中学受験相談所 副管理人アーカイブ -3ページ目

中学受験相談所 副管理人アーカイブ

LINEオプチャ「中学受験相談所」に常駐している副管理人です。(あるいは「中学受験語り合う部屋」の管理人)

このブログはそれらの部屋で書き込んだ、長文リプライの抄録です。中学受験の参考にしていただければ幸いです。

(Q)塾に通わず中学入試にトライします。
現在小6で算数はプラスワン問題集をこなしてます。プラスワン問題集とステップアップ演習は必須と聞いてこなしてますが入試までだいぶ時間があまりそうです。他におすすめの問題集があれば教えてください。SAPIXの教材を手に入れてやらせた方が良いでしょうか。(偏差値60'位、地方の最難関中=偏差値63を志望)


上位校なら、「中学への算数」は必須だと思います。プラスワンもステップアップも良い問題集ですが、最難関を目指す上ではそれだけだと不足だと思います。毎月全部解くと負担感が大きいので、各月の通常号は、面白そうな問題のつまみ食いや、コラムを読む感じでいいと思います。増刊の「有名進学塾の算数模試」は難しいですが、お子さんのレベルなら適当でしょう。それプラス、同じ東京出版の「合格へのチャレンジ演習」でしょうか。

「中学への算数」の学コンや算数オリンピックなどはめちゃくちゃ難しいですが、そこで「よーし、負けるもんか」と思うか「こんな問題スラスラ解いてる連中に勝てっこない」と思うか、そのお子さんのメンタリティにもよります。その辺りはいちばん身近にいて一番お子さんのことをご存知のお母様がご判断されるといいと思います。

塾にお通いでないのなら、「塾技」や「下剋上算数(難関校編)」は手元にあっても良いかもしれません。

もう少し下のゾーン(55〜59)を鍛えたいなら四谷大塚の「応用力完成問題集」。

理社はコアプラスが良いでしょう。

総合問題(単元別学習ではなく)に慣れるのなら、みくに出版の銀本が良いでしょう。ただ解説ゼロなのでそこがネックになります。分からない問題の解き方は知恵袋やOKWaveで聞くしかありません。

SAPIXのデイリーSAPIXや土特、SS(サンデーサピックス)のテキストは、テキストそのものが素晴らしいわけではありません。頂点を目指すお子さんたちが集まっている環境自体が大いに実績に寄与しているのだと思います。

ただ、理科のテキストは素晴らしいです。他塾と一段レベルが違う感じはします。メルカリやヤフオクでお買い求めになるのは一案かもしれません。
(2021/5/24 「受験相談所」)

「志望校を早めに決めましょう」
塾の保護者会などでさんざん言われているセリフです。

しかし、ここでこんな疑問を持たれた方はいませんか?
「志望校を早く決めるといったいどんないいことがあるのだろう?…」

一般的には、この答えはメンタリティの観点から回答されることが多いですね。いわく「やる気が出る」「辛いことも乗り越えられる」などなど…。
それもあるかもしれませんが、算数・理科を教えている僕の立場からすると少し異なります。

「志望校が決まらないと、『何を、どこまでやるか』が定まらない。結果的に無駄な勉強をする可能性がある」のです。

ざっくり言えば、四谷大塚の偏差値55以下の女子校の算数は、解き方を身につける(覚える)ことで合格最低ラインはクリアできます。塾の単元別学習を繰り返し復習することです。そのラインの女子校は、大学受験でMARCHに入ってくれればいい、そしてトップ層が早慶上智に何人か入れればいい。私大文系なので受験科目は英国社でいいので、大学受験に数学は要りません。となると、抜きん出た算数の能力は必要ないのです。それよりは、塾で習ったことをきちんと復習して身につけたお子さんを評価したい。そういう入試問題の造りになっています。

ですが共学はそうはいきません。三田国際の算数など、算数大嫌いな女子には本当に酷です。いわゆる合格ラインの偏差値よりもはるかに難しいというか、凝った造りになっています。

それに比べると同じ共学でもMARCHの付属校の算数理科はそこまでの難度は要求されません。

早めに志望校を決めることの大切さはここにもあります。どんな勉強をするかに関わっていきますから。

1校2校に絞ることは無理としても、進学校なのか付属校なのか、共学なのか女子校(男子校)なのか。

前に申し上げた通り「出ないものはやらない」ことが肝心。

でも、どこが目標なのか決まらなければ、何が出る(正確に言えば「どの深さまで要求される」)かが定まりません。

(「受験相談所」2021/1/5)

