今年もやってまいりました!!
Mー1グランプリ!!!!
今年も審査員が9名で、新顔は2人が初参加。
今年も9人と多いため例年参加している審査員は少し端折りながら、
新顔を中心に審査員の想いをくみとっていきたいと思います。
⚪︎恒例・連続参加組 7名
恒例・連続参加の7名についてはさらっと審査の傾向だけ。
特に4人目まではほぼコピペなので飛ばしてもらってもいいです。
①中川家 礼二
エバースへのコメントやヤーレンズへのコメントの通り
基本的にはMー1世代に多く見られる、
ネタコーディネート力を中心に配点されている。
近年は巨人師匠らのようにネタ中どのくらいウケたか?
ずっとウケていたか?というウケの持続力にも配点が増えた。
「ちょっと完璧やったんちゃうかな」(ヤーレンズ)
「お互いのポテンシャルが高い。計算されているところもある」(カナメストーン)
「4分の使い方がうまいこと使てんなと」(エバース)
「登場のときから全てを取り込んでいる。オーラに圧倒」(真空ジェシカ)
②海原 ともこ
3年連続3度目の参加。
彼女の傾向は1点。
「面白ければ入れる、面白くなければ入れない」
あたりまえのように見えて実はこれは珍しい。
いろいろな基準で審査したい審査員が多い中、彼女はこの1点だ。
なので何回か会場が湧けば基本的に高くつける。
地雷になりにくく、毒にも薬にもならないのが彼女の採点だ。
「これぞヤーレンズ」(ヤーレンズ)
「変なことを言っているようで、間とかがすごい」(真空ジェシカ)
「楽しさが伝わってくる」(ヨネダ2000)
「最後は教祖様かなと思った」(ドンデコルテ)
③ナイツ 塙
こちらは非常にMー1世代らしいネタ構成力に審査の配点が高い審査である。
コメントも多彩でいまやなくてはならない存在感。
「盛り上げて終わるっていうのが、賭けて大会に臨んだというのが伝わった」(ヤーレンズ)
「2人の掛け合いでまだまだ笑いがとれたんじゃないか」(カナメストーン)
「内海師匠が言っていた通りの、絵が浮かんできて。素晴らしかった」(エバース)
「絵が浮かばなくても面白い。何のテンプレにもないのが魅力的」(ヨネダ2000)
「もっと面白いはず。もっと対話になっていれば」(豪快キャプテン)
「最後ちょっと失速してしまった。檜原がリアクター、ツッコミとして優秀」(ママタルト)
④博多 大吉
こちらも世代としてはMー1世代。
だが、Mー1に挑戦したことは1度きり。
ということもあってか、毎回公平に漫才を評価するために
独自の採点基準を持って臨んでいる。
Mー1後のラジオは必ず聴きましょう。
「テンポ良く流れるような漫才」(ヤーレンズ)
「勢いとパワーで盛り返したので見事だった」(めぞん)
「仲間由紀恵さんの次があったのがしびれました」(カナメストーン)
「その場でやってる感じが出ているのは素晴らしい技術」(たくろう)
「もっと声のトーンとか工夫できるんじゃないかと」(豪快キャプテン)
⑤アンタッチャブル 柴田
こちら去年に続いての審査参加。
去年審査のクセチェックグラフの相関係数が最も高かったとこのブログで紹介したが、
実は今大会でも最も高い相関係数だったのが柴田である。
二年連続のこの実績は松本人志や島田紳助のレベルにあるといえそうだ。
「前半にもうちょっとあってもよかったかな」(めぞん)
「構成と運びが完璧」(エバース)
「引き込まれて93点押しちゃってた」(ヨネダ2000)
「手数多くしたくなるところを少ないのにきっちりはめてきた。パンチ力すばらしかった」(ドンデコルテ)
「檜原君が前回は最初に、今回は最後にちょっと失敗しちゃったかな」(ママタルト)
⑥かまいたち 山内
こちらも当然M-1世代の審査員。
M-1世代らしくコメントは技術やテクニック、ネタ構成力への言及が多い。
「こっから始まるっていうところで歌だったのが残念」(めぞん)
