人間気を張っていると、目覚ましよりも早く起きる時がある。これが身勝手の極意というものかはわからないが、自動的に目が覚めると出社時刻の1時間前だった。
普段であればもう一眠りかましたいところだが、この1時間が命取りになるのは俺の経験上熟知している。
いつもより時間に余裕があるので、昨日買っておいたパンとコーヒーで1人モーニングを楽しむ。
テレビをつけニュースを見て、シャワーを浴びYouTubeで時間を潰す。
時計を見ると、のんきに過ごしすぎていたことに気づき慌てて家を飛び出した。
出社
朝営業所に着く前にコンビニで一服してから行くのが日課。
コンビニにつくと見たことのある人がいた。
同じ研修生がパンを食っていた。
研修生は制服を着て行燈のないタクシー車両に乗っているため、『運転手さん、○○まで行ってもらっていいですか』とでも声をかけたらびびるかなと、ちょっとしたイタズラを考えてしまった笑
午前
午前は各種タクシーチケットの説明があった。
結構このチケットの種類が多い。
こういう場合はこう、この場合はこれはしてはいけないので注意……お、覚えきれない😓
難しく考えすぎなのか、慣れれば余裕になるのか、一気に詰め込んでも今はパンクしそうだ。
時期を見計らって覚えるとして、今は脳みその容量をここに費やすのは辞めた方がいいと判断した。
昼休憩
待ちに待ったランチタイムだ。
今日は弁当を注文した。
ハンバーグだ。ハンバーグやメンチカツというものはなぜこんなに胃もたれを起こすのか、今日は女性新人とペアで路上をまわるのに、車内での胃もたれゲップごときで、今後気まずくなるのはごめんだ。
ようやく打ち解けてきたのに、こんなところで壁を作られるわけにはいかない。
これが密室の怖いところでもある。
みんなが食い終わった弁当を俺は片付けていた。
すると今日をもって卒業する研修生が話しかけてきた。
『明日から俺らはいないけど、片付けや後のことは頼んだぞ』
『…はいっ!!先輩!!』
弁当の片付けでここまでかっこいいセリフが言えるのはここくらいだろう
午後の研修
午後からは三回目の路上研修だ。
三回目は広範囲にわたってドライブ。
今日からはナビが使用できるようだ。
休みの間にすりきれるほどテキストを見てきたのでなんとか接客の言葉はさらさらと言えた気がする。
今回の教官はものすごく優しい声だった。
昼飯でお腹いっぱいになった上に朝早くから起きているものだから子守唄のような優しい声につつまれ正直寝かけた。
なんというのだろう、心理カウンセラーのような優しい話し方のような、教祖様が新人信仰者を洗脳する時のトーンというか…
ゆったりと優しく
だが、心地いいとはこのことか、
タクシーに乗り込んでこれだけ優しい声で話されたら正直おちついて寝かける。これもまた居心地の良さのテクニックかと思った。
お客様に道を聞く
新人のタクシー運転手は道を完璧に熟知している人は居ない。
それは数年働いたとしても完璧になることはないだろう。
我々は路上を走りながらお客様を乗せ、走らせるためのロープレを行っているのだが、
『道がわからないので聞く』ということをしている。
教官もみんなの前で言っていたなぁ
『あんたたちは道を知らないんだろ?ならどうするか?そう、お客様に聞くしかないでしょうが!』
『いつやるの?いまでしょ』的な林先生を彷彿させるかのような説得力だが、この道の聞き方がなんとも難しい。
『新人なので…』とか『わからないです』
とは言えない。
今の自分のベストな回答としては
『只今この辺りの道の勉強中でして』だ。
他にいい回答があれば是非コメント欄に頂きたい
卒業生と写真
俺は前回の講習で次回は写真を撮るというワードを覚えていた。
休みの日に、当日散髪できる美容院を探し、気に入っていたヘアスタイルだったが、思い切って髪を切った。
つい最近パーマをかけたが、なにかしらの写真を撮るのであれば切らなきゃいけないと思ったからだ。
この日の最後、研修生の卒業式があった。
その時、職長から卒業生に向けて『写真は撮ったか?』というワードがあった。
どうやら写真を撮るのは卒業生のみだったようだ。
なんてことだ、俺はこんな下忍の立場で写真を撮られると思っていたのか…恥ずかしい
だが、まわりを見渡せば下忍数人が髪を切っていた。
どうやら写真を撮られると思っていたのは俺だけではなかったようだ笑
明日からは卒業生はいない。
俺はいつかこの卒業証をもらってここを卒業する日が来るんだなとおもった。
その時は今よりも大きなものを手にしてここを後にするのだろう。
職長の言葉
『この先あなた達も卒業する日が来るだろう。
嫌なことや辛いこともこの先たくさんあるでしょう。でもこの場で学んだことをしっかりと活かしてください。きっとこの先自分のためやお客様の為になります』
職長の言葉は毎度心に染みるわー
僕は好きなんですよ、こういうアツい精神が
明日は続く