会費が高すぎる、と一部の男たちは怒った。
なぜ5,000円も支払わねばならないのか、と。
幹事の大木は困惑しながら、『私が選んだ店、失敗だったかな』と悲しそうにしていた。
まったく。なんてしょーもないことを言う奴らがいるのだろうか。
来週末に新たに仕事仲間となったメンバーの歓迎会がある。
終息に向かいつつあるも時はコロナ禍。
まだ予断は許さない中で、大人数で集まれてコロナ対策がしっかりと為され、換気も十分である場所となると会場は限られた。
その中でよく幹事は見つけることができたと思う。
しかし翌日、会場の案内と会費の連絡を彼女が一斉に送信したところ、一部から心無い声がとんだ。
「女だからやたらこだわった店とかにしてるんだろう。だから高いんだ」
「店なんて適当で良いのになあ」
いつも作業着で出退勤する現場巡回のおじさん達や、毎日終電まで仕事をし、残業超過に文句をいうおじさん達がこぞってそういうことを言っていた。
まっっっったく・・・・
私は大きく呆れ、深いため息をついた。
じゃあ来るなよ。
根本的に考え方が違う。
新メンバーを組織で歓迎する会を行うということ自体が、立派な仕事の一環だ。
仮に会社から経費が出なかったとしても、その仕事も我々の給与に含まれていると思う。
彼らはみなだらしない恰好をしている。
身だしなみを整えず、不潔だ。
重複してしまうが、身だしなみを整えるのも仕事の一環だ。
もちろんそれは給与に含まれている。だから給与の中から身なりを整えるのだ。
全てが同じ話である。
新しく来たメンバーに今後気持ちよく仕事をしてもらうために楽しく歓迎をする。
これは既存メンバーにとって大事な仕事ではないか。
多少高い会費になろうが給与から捻出すべきだ。
何よりお前ら自身がそうだっただろうが!!
お前らだって誰かに歓迎されて、その分を他の誰かが支払ってきてるだろうが!!
お前が歓迎される側でクソみたいな店でクソみたいな飯食わされたらどう思うんだお前は!!
まずそれにたかだか5,000円だぞ?
10,000円要求してるわけでもないのに。
その5,000円も払う余裕がないのであればもうお前ら来るな。
くんな!
そういう奴に限って必ず来るんだよなあ。
私は再び大きく呆れた。
そしてこれ以上そいつらが高い高いと騒ぐのであれば、私がかましてやろう。そう決めた。
けれどもまあ、実際小心者の私が彼らを注意できることは、おそらく無いだろう。
本当にくだらない連中だ。私も含めて。