サピックスという塾の何がMARCH附属中とマッチしていないか、といえば、SAPIXという塾のフォーカルポイント(焦点、注視点)が明らかにMARCH付属とズレているのです。分かりやすく言い換えれば、算数・理科の「深さ」、「取り上げる問題の類型」といったテキストの「作り」が明らかにトップ校向けなのです。それはとりわけ6年生のテキストで顕著です。(裏返せば、5年までのテキストにおいてはさほどギャップはない、とお思いいただいても結構です)

   SAPIXの算数のテキストをご覧になると、「○○算」や「速さ」「空間図形」といった大きなくくりの単元の下に、問題のタイプを一言で言い表す副題がついているのに気づかれると思います。旅人算なら「途中で戻ってくる」、食塩水なら「等しい量を汲み出す」とか、その類いです。立体図形では「切断」とか「色を塗ってバラバラにする」とか「表面上の最短経路」などなど…。 そして、それぞれの類型について、A~Eまで難度ごとに問題が用意されていて、ABCクラスは「導入と基本」+A問題+B問題、αはD+E+「入試問題に挑戦」、「思考力の養成」といった具合に、大まかにクラスによって為すべき問題が定められています。
   問題なのは、そのテキストにはそもそも中位以下の学校の入試問題では出現しない類型の問題が非常に多く混ざっていることです。

テキストや作る場合、まず作り手は「コア」な層をイメージし、それに合わせた問題をチョイスまたは作問します。市販の学習参考書や問題集ならば、出版社から編集プロダクションにターゲットになる生徒のレベルが示されます。「早慶から御三家向け」とか「中堅からトップ下が対象」とか「算数が苦手で苦しんでいる子に訴求したい」等々。それは、世の中全てのお子さんに合わせる書籍は作れないし、欲張ってトップ校対象の問題から超ベーシックな問題まで揃えようとすると、焦点がぼやけてしまって結果的にどのお子さんも手に取らなくなってしまう。

ですから、作り手はまずはターゲットとするコアな集団にちょうど合致した問題を選び、そしてそこから少し難度を下げた問題、少し難度を上げた問題を作っていきます。もちろん最難関校がターゲットなら「少し上げた問題」は存在しないので、「ちょうど適当な問題」と「少しやさしめの問題」の二段階でしょうか。そして単元ごとにそれらを基本→応用→発展、と並べていきます。

SAPIXはテキストが薄い一回ごとの冊子です。デイリーサポート、デイリーサピックス、2種類がありますが、その二種類は相似形で(僕にはデイリーサピックスがある意味がいまいち理解できないのですが、その問題は論点からはずれるので触れないこととします)、他の四谷(&早稲アカ)、日能研、栄光ゼミナールとの大きな違いの一つと言っていいでしょう。(グノーブルもSAPIXと同じスタイルですね) 

  SAPIXのテキスト作りの過程も、先に述べた市販の学参や問題集と同じだと思われます。まず開成・筑駒・桜蔭の入試を研究し、それに合わせた種類(タイプ)の問題を作成、それをE問題と設定し、そこから徐々に条件等を簡単にしてD→C→B→A、と問題を作問する。

  すると、 そこには、先に述べたように、そもそもMARCH附属や女子の東洋英和・学習院女子以下、男子でも芝・サレジオ以下では、このタイプの問題は出題されない、という類型の問題が多数混ざり混んできてしまうのです。
 
この「難度(深さ)が中堅上位校以下の入試と合っていない」問題は理科についても然りです。 SAPIXの6年2学期の理科のテキストは本当に圧巻だと思います。最新の入試問題を研究し尽くし、さらに深い教科知識に裏打ちされおり、単に「出たもの」だけを集めたのでなく、「これから出そうなもの」にもスポットライトを当てる…。これを見れば、執筆される先生の力量は一目瞭然です。今まで目にした塾の理科のテキストでは最高峰です。
男子御三家・筑駒・桜蔭を受ける子にとっては。

 SAPIXの6年生に理科のフォローをしていると、(こんな高度な内容を必要としている生徒はいったい何人いるのだろう…)と首をかしげてしまうことがしばしばあります。7500人いるSAPIXの小6生の1割程度?男子御三家+筑駒+駒東+栄光・聖光。女子は桜蔭のみ…多く見積って1000人でしょうか。

