今日はタクシー研修2日目だった。
朝は初日のように目覚ましでしっかりと起き、カーテンを開けると朝日が顔を出し始めていた。
『今日も朝日の頭を見れた』🌞
研修2日目の朝
朝早く起きれたらまずは優雅なひと時を過ごしたいと昨日から思えるようになった。
なぜならここ数ヶ月クソニート生活を送っていたからだ。
生意気にコーヒーをいれ眠気を覚まし、朝食でエネルギーを入れておきたい。ここはおしゃれにパンかと探したが、あいにくうちにはパンという物が存在していなかった。
冷蔵庫を開けると昨日嫁の親が持ってきた肉団子が入っていたのでそれを温め、コーヒーと一緒に食し、和と洋を同時に味わった。
なんて組み合わせの悪い朝食なのだ…
早起きしたおかげか、時間に余裕を持ち、
鼻歌を歌いながら風呂に入り髪を整え、今日の研修に備え準備をした。
それというのも本日は元CAが『接客の心得』とやらを教えにくるそうな。
噂に聞くと、そうとう厳しいらしい。
言葉で見た目をボコられると聞いた。
うちの営業所の方も、おしゃれパーマを相当ボコられたと聞く。
思い返せば採用が決まった後、調子こいて俺はスパイラルパーマをあてて個性を強調してしまった。
おまけにそのパーマ剤のせいで、わざわざ面接の時に黒染めした髪が茶髪に戻っていた。
絶対言葉責めでボコられるであろう。
今日は電車通勤でなく、初めて自家用車で通ってみることにした。通常ならば営業所まで1時間かかるところを車ならば30分ほどで行けるからだ。
もちろん嫁には『車がなければ出かけられないじゃないか』と言われることは目に見えての決断だ。
だが、そんなことは知らん。
なぜなら君は今も夢の中にいるからだ。
これもまた早起きしたものの特権なのだ。
時計を見ると出社時間にも余裕がある。
下手したらワンチャンクソこいても間に合う。、
何て優秀なんだ俺はと…
しかし、カレンダーを見てあることに気づいた。
『しまった、今日はゴミの日だ!!!』
急いで子供のオムツや生ごみを回収する。
今日はCAによる服装チェックが厳しい日なので服装全てを整え、黒か紺の長い靴下を探すことに。
靴下というものは実に不思議なもので、相方がなぜか見つからない。全てがバラバラなのだ。
探せど探せど、どこにもペアが存在しない…
あれだけドンキで5セット売りを買ったのになぜどこにも居ないんだ!!💢
やっと見つけたかと思いきや柄が違う。
靴下どこじゃー!!と、洗濯機を開けると靴下が全て詰め込まれていた。
『おいっ!!!!なんでやねん!!!!💢』
あれだけ時間に余裕があったのに、急になんて大忙しなのだ!!コーヒーと肉団子を呑気に食してる場合ではなかった。
仕方がなく昨日と同じ靴下を洗濯機から取り出し、匂いを嗅ぎ、セーフと認識すると、急いでその靴下を履き、外に飛び出た。
どうか気づかれませんように…
研修センター
研修場に着くと、当たり前だが初日と比べての緊張感はほぐれていた。
昨日までは『○○と申します。よろしくお願いいたします。』と名乗っていた連中も
『おいっすー!!ちゃーっす!!』などと、たわむれるほどの仲にも切り替わっていた。
これが良い意味での慣れというやつだ。
例えるならば、転校生が新たな学校連中になじみかけてきた時に気持ちが楽になり始めるアレとおなじ原理だ。
午前の部・元CAによる研修
CAといえば、接遇というものに特化した存在のようにも思える。
とにかく接客技術においては徹底的だと聞いたことがある。
俺自身も元々は高級商材を取り扱っていたために、幾度となく厳しい接客セミナーを受けていた。
そんな場数を踏んでいる自分ですら、未知なるキャビンアテンダントという存在には少々チキっていた。
こんな時、いつも自分に言い聞かせることがある。
それは『俺は接客においては誰にも負けることがないプロなんだ』と。
実際にマナー研修が始まると、なんだか懐かしくも感じた。
『そうそう、接客というものはこういうものだったな』と。
発声練習、クッション言葉、その他様々なことを学んだ。※すまん、他をあまり覚えてない
先生の正面に立っていた俺は先生に指名され、皆の前で姿勢のお手本となった。
先生が『試しにだらしない格好をしてみて』と言うので、俺はみんなの前でやる気なさそうな姿勢をしてみることになった。
先生が俺を指さし、『この格好どう思う?』と問うと、四方八方から
『だらしがない』
『やる気がなさそうに見える』
『仕事できなさそう』
と言う言葉を浴びせられた。
やる気がない手本を見せたとは言え、
会って間もない人たちから言われる心無い言葉になぜか泣きそうな気分にもなった。
その後、実際にタクシーにお客様を乗せた感覚で、接客シュミレーションをビデオに納めることとなった。
自分のどこがおかしかったかを客観的に考え、レポートにまとめることに。
タクシー運転手になるためにはどの運転手もここまでしているのかと、この時初めて知った。
