私は性格の良い人が好きではない。
基本的に人間は悪口を絶対に言うものであると思っている。
なので表立って悪口を言う人間も陰で悪口を言う人間も全然嫌いではない。
逆に「アイツが悪口言ってるとこみたことない」や「底抜けにいいヤツ」と呼ばれる人間には不気味さに似た恐怖を感じてしまう。
私の大学時代の友人でわりと仲のよかった女性先輩は顔はそこそこカワイイと評判だったものの“性格ブス”というレッテルが貼られていた。
とにかく物怖じしない性格で、他人に平気で『死ねブサイク!』とか言えちゃう女性だった。
かくいう私も
『ねえ?髪型ダサイよ?』とか『服毎日一緒だな』とか『お前の話はつまらん!』と言われることが多く、都度それに反論すると
『うわっ!めんどくせ!』
とすぐに切り返されて盛大に凹んだものだった。
プライドの高いイケメンたちは彼女の毒舌に耐えきれず
「あいつあんなんだから友達少ないんだよ。俺嫌い」
と尻切れトンボばりの負け惜しみを叩くぐらいだ。
それでも私は彼女のそういう正直な物言いは嫌いじゃなくむしろ「いいぞ!もっとやれ!」くらいの感情を抱いていた。
そんな彼女が飲み会に参加した際、
『田舎からリンゴが送られてくるんだけど私嫌いなんだよね、リンゴ』
と言っていたので
「出身が長野でリンゴ大好物なんですよ!食べないんだったら僕にください!」
と頼んでみた。
当然彼女の返答は手厳しいもので
『ええっ・・・リンゴ大好物とかキモっ・・・あんなマズイもんよく食えるね。きもちわり!』
というものだった。
私は全国のリンゴ好きを代表し彼女にリンゴの素晴らしさを説いてみせようと全力でリンゴについて語ったがものの数秒で論破されマシンガン悪口の餌食となってしまった。
なんてことだ。
リンゴの素晴らしさすら伝えられない僕という人間はなんとまあ薄っぺらいものだろうか。
そしてその翌日にも行われた飲み会。
そこで会計時に外でひとり待っていた私のところにその毒舌先輩がかけよってきた。
『はい!これあげる!』
「あ、ありがとうございます。なんすか?この袋。食べ物?」
『リンゴ!欲しいって言ってたでしょ?』
「マジっすか!ありがとうございます!!大好物なんですよ」
『いいのいいの。ウチ誰も食べないからさ』
「でもすみません。僕料理苦手なんでなかなか食べないかも。皮剥くのとか切るのとか芯とるのとかダルいし。包丁がどこにあるかさえわかんないくらいで」
『どんだけお子様なんだよ』
「でも丸カジリするので。洗えば大丈夫ですよね!?」
『あー。そういう心配はしなくて大丈夫だと思うよ?』
「??」
『全部皮むいてあるし食べやすいようにもう切っておいたから。冷蔵庫に入れて好きなときに食べな』
なにそれ…
これが“性格ブス”のレッテルを貼られ、“毒舌女”と呼ばれる人間のすることだろうか。
いや微塵もあるまい。
付き合ってもいないただの後輩のためにわざわざリンゴを食べやすいサイズにカットしてきてくれる。
これは実は根本的に優しい人なんじゃないだろうか。
少なくとも私は、みんな一緒に!みんなでやらないと意味がない!ほっておけない!と声高に優しさを押し売りしてくる人間よりも遥かにこういう女性のほうが心を許せると思う。
『好きなときに食べな』
そう言って微笑んだ彼女の笑顔は、いつもの悪口トークの際の悪い笑顔とはまた違い
とても眩しく、印象的だった。
彼女はいま、どこで、どんな生活を送っているのだろうか。
歳と経験を重ねたいまだからこそ、またお話してみたいものだ
基本的に人間は悪口を絶対に言うものであると思っている。
なので表立って悪口を言う人間も陰で悪口を言う人間も全然嫌いではない。
逆に「アイツが悪口言ってるとこみたことない」や「底抜けにいいヤツ」と呼ばれる人間には不気味さに似た恐怖を感じてしまう。
私の大学時代の友人でわりと仲のよかった女性先輩は顔はそこそこカワイイと評判だったものの“性格ブス”というレッテルが貼られていた。
とにかく物怖じしない性格で、他人に平気で『死ねブサイク!』とか言えちゃう女性だった。
かくいう私も
『ねえ?髪型ダサイよ?』とか『服毎日一緒だな』とか『お前の話はつまらん!』と言われることが多く、都度それに反論すると
『うわっ!めんどくせ!』
とすぐに切り返されて盛大に凹んだものだった。
プライドの高いイケメンたちは彼女の毒舌に耐えきれず
「あいつあんなんだから友達少ないんだよ。俺嫌い」
と尻切れトンボばりの負け惜しみを叩くぐらいだ。
それでも私は彼女のそういう正直な物言いは嫌いじゃなくむしろ「いいぞ!もっとやれ!」くらいの感情を抱いていた。
そんな彼女が飲み会に参加した際、
『田舎からリンゴが送られてくるんだけど私嫌いなんだよね、リンゴ』
と言っていたので
「出身が長野でリンゴ大好物なんですよ!食べないんだったら僕にください!」
と頼んでみた。
当然彼女の返答は手厳しいもので
『ええっ・・・リンゴ大好物とかキモっ・・・あんなマズイもんよく食えるね。きもちわり!』
というものだった。
私は全国のリンゴ好きを代表し彼女にリンゴの素晴らしさを説いてみせようと全力でリンゴについて語ったがものの数秒で論破されマシンガン悪口の餌食となってしまった。
なんてことだ。
リンゴの素晴らしさすら伝えられない僕という人間はなんとまあ薄っぺらいものだろうか。
そしてその翌日にも行われた飲み会。
そこで会計時に外でひとり待っていた私のところにその毒舌先輩がかけよってきた。
『はい!これあげる!』
「あ、ありがとうございます。なんすか?この袋。食べ物?」
『リンゴ!欲しいって言ってたでしょ?』
「マジっすか!ありがとうございます!!大好物なんですよ」
『いいのいいの。ウチ誰も食べないからさ』
「でもすみません。僕料理苦手なんでなかなか食べないかも。皮剥くのとか切るのとか芯とるのとかダルいし。包丁がどこにあるかさえわかんないくらいで」
『どんだけお子様なんだよ』
「でも丸カジリするので。洗えば大丈夫ですよね!?」
『あー。そういう心配はしなくて大丈夫だと思うよ?』
「??」
『全部皮むいてあるし食べやすいようにもう切っておいたから。冷蔵庫に入れて好きなときに食べな』
なにそれ…
これが“性格ブス”のレッテルを貼られ、“毒舌女”と呼ばれる人間のすることだろうか。
いや微塵もあるまい。
付き合ってもいないただの後輩のためにわざわざリンゴを食べやすいサイズにカットしてきてくれる。
これは実は根本的に優しい人なんじゃないだろうか。
少なくとも私は、みんな一緒に!みんなでやらないと意味がない!ほっておけない!と声高に優しさを押し売りしてくる人間よりも遥かにこういう女性のほうが心を許せると思う。
『好きなときに食べな』
そう言って微笑んだ彼女の笑顔は、いつもの悪口トークの際の悪い笑顔とはまた違い
とても眩しく、印象的だった。
彼女はいま、どこで、どんな生活を送っているのだろうか。
歳と経験を重ねたいまだからこそ、またお話してみたいものだ