  MARCHや女子校受験生には、やる問題がないほどです。「ない」というと大げさですが、「やった方がいい問題に付箋を貼っておいて下さい」と家庭教師先のお母様に言われて、最初から最後までつぶさにみて、付箋を貼ったのはたったの大問1問だけ、なんていうこともあります。

例えばSAPIXの中位以下のクラス所属のお子さんで、最低明大中野か法政大学、できたら中央大か明大明治に受からせたい、という生徒がいたとしましょう。そのお子さんが、SAPIXの教材で分からないところがある、と言って先に言ったような算数(または理科の物理・化学領域)の難問を質問してきたら、純粋にテクニカルな観点だけでものを言えば、「こんな問題は君の受ける学校では出ないから、やめよう。たとえ出ても誰も解けないから無視するに限る」と言いたいところです。 

「基礎トレがあるではないか」という疑問を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。サピでも「中位クラス以下はまずは基礎トレ」とおっしゃいますしね。でも、僕から言わせると基礎トレはラジオ体操のようなものです。ラジオ体操には怪我を防いだり血行を良くする効能はありますが、いくらラジオ体操を熱心にやったとて、ドリブルやレシーブの技術は会得できません。トップアスリートと伍して戦うことはできないのです。

SAPIXに通う、付属校受験生、桜蔭以外の女子受験生、芝・サレジオ・攻玉社以下の中堅上位校受験生にとっての最大の問題は、デイリーサポート(デイリーサピックス)と「基礎トレ」を埋める教材が圧倒的に不足していることです。

SAPIXは、確かに業界のフロントランナーですし、諸条件無視して一つだけお薦めの塾を挙げよ、と言ったらほとんどの専門家庭教師はSAPIXを挙げるでしょう。ですが、女子中堅上位校やMARCH付属校以下の受験において、ギリギリのところで日能研、四谷大塚、早稲アカに競り負けるのをしばしば目にする度、「作り」がマッチしない怖さを感じざるを得ません。 

「出ないことはやらない」「目的(レベル)に合わせた問題を解く」

これは中学受験において合格の栄冠を掴むための要諦です。いや、中学受験に限らず、すべてのテストで言えることでしょう。仮に英検3級に合格したい人が、準1級向けの教本を必死にやっても、注ぐエネルギーと時間に対する効果を考えたら無駄が多すぎる、ということはご理解いただけると思います。準1級の教本は2級に受かってからやればよいのです。大筋としてはそれと同じことです。
(「中学受験相談所」2021/12/25)

個人指導だけでの中学受験は最近増えてきましたが、難しいのはかつてと変わりません。四谷&日能研偏差値で言えば、55以上の学校はまず無理、と思った方がいいでしょう。50前後の学校でさえ、100人入学者がいたら、個人指導だけで受験した生徒は数名だと思います。

昨年、女子で準御三家に家庭教師の指導だけで合格したお子さんを担当しましたが、この子は特別でした。習い事をかなりの熱量でやっていて(週4~5回。将来それで食べて行きたい、のレベル)とても塾には行っている暇がない。そこで5年生に上がった4月から家庭教師で週2での指導となりました。(シーズンの講習は大手塾を受講)

多分、この子は、大手塾に通っていたとしたら桜蔭は別として女子学院か雙葉には入れたでしょう。とにかく切れる子で、こんな程度の説明でそこまで理解できるのか、としばしば舌を巻きました。6年になってからの合不合判定テストの偏差値は58~62。それでも埼玉の女子トップ校は残念な結果でした。

偏差値61の学校を受けそこに進学。いま、その弟くんを教えているので本人ともしばしば会いますが、「塾なしで入ったのはたぶん、学年で私だけどと思う。そう言ったらみんなめっちゃ驚く」と言っていました。

ただし、入試で実質倍率1.2倍を切るような学校は別です。ある学校の先生(偏差値40前後)とお話したら、大手4塾(サピ、早稲アカ、四谷、日能研)が多いのは確かだけど、東京個別指導学院やスクールIE、明光義塾が一角を占めるくらい、個別オンリーのお子さんが増えてきた、とのお話でした。

一般的には個別の方がコストもかかります。TOMASオンリーで早慶付属に入った子が知人にいますが、かかった費用の合計はTOMASだけで300万は下らない、とのこと。(1年半の通塾) まあそうですよね、一コマ12000円として週3で70週で250万。それに春夏冬の休みは1日6コマとか組みますから。

要は、個別でいけるのか、集団でないと無理なのか、はどのレベルを目指すのか、によると思います
(2020/11/14)