ビデオを見返して、自分のあまりの姿勢の悪さに引いた。
おしゃれパーマや色については言及はなかったが、
『襟足長いから切ろうか』と言われた。
まぁ、そうなるだろう。
午後の路上研修
午後になり、昼ごはんに初めて研修センターの弁当を注文した。この弁当、格安で400円なのだ。
期待をして蓋を開けると、普段食べ慣れない魚のフライがでてきた。
『久しぶりに魚のフライをたべるな』と、わくわくしながら食してみると、とんでもなくぶっとい骨が口内を突き刺した。
食事を済ませ、タバコを吸いに喫煙所へ。
するとそこには同期が深刻そうな顔をしていた。
どうしたのと聞くと、1日目の研修で根をあげそうになっていた。
『タクシーの売り上げの半分しか給料にならないのが自信をなくすなぁ』と。
だが、考えてみれば100万あれば50万は自分の給料ということだ。逆にやる気次第でそこまで行くなら他の会社より全然良いじゃん。現にそれくらいやってる人も友人でいるよと言ったら、なんだか顔が晴々としていた。
もちろん俺はそれをやる気しかない、というよりこの世界に飛び込んだならもうやるしかないけどな。
このタバコ休憩、意外なことに収穫がでかい。
それというのも分け隔てなくそこにいる連中と会話できるからだ。
なんでタクシー運転手をやろうと思ったのかを色んな人から聞ける。ある意味この質問、趣味になりつつある。
俺は研修の時から元気でハキハキしていて気になっていた青年に声をかけた。
『なんでタクシー運転手やることに?』
すると、こう答えた。
『前の会社で上下関係とかうんざりなんですよ、俺は完全歩合制の道で自分の力でいけるところまでいくっす!』
おー、俺と同じ考えの子がおったわ。
やはり若い子はみなぎるオーラが違うな
いよいよ路上研修。
この研修は指導員が付き、およそ2時間にわたって決められたルートを共に乗車し、指導してくれるというものだった。
指導員はとにかく優しくて丁寧。
第1種をとったときの自動車学校の教員とは全然違った。
自動車学校の先生、もとい、センコーはとにかくやる気がない連中が多く、なにかを間違えれば舌打ち。いかにも毎日のことでめんどくさがっていたが、タクシーの指導員はむっちゃくちゃ接しやすく丁寧だった。
これが同じ道を歩む人生の先輩というやつか。
聞きたいことはなんでも遠慮なく聞くことができた。
今回一回目の路上研修を受けてみて、自分の悪い癖がわかった。
『料金の方は500円になります』
この『方は』と『なります』というのが口癖になっている。
これは正しくは『料金は500円です』なのだ。
若者はこの間違った敬語のようなものが癖になっているそうな。
癖というものは恐ろしく、何度挑戦してもついつい出てしまう。
『料金の方は500円になります。あ、すみません、間違えました。料金の方は500円になります。…あ、すみませんまた間違えました💦』
指導員『慌てなくて良いから失敗してもゆっくり丁寧にやっていこうね!』
俺『はいっ!!えーと、料金の方は500円になります!!』
二日目終了
二日目は初日よりも終わるのが早く感じた。
それどころか、ものすごく充実した研修に『今日も楽しかった』と思えている自分がいる。
少しづつ学べている自分の環境や、周囲の人間と仲良くなりつつある環境に不思議なほどの充実感があるのだ。
かつてドラゴンボールでベジータは言っていた。
『残忍だった自分が家族と過ごしているうちに地球という環境が好きになってきた』と。
まさにそのような気持ちだ。
名前で覚えられ、見た目で覚えられ、老若男女関係なく皆んなで元気に挨拶をし合う。
はっきり言う。
俺はこの環境が好きだ。
タクシーはやがては個人競技だが、これだけ結束しあったものならば、一つの会社なら人間関係もうまく行ける組織なんだろうと。
ここに居る連中は今どれだけ慣れあっても、いつかは自分の売り上げの敵となる。しかし、なぜだろうか…
事業を失敗して今に至る者、家族と別れ今に至るもの、新たな挑戦がしたく今に至る者、いろんな話を聞いたが、タクシー運転手の道を選んだどの人もみんな一人一人がおもいっきりこの先、幸せだったら良いなと思えた。
どれだけ失敗してもどれだけ苦労してもその先に待っているものがその人たちの幸せが待っていてほしいと思えた。
たとえこの先敵になるとしても。
↑この言葉自分で言っててカッケー笑
こうして今日もなにか優しい心を一つ手に入れて帰宅した。
今日あった出来事をブログにしっかりと忘れないうちに車でまとめて家に帰ると、
嫁から『終わった時間もっと早いんじゃないの?はやく子供の面倒みてよ!!』と怒鳴られた。
ふん、その口をこの先俺が大金手にして黙らせてやるから今のうちにせいぜい吠え散らすがよい。
ぜってーやってやるから見とけ数ヶ月後!!!💢
明日の3日目の研修へ続く