タクシーコンサルタントのブログ -3ページ目

タクシーちょっといいはなし 8

 今回は『無名人語録』 の2回目です。 別段、無名人をつける必要はないのですが、有名人ではなく、無名

の人が言うから、心の琴線に触れることってあると思うのです。 考えて、捻り出した言葉ではないからこそ

響く、と言いますか・・・素朴だけど、本当の気持ちがそこに込められているような気がします。 考えたから

よい言葉が出るとは限らないもの。 昔、あるTV番組で、高倉 健さんがゲストで出演された際、進行役の

アイドルに逆質問した時、そのアイドルが逡巡している様子を見て、「こういう時に、ポンッと本当のことを

言っちゃうんだよ」とアドバイスされていました。 ご自分も、お若い頃から相当数、マイクを向けられていた

だけに、共感する気持ちと、もどかしさがお有りだったのではないでしょうか。 説得力がありましたね。


 さて、ご紹介しましょう。 基本的に現任のタクシードライバーさんの言葉ですが、それ以外の方の言葉も

含まれています。 昔、経験していた人の言葉も、また、味わい深いものです。


「飽きるわけないでしょ。 毎日、違うとこへ行くんだから』

 営業成績が、トップのドライバーさんの言葉です。字面だけ見ると、ちょっとドライな感じに聞こえますがご本人は笑顔でおっしゃっていたので、全くイヤな感じはありませんでした。この人は適性が有る人なんだな・・・と生意気ながら思いました。結局、仕事って受け取り方なんですね。マイナス思考の人は、「また、知らない所へ行く羽目になった」という考え方になるのではないでしょうか。


「お客さまの眼を見て、ご挨拶するんです。何か邪(よこしま)な考えを持っている人でも、そうされたらそんな気も起きませんよ」

ご自分もドライバーさん経験の有る役員さんの言葉です。面接中に応募者の方が強盗対策を訊いた時に
こう答えていました。一見、当たり前のようでシンプルな対処法です。でも、人は見ているようで、実は見て
いないこともあります。凝視はいけませんが、きちんと眼を見て挨拶をする・・・基本中の基本だけに疎かにしてはいけないことではないでしょうか。


「道がわからなければ訊けばいいの!プロとしてのプライド?お客さんを待たせたり、余計にお金を使わ
せるようなプライドだったら持たない方がいいって!!」

知ったかぶって、勝手なルートで車を走らせてしまい、後でお客さまからお叱りを受けるケースがよくある
そうです。「道のプロが訊くなんて」というプライドが邪魔をするのでしょうか。でも、本当のプロは訊き方も
巧いもの。謙虚な姿勢で訊けば、お客さまも気持ち良く教えてくださるはずです。このドライバーさんの
目線は、自分ではなくお客さまに向いています。自分のプライドで、結果、お客さまにご迷惑がかったら
本末転倒ですからね。


「道はポンポコ増えない。だから、覚えることは年々、小さくなっていく」

ただ、建物は新しくなっていくから、風景は変わっていくけどね・・・と、そのドライバーさんは付け加えていました。他の仕事みたいに、覚えることが次から次へと出てくるわけじゃないよ、だから道を制してしまいなよ、そしたらキミは最強なんだからさ・・・と、地理に疎いと嘆く人を、元気づけていた際の言葉です。覚えることは小さくなっていくという言葉で、見事、その人の不安を払拭させています。


