12月3日以来5ヶ月に渡り伸び放題となっていた髪の毛をついに切った。
仕事柄清潔さをキープしなければならないので、なんとかスタイリングをし整えることでごまかしてきたが、いよいよ整髪料程度ではどうにもできなくなり、またその長さは日常生活にも支障を来すこととなったので、苦渋の選択だ。
私はとにかく理髪店や美容室が苦手なのだ。
どのような髪型にしますか?という解答必須のデフォルトクエッションにはいつもドキドキさせられてしまうし、店員との会話は心から疲れてしまう。
かと言って雑誌を見ようにも別に興味のある雑誌があるわけではない。
何よりあの椅子が苦手だ。毎度毎度回転させられる前にこれどうやって足運べばいいんだ?となってしまう。
いちいちシャンプーのために移動するのも嫌だ。
あのシャンプー用の椅子も嫌いだし、どう一歩目を踏み出して腰掛ければよいかわからない。
我慢してシャンプーを終えたら終えたで、またあの正座席に腰掛けなければならないんだからたまらない。
こんな生き辛いことこの上ないことを考えているうちに、私の散髪の頻度は5ヶ月に一回で固定されることになった。
その憂鬱なルーチンがまさに昨日直撃したのだ。
〇
夕方から用事があったため、その前までに散髪をすませようと用事のある場所の近くの美容室をホットペッパービューティーのクーポンを併用しながら予約したのだが、店に足を踏み入れた瞬間に私は自身の場違いっぷりを思い知らされた。
店内はめちゃくちゃピンクだった。
そして美容師は9割以上が若い女性で、客は私を除く全員が若い女性だった。
そんな店を予約してしまったのだ。しかもホットペッパービューティーのクーポンを使って。
『カットと眉毛カットでよろしいですか?』
若い女性店員から予約メニューが確認される。
「はい」
ああ・・・なんで欲張って眉毛カットいれたんや・・・
店内でほぼ唯一の男性である私が眉毛整えていただきます。
日頃から眉毛の管理がだらしなくて申し訳ありません・・・
『こちらへどうぞ』と感じよく席へ導き、担当となったのはやはり若い女性だった。
『今日はどんな感じになさりますか』
「こんな感じにできれば・・・」
私は震えながら間宮祥太朗の画像を見せた。
『なるほど・・・わかりました』
あああごめんなさい。
私ごときがマミショウの髪型真似しようとしてごめんなさい。
言い訳になりますがたまたまなんです。ずっと昔からこのマミショウの画像を出してるんです。
いまや日本を代表する俳優のマミショウですが、まだマミショウが日本代表になる以前からずっと私がマミショウ代表だったんです。ごめんなさい。
もう私は下を向くしかなかった。
こうなったら雑誌をとにかく読んで時間が過ぎるのを待とう。
まあ適当に興味のない腕時計の雑誌でも眺めてれば体裁は保てるだろう。
けれどもその瞬間は訪れなかった。
なんとこの店、雑誌がないのだ。
タブレットもない。携帯はポケットの中。
ああ・・・毎度のことながらこの身体を包む髪避けの布の中でごそごそポッケ漁りたくないいいい
こうして私は詰んだ。
せめて背中傷は残さぬよう、ひたすら鏡にうつる私自身を睨み続けた。
それはもはや自戒なのかもしれない。
『ゴールデンウィークはお休みでしたか?』
「はい」
『どこかに行かれました?』
「いいえ」
『人が多いから家のほうがいいですよねー』
「はい」
『・・・』
「・・・」
会話が終わってしまった。
あああごめんなさいごめんなさい僕が悪いですううう
なんとか少しでもウィンウィンに近づけたいという意思はあるのですがスキルが伴わないんですううう
5か月ぶりの苦痛はいつもより重かった。
いや、普段通りなのかもしれない。ずっと慣れないだけなのかもしれない。
私はとにかく「はい」と「いいえ」を繰り返した。
途中、これだけ喋ってるのにYESかNO以外に解答ルートが無い訳だから、もはや俺じゃなくてこの女が悪いんじゃねえか?とグレたがそれはいまとなっては猛省だ。他人のせいにしてはいけない。
とにかく「はい」と「いいえ」を繰り返し、鏡にうつる人物が間宮祥太朗になる時間を待った。
1時間後、『こちらでよろしいですか』と完成させられた鏡の中の住人は、マミショウではなくコボちゃんだった。
なんでだよ。
なんでコボちゃんになってるんだよ。
思い返してみれば毎回間宮祥太朗の画像を美容室で提示しているがコボちゃんになってしまう。
今回も美容室を変えているにもかかわらずコボちゃんだ。マジどういうこと?