「全体的に1回も外すことなく完璧なネタ」(エバース)
「これが漫才なのか論争が起きてほしい。一貫性がないという一貫性がヨネダのすごさ」(ヨネダ2000)
「デジタルデトックスという切り口がいい。オリジナリティがすごい出ていた」(ドンデコルテ)
「そもそも小さいカバンもらったらええやんっていうところで笑える」(豪快キャプテン)
⑦笑い飯 哲夫
こちらもMー1世代の審査員。
去年の審査結果を受けて当ブログでは
「これらのことから、彼は「気取ったボケが嫌い」なのだろう。
間違いなくベタな笑いを求めるタイプだ。」
と彼の審査基準に言及したが、
今回、本人のコメントからも
「アホな笑いが好きなんで」とコメントが有ったことからも、
読み違いではなさそうだ。
TheWでの『場外乱闘』はあったものの彼自身は非常に冷静で、
唯一関西系の漫才がここ5年優勝していないことにも言及していた。
「すいませんね、変な感じで。アホやなってのがあったらもうちょっと点が良かった」(めぞん)
「つかみが敗者復活からここまでで作り上げていたのを評価させてもらいました」(カナメストーン)
「標準語の漫才の面白いっていうのをたたきつけられた」(エバース)
「めちゃくちゃはまりました。スタジオ中にアホさが飛び交っている感じがした」(ドンデコルテ)
◯新顔組
①フットボールアワー 後藤
01、02、03、06大会に出場しすべてファイナリスト。
そのうち1回優勝、3回で最終決戦に出場しているという
実は『本物の』M-1の申し子フットボールアワー。
クセチェックグラフはまとめて後で述べるが柴田に次ぐ相関の高さ。
流石の一言である。
コメントを見ても技術やネタの構成などへの言及と
こちらもそりゃ当然とばかりにM-1世代らしいコメントに終始した。
「今田さん、ともこさんをいじっていたのも舞台を大きく使えていた」(ヤーレンズ)
「声が高すぎたんで、日本中のイルカがこっち向いたで」(カナメストーン)
「ただの大喜利をやっていないというか、人間性で笑わせられるっていうのがすごい」(たくろう)
「もうちょっと伸びたかった」(ママタルト)
後藤がM-1の申し子なら、こちらはM-1の革命児 ミルクボーイ駒場。
M-1を、漫才のトレンドを変えたこの男の審査は少々独特だった。
とはいえ、すべて91点以上をつけているところを見るに、
低い点をつけあぐねただろうか。
コメントも他のM-1世代と同様の範囲。
少々感傷的なコメントが多いくらいが特徴だろう。
この点はあとで言及していくが、このM-1世代審査という点が今後のM-1の分岐点になる。
そのくらいおおきな問題をはらんでいるのだ。
「しょうもなさがよみがえった感じ」(ヤーレンズ)
「めちゃめちゃいいですね。一発目で『逃げろ』が出たのがよかった」(めぞん)
「5年出ててみんなが分かっているの、それを超えてくる。
自由にやってるけどメチャクチャ考えているんだろうなと」(真空ジェシカ)
「7年間やってたからこそいいのが出た」(たくろう)
「聞かんでええ話を聞いてみたらおもろかったって感じ」(豪快キャプテン)
おそらくこの両方がどちらも効いているのではないだろうか。
全員が同じベクトルの審査で、
そのベクトルの長さだけが会場のウケ量によって調整される。
そんな審査だったように思えてならないのだ。
会場のウケを考慮する審査を否定するつもりはない。
ただ、あまりにもネットの批判を意識しすぎていないだろうか。
審査へのネットの批判なんていうものは、所詮素人の戯言なのだ。
もっと審査員独自の色を出していってもらいたいし、
それでなければ意味がない。
何度も書いていることだが、
審査員みんなが同じ審査基準なら審査員は一人でいいのだ。
だからこそM-1世代のみの審査員構成については、
今後のM-1にとっての分岐点になる点なのだ。
今後もM-1世代の優秀なM-1戦士だったものだけで審査するのか、