 臨場感を損ねることがないよう、発した言葉そのままを再現しているつもりです。 『道はポンポコ』という

表現は、その最たる例と言えます。 飾り気のない言葉だからこそ、スッと入ってくるものです。

 紹介した語録は、必ずしも共感できるものばかりではないかもしれませんが、経験に培われたその言葉

に迫力を感じずにはいられないのは、私だけではないかと思います。 結局のところ、朗らかな気分で

仕事をすることも、セキュリティーに関することも、地理に関することも、『お客さま』あってのことです。

 この『幹』がしっかりしていないと、立派な言葉をいくつ並べても効力はないはずです。 今回、登場した

ドライバーさん、かつての経験者の方は、その要となる部分を忘れてはいません。

 
 ご自分も、語録ができるような経験を積んでみたいという方・・・

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タクシーちょっといいはなし 7

 そろそろ6月です。 五月病の時期はようやく過ぎました。 とはいえ、落ち込む時はあります。 

人間だもの・・・

 私の好きな書家みたいなことを言ってしまいましたが、そりゃそうなんです。生きているんですから、いろ

んなことはあります。 ただ、人からのちょっとした言葉で、気持ちが晴れやかになる・・・とまではいかないま

でも、気持ちの向きが変わることはあるものです。 それも身近な人ではなく、全く面識のない人から言われ

る場合でも、です。 そこが、人間の面白いところではないでしょうか。


 こんな話があります。 時は、1976年6月26日。 これをを聞いてピンとくる人は、なかなかの格闘技

通です。 アントニオ猪木 VS モハメッド・アリの試合が日本武道館で行われた日です。 前々回のブログを

ご覧くださった方は、「また異種格闘技戦の話かっ!」と思われるかもしれませんが、今回は試合云々では

なく、終わった後の話です。 

 この試合は『世紀の凡戦』と、一部で酷評されました。 前評判の割に内容が地味すぎたからだと

思われます。 私はそうは思ってはいませんし、昨今ではこの試合の評価は、180度と言ってもいいくらい変

わっています。 ただ、前評判と注目度の高さに比例して・・・という点では、一般の方には伝わりづらかった

一戦であることは間違いありません。 注目度の高さという点で、このようなデータがあります。 この試合

は日本のみならず、世界37ヶ国で中継され、生で観戦した人の最も高い料金は30万円、いちばん安くても

6万円という破格のものでした。 大卒の初任給が9万4千円位の時代です。 とにかく、全てが桁違いのス

ケールの一大イベントの試合結果が、15ラウンドフルに戦っての引き分けだったわけです。


 素人目には、これといって山場がない展開(私はあると思っています)だったのが、世間から酷評された所

以です。 翌日の新聞の見出しも『世紀の凡戦』という酷いもの。 普段はプロレスを報じない一般紙まで、

ここぞとばかりにこの試合を叩いたものですから、猪木さんとしても、たまったものではなかったでしょう。 

 試合翌日に登る予定だった冨士山へも、勝って頂上に立つという当初の目的を達成できなかったので、

中止となりましたし、何より、力いっぱいアリの足を蹴り続けた自分の右足も、乖離骨折していたので、それ

どころではありません。 もっとも、猪木さんにとって一番キツかったのは、世間の白い目、評価だったので

はないでしょうか。


 本題はここからです。 試合翌日、外出しないわけにもいかなかった猪木さんは、代官山の自宅から

南青山の新日本プロレスの事務所に向かうため、タクシーに乗ります。 ここでも、心ない一言を浴びせら

れることを想定していた猪木さんに意外なことが起こります。 タクシードライバーさんから、「猪木さん、

昨日の試合、観ました。よかったですよ。お疲れさまです」という一言があったのです。 若干、言葉のニュ

アンスは違うかもしれませんが、私は猪木さんがこのエピソードを話していたのをTVで観ています。

 「その一言が嬉しくてですね、落ち込んでいた気持ちがス~ッと張れたんですよ。ひどいことしか言わ

れなかった中、全員が敵じゃないんだと・・・あの一言は大きかったですねぇ」 

 猪木さんの言葉です。 


 そのタクシードライバーさんにしたら、何気ない試合の感想だったかもしれません。 ですが、時に言葉は

魔力を秘めています。 他人の一言が、言われたその人にとって、妙薬にもなれば刃にもなる、証左と言え

るエピソードではないでしょうか。


 もうあの試合から37年が経とうとしています。 猪木さんは、まだあの時の言葉を覚えていらっしゃるはず

です。 その後も何度か、アリ戦後のこの話を披露されているのを拝見していますから。


