田島へ

小学校の時の同級生の娘が今年の４月から小学生になる。

その娘は私達が通っていた小学校に通うことになるそうだ。

感慨深いものがある。昔は会う都度、やれあの子がかわいい、やれあのバンドがいいなどと言っていたのが、数年の時を経て子どもの未来について語り合っているわけだから我々も大人になったものだ。

けれども彼の就学前説明会の話をきいて驚いた。
昨今ランドセルの色が自由なのはわかっていたが、まさか上履きや体育着ならまだしも筆箱から文房具、防災頭巾に小物入れまで全部全部統一で無地の柄無しで固定だと言うのだ。

私が小学生の頃は筆箱も消しゴムも結構自由だったはず。バトルえんぴつ、ロケットえんぴつ、他・・・
それがいまは不可だそうだ。

なぜなのか。

やっぱりトラブルになったりするのだろうか、盗まれたりとか。言い方は悪いが家庭ごとの収入差で子供がいじめられたりとかになったりするのだろうか。

そう思っていたところに友人が言う。

「あの学校はさ、孤児院の子とかの受け入れとかしてるからそういうのもあるのかもな」

へー、地元に孤児院なんてあったんだー。最近できたの？
そう尋ねると彼は答えた。
「え？何言ってんの？俺らの同級生にもいたじゃん」
「え？知らね。誰？」
「田島だよ」
「え？田島？マジ？」

え？？マジ？？田島？？

俺…20の時の同窓会で再会して…
そのあとちょっと経ってから何回か2人で飲みに行って…
結構がっちり遊んだり、話したりしたけども。
え？あの田島なの？


全く知らなかった…
っていうか気づかなかった…

『私、兄妹多いんだよ。11人いるから』

あれそういうことか…そういうことだったのか。
いやシンプルにすげえ大家族だな…って思って終わってしまった。

「田島って元気なの？まだその孤児院あるの？」
「いや知らないし、もうないよその孤児院。取り壊されたよ」

田島…


やっぱり言えないもんなのかな、そういうことって。
そんなことを思う私はそもそも無神経なのかもしれません。

田島、いま何してるんだろ。元気にしてるかな。
田島はすごく優しいし良い人だからきっと幸せな人生が送れるよ。
多分もう会うことはないけど、元気でいてね。