逆にコボちゃんの画像をみせたら間宮祥太朗になんのか。
いやどうせそれはそれで大コボちゃんになるだろう。詰んどる・・・
『いかがですか?これぐらいでよろしいでしょうか』
「はい・・・」
あああ・・・気弱・・・もう受け入れるしかない人生。
〇
帰り際に女性美容師は私に『会員カード作りますか?』と尋ねてきた。
ここで「いいえ」というのはあまりにも勇気が必要となるため、別に要らないのに会員カードを作成するハメになった。
当然ながら、連絡先のラインIDやメールアドレスも記載した。
現在でも話題になっていることがあるが、その昔とある美容室の男性店長が、客が好みだったため会員情報から勝手に連絡先を自分の携帯に登録し、
プライベートで連絡をとるという事件があった。
あー。この女の人からいきなり連絡来ないかなー。『ぶっちゃけタイプなんで』とか言って。
こういう綺麗なギャルを思い切り笑わせて『ウケるwww』と言わせたい。
そしていつの日か真剣に将来を共にしてほしいと彼女に告げ、少し困った顔で『ウケる・・・』と言わせたい。
そういう妄想は膨らむばかりだが、現実に至らないのは私が一番良くわかっている。
理由は簡単だ。
だって私は、コボちゃんなのだから。
仕事柄清潔さをキープしなければならないので、なんとかスタイリングをし整えることでごまかしてきたが、いよいよ整髪料程度ではどうにもできなくなり、またその長さは日常生活にも支障を来すこととなったので、苦渋の選択だ。
私はとにかく理髪店や美容室が苦手なのだ。
どのような髪型にしますか?という解答必須のデフォルトクエッションにはいつもドキドキさせられてしまうし、店員との会話は心から疲れてしまう。
かと言って雑誌を見ようにも別に興味のある雑誌があるわけではない。
何よりあの椅子が苦手だ。毎度毎度回転させられる前にこれどうやって足運べばいいんだ?となってしまう。
いちいちシャンプーのために移動するのも嫌だ。
あのシャンプー用の椅子も嫌いだし、どう一歩目を踏み出して腰掛ければよいかわからない。
我慢してシャンプーを終えたら終えたで、またあの正座席に腰掛けなければならないんだからたまらない。
こんな生き辛いことこの上ないことを考えているうちに、私の散髪の頻度は5ヶ月に一回で固定されることになった。
その憂鬱なルーチンがまさに昨日直撃したのだ。
〇
夕方から用事があったため、その前までに散髪をすませようと用事のある場所の近くの美容室をホットペッパービューティーのクーポンを併用しながら予約したのだが、店に足を踏み入れた瞬間に私は自身の場違いっぷりを思い知らされた。
店内はめちゃくちゃピンクだった。
そして美容師は9割以上が若い女性で、客は私を除く全員が若い女性だった。
そんな店を予約してしまったのだ。しかもホットペッパービューティーのクーポンを使って。
『カットと眉毛カットでよろしいですか?』
若い女性店員から予約メニューが確認される。
「はい」
ああ・・・なんで欲張って眉毛カットいれたんや・・・
店内でほぼ唯一の男性である私が眉毛整えていただきます。
日頃から眉毛の管理がだらしなくて申し訳ありません・・・
『こちらへどうぞ』と感じよく席へ導き、担当となったのはやはり若い女性だった。
『今日はどんな感じになさりますか』
「こんな感じにできれば・・・」
私は震えながら間宮祥太朗の画像を見せた。
『なるほど・・・わかりました』
あああごめんなさい。