 タクシードラバーという職業は、人情味なしに語れません。 先の震災時、乗車されたお客さまが、ご自宅

へ帰るまでの不安な車中を、運転しながらずっと励まし続けたドライバーさんがいらっしゃいました。 一人

や二人ではありません。 「それが、仕事でしょ」の一言で片づけられるものでもないはずです。 あの時、

誰もが先行きの分からない状況でした。 ドライバーさんとて、ご自分の家・ご家族の安否が気にならない

はずはないでしょう。

 
 タクシーの車中は、ある意味で密室です。 お客さまの中には、激務に追われている方、精神的・肉体的

に疲れている方、誰かと話したい方、少しでも眠りたい方など様々な方がいらっしゃいます。 社会的地位の

高い方や有名人の方でも、ことタクシーの車中では、気を許し、本音で話をしてくださる方が多いとも聞きま

す。

 安全・快適に目的地までご案内する・・・加えて、一服の清涼剤になりえる接客を行う・・・

 深い仕事です。

きめ細やかな心くばりのできる方・・・お待ちしております。http://www.taxi-sj.com/












タクシーちょっといいはなし 6

 外国の方が日本のタクシーをどう思っているかについては、何度が取り上げています。 比較的、

お褒めの言葉が多かったように思います。 日本人として嬉しいですね。 ただ、ここでは敢えて辛辣な意見

も取り上げていきたいと思います。 いくつかあるのですが、最も多かったのは、語学に関することでした。 

 「サービスはいいけど、言葉が話せないじゃん!」というものです。 ただ、これはタクシー業界に限った

ことではありませんね。 活きた語学を使いこなせるか否かについては、ハッキリ言って否の割合の方が多

いというのが、日本人のウイークポイントかと思います。 もちろん、流暢な外国語を話す方もたくさん

いらっしゃいます。 問題は、諸外国と比較してどうかという点です。 意識が希薄と言われても仕方ない

のが現状ではないでしょうか。 


 観光庁の長官が定例会見で、公共交通や美術館・博物館などに共通する多言語化ガイドラインを年内

に作成する方針を示しました。 政府の観光立国推進閣僚会議・WTも、今後、空港や都心に外国人用タク

シー乗り場を設置するなどの対策を打ち出しています。 この専用乗り場というのも、かなり慎重に考えて

いく必要があります。 外国人専用と謳うからには当然、言語に対応できるドライバーさんでなければいけま

せん。 ひとくちに外国人と言いますが、英語圏の方もいれば中国語圏の方もいますし、何よりレベルの

問題もあります。 どの程度の会話力・理解力なのか・・・明確に線をひいてしまうことで、供給が追いつか

なくなってもいけませんし、会話にならないということでは本末転倒です。 今後、スマートフォンなどの

翻訳機能の活用なども考えていかなければいけないでしょう。 とはいえ、語学は生きものです。 定型文を

使った四角四面な応対のみでは問題も出てきます。 なんて、偉そうなことを言っていますが、かくいう私

も、日常会話程度の広東語は話せると自分を買いかぶり、香港のレストランで料理を注文した際、全く聴き

とってもらえず恥をかいたことがあります。 香港人の友人に発音をチェックしてもらったところ、

「お粥 dzuk7」と言っていたつもりが、「ムカデ baak8」と発音していたことが判明しました。 

※教院式だと同じ発音記号になる場合有り。


 外国の方に、日本にいる間は快適に過ごしてもらおうという主旨には、大いに賛成します。『おもてなし』の

心は人一倍持っている日本人です。 今回の施策をよい方向に持っていけると信じています。 

 
 知り合いのドライバーさんで、外国のお客さまをお乗せした際、言われたことがどうしても理解できなかっ

たので、語学堪能なホテルマンの方に電話で助けていただいたという話を聞きました。 回りくどいこと

を・・・という人もいるかもしれませんが、ただ笑って誤魔化したり、NO~NO~と手を横に振るよりも、その

ドライバーさんの必死さ、誠意が伝わったと私は思います。 言うまでもなく、世の中の経済は循環して

います。 ホテルの方にとっても外国からのお客さまは、そのままご自分のお客さまにもなるはずです。 


 日本のサービス業の評価は、長い目で見れば私たちにも還ってくるはず。 「日本、やるじゃん!」という

評価は、伏し目がちで自信を喪失していた、ここ数年の日本人の潜在能力を覚醒させるものだと思います。 

 それは、日本経済の回復に他なりません。 お粥をムカデと発音した人間が偉そうなことを書きましたが、

『自分がそうされたら気持ちのよいことを相手にもする』接客業の本当にシンプルな基本を忘れないことが、

観光立国を目指す日本に必要なことではないでしょうか。