また以前のように出自(コント、落語、ものまねなど)、
出身(東西)、性別を広く取る審査員構成にするのかで大きく変わると思っている。
前者であれば今後、M-1はM-1という競技として先鋭化されていく道をたどるだろう。
M-1を知り尽くしたものがM-1の漫才を審査する。
基準もはっきりしているし、対策もしやすくなるだろう。
よりM-1の漫才として先鋭化していくに違いない。
一方後者であれば、漫才という大きな木の幹を太くしていく、
漫才の大元を育てていく大会になるだろう。
全然出自の違う、いわば漫才の門外漢の笑いのプロが漫才を審査する。
そこには漫才への敬意も知識不足もあるだろう。
それを乗り越える漫才を生み出す土壌がM-1で生まれていくことになるのだ。
どちらを選ぶのか、これは審査員の今後の選出に委ねるしかない。
個人的には今のM-1が好きなだけに、
今のM-1を作ってきた後者を推したいところではある。
※今回のピックアップシーン
今回のピックアップシーンは当然、
「関西弁漫才6年ぶりの優勝」
である。
たくろうのネタは
・リングアナウンサー
・ビバヒルの吹き替え
という、標準語が基本設定となるネタであるため、
純粋な関西弁漫才か?という点は無視できないところではある。
かくいう筆者も、哲夫が
「ここ数年関西の漫才が優勝してないんですよね」
と口走るまで たくろうが関西弁であることを忘れていたくらいだ。
では、5年苦戦が続いた関西弁漫才はいかにして勝者たりえたのだろうか?
その秘密を解き明かしてみたい。
そもそも、たくろうのネタである
「リングアナウンサー」や「ビバリーヒルズ青春白書」
といった題材はこれまでの漫才やお笑いの歴史の中で散々コスられてきたネタである。
これを、ネタの構成の点からたくろうの起こした変化を見てみたい。
従来であれば、
リングアナウンサーにしろ、
ビバリーヒルズに住むにしろ、
「やってみたい」と言い出すのは大概ボケの方だ。
その無理やりな希望からツッコミがこれに付き合い、
やりたいはずのボケがまともにこれがうまくできずに、
ツッコミの怒りがヒートアップしてネタもテンポアップ。
頂点に達したところで「もうええわ」となる。
これまでのM-1での関西弁優勝者をみると、
・中川家 ・ますだおかだ ・フットボールアワー
・ブラックマヨネーズ ・チュートリアル ・NON STYLE
・笑い飯 ・銀シャリ ・とろサーモン ・霜降り明星
・ミルクボーイ
ほぼツッコミ(もちろんときにはボケも)の怒りを始めとした
熱量がベースにネタが構成されている。
ところが、たくろうはツッコミ担当の「メガネでパーマの木村バンド」が
勝手に話を進める形で物語が進む。
これによってボケ側がキュウソネコカミ的に大喜利のボケをしていくことになる。
本来ツッコミのハズの木村氏はひたすらストーリー展開と
大喜利のネタ振りに徹し、一切突っ込まず淡々と話を進め、
ボケ役赤木はストーリーテラー木村の進行を抑制させようと躍起だ。
つまりは従来の漫才とは役割も熱量も全く逆。
ヒートアップではなく、なんとかクールダウンを狙う熱量運びなのだ。
これによって初めて関西弁漫才はツッコミの怒りを始めとする
「熱量」からついに解放されたのだ。
その結果最終決戦では何をいってもウケる状態。
文句なしの優勝だろう。
ただ、たくろうの偉業は優勝そのものよりも、
関西弁漫才がすがってきた4分で与えるインパクトのための
怒りなどの「熱量」から関西弁漫才を解放したことにある。
これまでなかなか観客のフィルターを通りにくかった、
熱量に頼る関西弁漫才をいよいよ観客の安心して笑えるフィルターを通すことに成功した。
この優勝は関西弁漫才の熱量の可能性を大きく広げる点で
非常に関西漫才界に大きな勇気を与えるものになるだろう。
来年のM-1が今から楽しみで仕方ない。

