人生山あり谷ありとは言うが、できれば山も谷も無くていいから平凡に生きれればそれでよかった…


このブログではタクシードライバーという職に転職した男がどのようにこの先成長していくのかをノンフィクションで書いていく。


無双状態から0に

俺はある業界で天下を取り続け、何もかもが順風満帆にいっていた。

そう、あの日が来るまでは。



時を遡ること数ヶ月前

俺はある業界で店舗の店長を任され、売上は毎月達成。グループ店とは圧倒的な差をつけるほどの店に変え、仕事においてもプライベートにおいても、もはや無敵といえるほどになっていた。


しかし、ある事件のせいでその全てを失うことに…

それはまた別で話すとしよう


転職の道へ

ということで、転職をすることになったのだが、

37歳という年齢。

もともとは大学時代からデザイナーを志望していたが、今考えると給料が割に合わない。

仕事を探せば探すほど、仕事の内容と給料が割に合わないことが多いということを知る。


だらだらとニート生活を続ける中で、小学校から一緒の友人にずっと誘われ続けていた職があった。

それはタクシー運転手だ。


タクシー運転手と聞くとなんだかブラックな仕事のようにも感じるが、その友人は現に月給で70万ほど稼ぎ続けている。

どれだけ誘われ続けても意地で振り切っていたが、

世の中の求人を見渡すと、はっきりいって給料と仕事量が比例していない。

力ばかり使うのに給料が少ない

めちゃくちゃ忙しいのに残業代はみなし残業とされる。


ここでよく考えた。

完全歩合制は決して悪くないんじゃないかと。

そう、やる気さえあれば…


まさにタクシー運転手は完全歩合制ではあるが、やったらやった分だけ給料はついてくる。

それならばとついに紹介してもらうことになった。


ゆるい

紹介された会社は友人が10年以上勤める会社だ。

いろいろな技能が求められる会社が多い中、タクシー業界はかなりその部分がゆるかった。

もちろん、この面接で落とされるという人も多々いるそうだが、面接自体は喫茶店で話して即採用となった。

『なんてゆるいんだ』

噂には聞いていたが、タクシーの会社の中でもかなりゆるいと聞いていたがまさにその通りだった。

『あなたなら何の心配もなくできると思うので採用します』

そう言われてほんの少しだけ調子に乗れた。

おもっていたより潜り込むのは簡単に感じた。

それでもこの辺では大手のグループ会社ではある。


しかし採用は決まったものの、このシーズン自動車学校は学生連中で賑わうそうで、タクシー運転手の必須条件ではある2種免許取得には入校待ちの時間がかかるとのこと。


『おいおい、前職の退職金がもう底をついてしまうぞ…』


だが、ここまできたら待つしかない!

たとえここで飢え死にするとしても後で必ず取り返すと深く心に誓った。


早起き

ニート生活も残りわずか。

思い返せば前職は忙しすぎて家族との時間もまともになかったが、ここ数ヶ月、毎日嫌というほどその時間があったように感じる。

物心がつく前の娘は、次第に毎日いるおっさんに見慣れ始めてもいた。普段寝顔くらいしか見なかった娘と何度もデートを重ね、ようやくパパと認識してもらえるほどにもなった。

明日からグループ研修。

最終日、妻からこんな話があった。

『家族でこんなふうに過ごせるのも今日が最後だからどこかへ遊びに行こう』


なんだか明日で他界するかのような気持ちにもなった。


思い返せば、昨年末仕事を辞めてから妻と娘と毎日のように顔を合わせていた。

昼まで寝て、娘と出かけ、3人で食卓を囲み、今までにはなかった世界が確かにあった。

これが今日をもって最後になるのか…と

妻が風呂に入っている間、言葉のわからぬ娘にそっと囁いた。

『明日からパパはいないけど、ママの言うことを聞くんだぞ』と。

魔人ブウを吹き飛ばす前のベジータの気持ちがこの歳になってなんとなくだがわかった気がする。



それはともかく、翌日は朝の6時起き。

朝寝坊で名の知れた自分としては6時起きなんて、はっきりいってあり得ない。

今まで11時出勤ですらやばかったのに6時起きなんてはっきりいって天皇レベルのようにも感じた。


かつて昔、SMAP✖️SMAP(22:00〜)がやっている時間に就寝していた父親に、なんて早い時間に寝に入るんだと思っていたが、この歳になってその偉大さを痛感した。

起きるためには早起きをしないといけないんだと。


俺は今まで朝の4時とかまで酒を飲んで楽しんでいたが、もうそんなことしている場合ではない。

明日は研修初日。遅刻したらまじでやばい。

ということで久しぶりの目覚ましをかけ23時に就寝した。



しかし、まるで遠足前日のようになぜか寝ることができない。寝ても眠りが浅いのかすぐに起きてしまう。それを繰り返し、意味のわからない夢を見つつ今まで1発で起きることができなかったiPhoneの黒電話という音声で1発で起きることに成功した。


この音声、かなり耳障りだが、1発で起きれたためしはない。thank you iPhone


しかし、人間というものは不思議な構造で、起きなきゃいけないと思い込むと起きれるものだ。

やればできるじゃねぇか俺笑


朝起きると、まだ日は登っていなく、普段見ることのない景色がそこにはあった。

スズメが鳴き、始発の電車が通り過ぎる音が鳴り響く。



なんだ、この清々しい朝は。

時間のゆとりを感じた俺はおもわず、前日に買っておいたアンパンとコーヒーを朝食に、朝のひと時を1人で楽しんだ。

妻娘が寝ていなければクラシックでもかけてエレガントなひと時を感じたい気分だった。



11時出社だったころの電車は座れるほどゆとりがあったのに、この時間は人と人が入り乱れ、痴漢と思われるほど近い距離で電車内で戦う味を知り、朝のゴミを今まで間に合わず泣き叫んでいたが、どこにでも回収されないゴミが散らばっている。


これは見たことのない景色だった…。


グループ研修初日


いよいよグループ研修が始まった。

俺の場合、自動車学校に行く前に始まるという異例パターンなのだが、研修に行って特にびっくりしたのは年齢だった。

よぼよぼのジジイばかりと思っていたが、そうではなかった。

タクシーは今や新卒からも人気があるそうで、若い人がかなりいた。

どうやら世の中の矛盾を感じた若者がタクシーに集うようになってきたそうな。


それもそうだ。この世の中にある仕事のほとんどが、割に合わない仕事が多い。それに比べてこの業界は青天井。やればやるだけ給料が上がるならそんな美味しい話はない。

頭のいい人間はそろそろ気づき始めているだろう。

人気のない職がどれほどの力を持っているのかを…



初日の内容は次回書くとするが、ひとつ思ったことがあるのでそれだけ書いておこう。


昼の休憩時に研修センターで見たことある人にお疲れ様ですと挨拶をしたが、その時は気づかれなかったのか何も言われなかった。

昼から戻るとその人の講座があり、その言葉にびっくりした。

『えー、みなさん、とにかくですね、挨拶は基本です!!』


『…え!!!!????』



続く