく男の尻だった。
「あはーん。いやーん」と連れの男性はおどけてみせた。親友の彼からすればこれこそが‟洗礼“だったという。
慣れない展開にオドオドしていると、隣に座っていた小さい太ったおじさんが、突然ポケットから風船を取出しバルーンアートをつくりはじめた。
「・・・得意」
親友の視線に気づいたのか、その小さな太ったおじさんは口数少なめにつぶやいた。
多分毎回この人はバルーンアートをこういう場でやっているのだろうと瞬時に理解した。
一通りの挨拶が終わると、主催者が「じゃあ準備できた人からシャワーいっちゃってください」と声をかけた。
すぐにビターゼ・タリエルのようなイタリア人が、この会で最も若い19歳の女性に手を引かれバスルームへ消えた。
「・・・ひなちゃんのお気に入り」と風船おじさんがつぶやいた。
ひなちゃん、というのが19歳女性の名前なのだろう。
しばらくしてひなちゃんとビターゼ・タリエルが戻ってくると、すぐにキスを交わし、お互いのバスタオルを外した。
「はーいどんどん入ってねー」と主催者がまた言う。
親友はとにかく戸惑い動けずにいた。
すると先ほど彼の顔に尻を押し付けたエロいお姉さん(アキさんという名前だそうだ)が『もー。一人じゃ脱げないの?脱がしてあげる』と言い、
彼のズボンを脱がせ、自身も下着になりバスルームへと誘った。
為すがまま裸になりバスルームに入る間際、後ろをみるとなぜか風船おじさんがついてきていた。
あっという間にトランクスを脱いだ風船おじさんは、もうそれで風船に空気入れれるんじゃないかというくらいの荒い鼻息のまま、手にこんもりとボディソープを盛って
アキさんの前に跪いた。
『洗って』とアキさんが言うと、風船おじさんはもうマンガのようにフゥーフゥー言いながらアキさんの身体にボディソープを塗った。
『あなたも』とアキさんに言われた親友は、なんて馬鹿げているんだと思いつつも風船おじさん同様跪き、風船おじさん同様フゥーフゥー言いながら、ボディソープを塗った。
緊張か。
あるいはこの非日常に萎えたか。
親友はまったくエレクトできなかったという。
その後、風船おじさんとアキさんと3人でベッドルームに移動し事に及んだわけだが、
風船おじさんが物凄い形相でアキさんの身体中を舐め回しはじめたのを目にして、完全に萎れてしまったそうだ。
トリュフ探す豚だ、と風船おじさんを見ながら彼は思った。
アキさんは色々頑張ってくれたが、どうにもならなかった。
結局風船おじさんが挿入し、果てた後、アキさんと親友はソファへ移動した。
アキさんは例えば彼の乳首をいじったり、モノを舐めたりと引続き色々してくれていたが、どうにもならなかった。
彼は情けなさに押しつぶされそうになった。
するとアキさんは、突然プレイを止め、彼に向かいこう言った。
『アンパンマン観たことある?』
「はい。あります」
『歌知ってる?』
「どんなんでしたっけ?」
『めちゃくちゃ良い歌なんだよ。私大好きで結構勇気づけられてるの』
そして彼女は歌いだした。
何が君の幸せ?
何をして喜ぶ?
わからないまま終わる
そんなのはいやだ!
忘れないで夢を
こぼさないで涙
だから君は飛ぶんだ
どこまでも
周囲にいた人たちが拍手をした。
ビターゼタリエルが「ブラボー!」と叫んだ。
風船おじさんは風船を飛ばす。
『ありがとう』
アキさんはそう言うと、また、親友のモノを舐め始めた。
ありがたいけど起つわけないよね。
親友は後にそう言った。
〇
『今度別のパーティーに誘ってあげるから連絡先教えて』とアキさんは言った。
美人にこんなことを言われるのは幸せ以外の何ものでもない。
そして万が一2人になる機会があれば、その時こそ起てる!と親友は思った。
どんなに非日常であろうが、やはり視界に焼き付いたアキさんの黒いパンティーは格別だった。
数日後にアキさんから連絡がきた。
『ごめん、他のパーティ連れてけないわ。私引退する』
「どうしたのですか?」
『妊娠したんだ』
訊けば彼女があのときの社交会に連れてきていて私の顔に尻を押し付けたノリの良い男性とは肉体関係を何度も結んでおり、
結果的に妊娠したそうだ。
「おめでとうございます。めでたいことですよ」
『ありがとう。だから結婚して、そこで引退。約束守れずごめんね』
これ以降彼女と連絡をとることはなくなった。
ああ・・・タイミングさえ早ければこれ俺が彼女の旦那になったんじゃないか。
思い返せば思い返すほど、彼女の尻はエロい。
風船おじさんさえいなければめちゃくちゃできたのに・・・
後悔と怒りが入り混じった。
でもまあ冷静に考えれば、パーティの常連でアンパンマン歌いながら舐める女を嫁にするのは嫌だなあ。
モテないなりに私は私で、贅沢なのだ。