私ごときがマミショウの髪型真似しようとしてごめんなさい。
言い訳になりますがたまたまなんです。ずっと昔からこのマミショウの画像を出してるんです。
いまや日本を代表する俳優のマミショウですが、まだマミショウが日本代表になる以前からずっと私がマミショウ代表だったんです。ごめんなさい。
もう私は下を向くしかなかった。
こうなったら雑誌をとにかく読んで時間が過ぎるのを待とう。
まあ適当に興味のない腕時計の雑誌でも眺めてれば体裁は保てるだろう。
けれどもその瞬間は訪れなかった。
なんとこの店、雑誌がないのだ。
タブレットもない。携帯はポケットの中。
ああ・・・毎度のことながらこの身体を包む髪避けの布の中でごそごそポッケ漁りたくないいいい
こうして私は詰んだ。
せめて背中傷は残さぬよう、ひたすら鏡にうつる私自身を睨み続けた。
それはもはや自戒なのかもしれない。
『ゴールデンウィークはお休みでしたか?』
「はい」
『どこかに行かれました?』
「いいえ」
『人が多いから家のほうがいいですよねー』
「はい」
『・・・』
「・・・」
会話が終わってしまった。
あああごめんなさいごめんなさい僕が悪いですううう
なんとか少しでもウィンウィンに近づけたいという意思はあるのですがスキルが伴わないんですううう
5か月ぶりの苦痛はいつもより重かった。
いや、普段通りなのかもしれない。ずっと慣れないだけなのかもしれない。
私はとにかく「はい」と「いいえ」を繰り返した。
途中、これだけ喋ってるのにYESかNO以外に解答ルートが無い訳だから、もはや俺じゃなくてこの女が悪いんじゃねえか?とグレたがそれはいまとなっては猛省だ。他人のせいにしてはいけない。
とにかく「はい」と「いいえ」を繰り返し、鏡にうつる人物が間宮祥太朗になる時間を待った。
1時間後、『こちらでよろしいですか』と完成させられた鏡の中の住人は、マミショウではなくコボちゃんだった。
なんでだよ。
なんでコボちゃんになってるんだよ。
思い返してみれば毎回間宮祥太朗の画像を美容室で提示しているがコボちゃんになってしまう。
今回も美容室を変えているにもかかわらずコボちゃんだ。マジどういうこと?
逆にコボちゃんの画像をみせたら間宮祥太朗になんのか。
いやどうせそれはそれで大コボちゃんになるだろう。詰んどる・・・
『いかがですか?これぐらいでよろしいでしょうか』
「はい・・・」
あああ・・・気弱・・・もう受け入れるしかない人生。
〇
帰り際に女性美容師は私に『会員カード作りますか?』と尋ねてきた。
ここで「いいえ」というのはあまりにも勇気が必要となるため、別に要らないのに会員カードを作成するハメになった。
当然ながら、連絡先のラインIDやメールアドレスも記載した。
現在でも話題になっていることがあるが、その昔とある美容室の男性店長が、客が好みだったため会員情報から勝手に連絡先を自分の携帯に登録し、
プライベートで連絡をとるという事件があった。
あー。この女の人からいきなり連絡来ないかなー。『ぶっちゃけタイプなんで』とか言って。
こういう綺麗なギャルを思い切り笑わせて『ウケるwww』と言わせたい。
そしていつの日か真剣に将来を共にしてほしいと彼女に告げ、少し困った顔で『ウケる・・・』と言わせたい。
そういう妄想は膨らむばかりだが、現実に至らないのは私が一番良くわかっている。
理由は簡単だ。
だって私は、コボちゃんなのだから。